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あらわになった対抗心

元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏(51)が9月28日からTBSのワイドショー『グッとラック!』(月〜金曜前9時)のレギュラーコメンテーターに就いた。毎週月曜日に登場する。

この日、橋下氏は番組冒頭で「打倒、『モーニングショー』玉川徹」と宣言。テレビ朝日の同番組と常任コメンテーター・玉川氏への対抗心をあらわにした。

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橋下氏と玉川氏はPCR検査などについて考え方が異なる。なので、これまで橋下氏は午後帯のワイドショー『ミヤネ屋』(日本テレビ系)などにゲスト出演すると、玉川氏を批判してきた。

「(玉川氏の主張通り)PCRを無症状者まで全国一律で広げていったら、保健所から行政からパンクしてしまいます」(8月3日『ミヤネ屋』)

これに対し玉川氏は8月19日の『モーニングショー』で反論。羽鳥慎一キャスター(49)が「玉川さんも1億何千万人全員に検査やれと言っているわけじゃなくて」と水を向けると、「本当にね。そんなことをいまだに言ってると思われているのが心外ですよ」と憤った。

2人は今後、同じ時間帯で勝負することに。ただし、この日は玉川氏が遅い夏休みを取ったため、直接対決は10月5日の月曜日からとなる。

これまでは格が違った。だが…

これまでの両番組の視聴率はというと、『モーニングショー』は10%近い世帯視聴率を獲得して横綱相撲を取ってきたのに対し、『グッとラック!』はその3分の1程度。格が違った。

橋下氏が起用されたのは巻き返しを図るためで、ほかの曜日ごとのコメンテーターも交代。さらにロンドンブーツ1号2号の田村淳(46)が常任のコメンテーターに据えられた。

橋下氏と淳を起用したことによる変化は初日から出た。最初の特集は両番組とも竹内結子さん(享年40)が自死したと見られる訃報だったが、『グッとラック!』はWHOの報道基準に基づき、抑制した伝え方に努めようとしているのが見て取れた。遺族や近親者を気遣い、さらに社会への影響も考えたのだろう。

放送前、竹内さんの自死を知った橋下氏は番組スタッフに対し、「WHO 自殺予防 メディア関係者のための手引き」を送ったという。もっともスタッフは既に手引きを読んでいた。

「(その上で)議論を重ねていた」(橋下氏)

橋下氏の声を受け、スタッフはより気を引き締めたはずだ。

この手引きには【遺された家族や友人にインタビューをする時は、慎重を期すること】と書かれている。『グッとラック!』の場合、家族はもちろん、友人、知人の取材を一切していない。

片や『モーニングショー』はどうだったかというと、竹内さんの同級生の母親を取材した。娘さんが中学で一緒だったそうだ。

こんな話が放送された。

「穏やかな可愛いお嬢さんでした。ショックです。何かあったのかしら。本当に残念ですね」

今は没交渉の知人の話は無意味ではないか。失礼ながら、どういう意図で報道したのか分からなかった。

意図が分からない…

『モーニングショー』の理解できない報道はこれにとどまらなかった。近所の人を取材し、こんな声を引き出した。

「2週間ぐらい前、買い物袋を持って歩いているのを見かけました。元気そうな感じでした」

「(2019年暮れに)デパートでご主人といるところを見かけた。お腹が大きかった。凄くきれいでした」

申し訳ないが、やはり意図が分からない。そもそも聞き込みをする必要性を感じない。どんな答えを求めていたのだ。

このような報道は遺族や近親者に複雑な思いを抱かせてしまうだけではないか。まして三浦春馬さん(享年30)、芦名星さん(享年36)と役者の自死が続いているのだから、もっと慎重を期すべきだと思う。

一方、『グッとラック!』の橋下氏は「昔だったら、もっと生々しく報道していました」と過去のマスコミの姿勢を断罪した上で、「自死の場合は影響が大きく、同じようなことが増えることもあり得るので、一切報じるべきではないという意見もありますが、これも違う」と持論を語った。

報道規制が権力に乱用される恐れがあるからだ。権力に不都合な死が隠されかねない。事実、独裁国家ではあることだ。

橋下氏は「大女優の竹内さんをみんなで偲ぶ、冥福を祈るという報道の仕方がベターだと思います」と締めくくった。この日の番組はその通りの構成となった。

やはり初登場の淳は「どうやって伝えるべきか、まだ答えが出ていない」と神妙な面持ちで語った。正直な感想に違いない。さらに「憶測だけが広がっていくのも違うと思う」とも。これが言いたかったことの核心だと思う。

憶測を広げないために

WHOの手引きに従い、マスコミの大半は自死の手段も現場の状況も詳報しないようになった。例え遺書があろうが、その内容をつまびらかにするはずがない。そもそも警察もマスコミにそれらを広報しない。死者にも遺族にも守られるべき権利はあるのだから。

すると、揣摩憶測が飛び交いやすくなってしまった。背景にはSNS時代になったこともある。それによって一番傷つくのは遺族と近親者らにほかならない。

名古屋市ホームページ「こころの絆創膏」にはこうある。

【「なぜ、自殺をしなければならなかったの?」(理由探し)→「なぜ?」の答えは、誰にもわからないことです(中略)自死の原因は一つだけということはあり得ず、様々な出来事が複雑に絡み合っているといわれています。自死の原因については、専門家の間でも意見がわかれているのです。つまり、誰にもわかるようなことではないのです】

自戒も込めて記すと、憶測を広げないためには、精確かつ節度ある報道をするほかない。

一触即発の可能性も

さて、橋下氏の初日は爆弾発言も舌禍もなく終わったが、この番組にゲスト出演した8月31日放送では番組関係者をヒヤリとさせるような発言をしている。

安倍晋三前首相(66)が8月28日に退任を表明したことを受け、こう語ったのだ。

「安倍さんについては賛否両論あると思う。僕は賛成派です」と口にした後、「もちろん、反対派があってもいい。多分、TBSなんかは徹底して反対派なんじゃないですか。『NEWS23』とか、『サンデーモーニング』とか」

両番組は報道局の制作。『グッとラック!』は情報制作局の番組だ。報道マンの中には情報制作局による橋下氏のレギュラー起用に苦虫を噛みつぶしている人もいるのではないか。

ある報道局関係者は「みんな無関心ですよ」と言うが、違う同局関係者は「単に視聴率を上げたいための人選でしょう」と冷ややか。政界は引退したものの、いまだ大阪維新の会の法律顧問で、それが番組に政治色を付けることを懸念している。

大阪のネット局・毎日放送も気を揉んでいるのではないか。大阪維新の会代表でもある松井一郎・大阪市長(56)は9月25日、「大阪都構想」に関する同局の報道が反対に偏っていると批判したのだ。取材陣に対し、「(毎日放送は)もうちょっと公正公平な報道をした方がいい」と苦言を呈した。

報道への介入と受け取られかねない発言。同局は穏やかでないはずだ。一触即発である。 

万一、この問題を橋下氏が「グッとラック!」で大阪都構想を語り、毎日放送に意見したら、TBS局内の番組を批判するより厄介な問題に発展するに違いない。

低視聴率に喘いでいた番組から目を離せなくなった。