引退試合でのイチロー氏【写真:Getty Images】

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イチローに代わって出場したビショップ「自分はあの出来事の一部になっていた」

 日米通算4367安打を放ち、米大リーグのマリナーズに在籍していた2019年3月に現役引退したイチロー氏。東京ドームで行われ、現役最終戦となったアスレチックス戦は野球ファンの感動を呼んだ。最後にイチローに代わり、守備に就いた若手選手が当時の試合について振り返っている。現在所属するジャイアンツ傘下3Aサクラメント公式サイトのインタビューが報じている。

 同サイトのインタビューに答えているのは、サクラメントのブレイデン・ビショップだ。2015年のドラフト3巡目(全体94位)で指名された外野手がメジャーデビューを迎えたのは2019年3月21日のアスレチックス戦。8回裏、イチローに代わり、守備に就いた。これが最後と理解している選手、ファンらは総立ちとなってイチローに拍手を送り、東京ドームが感動に包まれた。

 記事の中で「イチローと交代してあなたはMLBデビューを果たしましたよね。どうでしたか?」と質問を受けたビショップは「映画のようだったよ」と切り出した。当時は25歳。「一連の出来事はその時には分からなかったけど、後で振り返ってみると『あぁ、自分はあの出来事の一部になっていたんだ』と思ったよ」と話し、今なお忘れられないシーンになっているようだ。

 さらに「イチローは……説明することが難しい。彼は神のようなスーパースターのような雰囲気を持っている」とイチローに対するリスペクトを語ったビショップ。「日本では野球は宗教のように思われているからね。彼が母国で引退したことの出来事の一部に自分がなれたことは素晴らしいことだった。彼の代わりに出場したことは永遠に自分にとって何か特別な意味を持つことになるだろう」と話した。

ツイッターにはグラウンドレベルで撮影したイチローの動画を投稿

 続けて「日本に行ってどうでしたか? 昨年多くの選手がMLBデビューを果たしましたが、無観客でした。その中であなたは異なる国でのデビューでしたが」との質問を受けると「本当に独特で特別な経験だった。さっき言った通り、日本人は野球を宗教のように思っている。野球が全てなんだ。ファンは本当にナイスだ」と日本の野球文化に対する敬意を明かした。

「ロースターの『第26の男』なのに、ホテルから出ると大勢の人がついてくるんだよ。26番目の男なのに。それがイチローってなったら公共の場に行くことはできないでしょう。間違いなく異質な経験だった。そういう経験ができて本当に感謝している」とも付け加えた。このインタビューを受け、自身のツイッターではイチローが試合後に球場内を回り、ファンの声援に応えるシーンをグラウンドレベルで撮影した動画も投稿している。

 2019年は27試合に出場し、打率.107、4打点だったビショップ。翌年も出場12試合にとどまり、今年5月に戦力外通告を受けてジャイアンツに移籍。現在は3Aの傘下チームでメジャー復帰を目指している。現在28歳。かつてイチローが輝いた舞台に自らも這い上がるため、あの日の記憶を大切にしながら、チャレンジし続ける。(THE ANSWER編集部)