【楢橋 里彩】酒類提供禁止令も…香港と日本、新型コロナ対応の「スピード感」の差 すでに現金1人14万円を支給

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世界の新型コロナの感染者が40万人を突破した。香港で最初の感染者が見つかって2ヵ月経つなか、一時は香港域内での感染拡大は落ち着いたかに見えたが、海外から戻ってくる人々による感染流入で現在、再び蔓延し始め感染者が増加中だ。

さらに香港では、世界で初となる感染者の飼い犬が死亡したことが話題になった。飼い犬はCOVID-19に関する検査で一度、弱性の陽性反応が表れていたが、この犬はすでに17歳の高齢だった。自国・地域での感染拡大を防ぐためにはいかに政府が有効な対応策を講じて市民の信頼を勝ち得るかがカギとなる。現地から最新リポートする。

すべての入境者が強制隔離に

林鄭月娥・行政長官は3月17日、新たな入境制限措置として同日から中国本土、マカオ、台湾を除く全世界各国・地域に対して紅色外遊警示(赤色渡航勧告)を発表。欧州のシェンゲン圏26カ国に対して実施する検疫措置を他の国・地域にも拡大することなり、すべての入境者が強制隔離となった。

紅色外遊警示(赤色渡航勧告)というのは昨年4月にテロ事件が相次ぐスリランカに対して発令されて以来適用が見られなかったが、今年1月のイランを皮切りに今回の新型肺炎蔓延で立て続けに発令されている。

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19日午前零時からは、香港に入境した者は強制検疫または医学観察を受けることとなった。林鄭長官は保安局の赤色渡航勧告は中国以外に適用するものであるため本土、マカオ、台湾が含まれていないと説明。渡航勧告は外国に対してのみ適用されるものとなっている。すでに本土からの入境者については2月8日から強制検疫が実施されていた。

香港の人口はおよそ750万人。東京都の土地面積に相当する大きさだ。多くの国・地域に比べると感染者は多い方ではないが、ウイルスが海外で拡散していることからウイルス侵入防止の焦点は海外に移っていると林鄭長官は指摘しており、海外からの流入により感染者が爆発的に増加する懸念を示している。

欧米からの避難

冒頭でも書いたように、3月19日午前零時より中国以外からの入境者すべてに検疫を受けさせる措置を開始したなか、欧米に蔓延している新型コロナウィルス肺炎からの避難のため、多くの香港市民が現在香港に戻ってきている。

検疫対象者は国籍や旅券を問わず14日間、自宅での隔離となり、同措置は3カ月維持されることとなる。また政府はすでに1日当たり1万〜2万本の電子リストバンドを配布することを決定し、現在は空港で配布している。これにより、入境者が指定の場所で隔離されていることを確保している。

バンドはスマホアプリと連動し、入境者に空港で取り付け、帰宅後に起動させる。Wi-Fi、大気電波、GPSの信号の変化によって検疫者が指定の場所を離れていないかどうかを判断し、指定場所を離れれば関連部門に即刻通知されるが、所在地の情報は取得できないとのこと。配布されて数日間はリストバンドが機能せず、混乱を招いたが、現在は正常に機能しているもようだ。

写真/星島日報

さらに衛生防護中心は19日午後から空港で65歲以上の高齢者と検疫場所で65歲以上の人と同居する人に唾液サンプルを採取する瓶を配付した。公共衛生化験服務処では1週間に5000個のサンプルを検査することができるという。医院管理局は20日からアジア国際博覧館中と北ランタオ島病院に検査センターを設置し、上呼吸道感染の症状がある入境者はまず検査センターに送ってウイルス検査を行い、陽性ならば公立病院で隔離治療を行うと発表した。

3月20日の香港メディアによると、特区政府入境処の統計では過去5日間に海外から香港に入境した人は1日1万人を超え、世界に対する検疫令を実施する前日の入境者は1万3000人に達し、香港に大きなリスクをもたらしている。

今後2〜3週間は “戦時状態” 突入

特区政府が懸念していた通り、19日午後に新たに確認された感染者のほとんどが海外渡航歴がある人だった。

うち3人は中環(セントラル)にある繁華街・蘭桂坊(ランカイフォン)や、付近にあるフィットネスクラブを訪れていたことが分かった。また感染者の1人は2月15〜23日に北海道に滞在していたこともわかった。

香港大学感染及伝染病中心の何栢良・総監は今後2〜4週間に多くの人がウイルス蔓延地域から香港に戻るため、少なくとも200人の感染者が海外から流入するとの見通しを示している。また何総監は「香港はすでに戦時状態に突入した」と述べ、市民に当面はバーやフィットネスセンターには行かないよう呼びかけている。

林鄭月娥・行政長官は21日、海外から香港市民が退避する波が2週間は続き、ウイルス拡散防止の状況が厳しくなることに対応して、いくつかの新措置を発表した。

新措置は以下の通り
・3月24日開始予定だった高校の共通試験が、4月24日開始に延期、5月中に終了
・公務員の特別勤務措置の再開
・再開された体育館と博物館などの設施の閉鎖

林鄭長官は、社会で隔離令違反の問題が注目されていることに対応し、執法部門は抜き打ち検査を行い、違反者は容忍せず警告なしで即時起訴すると述べた。

事実、在宅隔離の最中にもかかわらず外食したりリストバンドを勝手に切ったりした写真をSNSにアップする市民が現れたため、林鄭長官は「社会で隔離令違反の問題が注目されているのに対応し、法執行部門は突擊檢查を行い、違反者は容忍せず警告なしで即時起訴する」と述べている。

警察は隔離令違反者の摘発に力を入れ、41人の違反者を発見、うち5人はすでに警察によって検疫センターに送られ、そのほか36人を指名手配している。また先週末には繁華街を巡回し、検疫検査のひとつである電子リストバンドを着けた人物を探すなどの徹底ぶりだ。

違反者は、有罪が確定すれば禁固6カ月、罰金2万5000ドル(約5万円)の刑となる。
日本などと違って隔離措置には法的強制力を持たせてあり、ウイルス流行を収束させるための措置を市民に徹底させることがいかに難しいかがうかがえる。

キャセイ、ドラゴン航空20億ドルの赤字

キャセイ・パシフィック航空とキャセイ・ドラゴン航空は新型コロナウイルス肺炎流行により2月の業績(会計監査前)が20億ドル余りの赤字となった。

最新のフライト中止リストにはタイ・チェンマイ、バーレーン、東京(成田)、大阪(関西)が挙がっており、先のリストにあった沖縄、福岡、名古屋、札幌、東京(羽田)を合わせると日本の人気観光都市7ヵ所へのフライトが暫定的に停止されたこととなる。

これを受けて、キャセイに機内食と機内誌配布のサービスを提供している2つの外注会社の200人余りの職員は給与支給停止または解雇されることとなった。キャセイ、ドラゴン両社を合わせた2月の旅客輸送量は前年同月比64%減の100万8600人。渡航制限が短期的に緩和されない場合は同様の態勢が6月まで続くこととなる。

また、香港エクスプレスは3月23日から4月30日までの期間のすべてのフライトの運航を休止を発表。約2000便が運休となる。

特区政府運輸及房屋局の陳帆・局長は「香港は国際航空ハブとして非常に深刻な打撃を受けている」と述べ、空港管理局が先に打ち出した一連の支援措置は16億ドルに及ぶことを指摘しました。空港島の関連業者への支援などが含まれ、政府と空港管理局は香港の航空業界存続を支えるため他の措置も検討していることを明らかにしている。

「事実上の鎖国状態」

23日、林鄭長官は、新型コロナウイルス肺炎対策の強化措置を発表した。14日間実施する新措置は、25日午前零時から開始された。

内容は以下の通り
(1)海外の国・地域から航空機で香港に到着するすべての非香港住民の入境を認めない
(2)中国本土、マカオ、台湾から入境する非香港住民は、過去14日間に海外の国・地域に滞在した場合は入境を認めない
(3)香港国際空港は一切のトランジットサービスを停止
(4)マカオ、台湾からの入境者は香港住民であるかを問わず、すべて14日の強制検疫を受けなければならない

つまり事実上の“鎖国状態”だ。これは香港始まって以来となる。

日本とは違うスピード感

林鄭長官は前週末に海外でのウイルス流行がさらに深刻化して、香港でも海外からの感染者流入が急増したことを挙げ、できる限り世界と香港域内とのウイルス伝播の鎖を断ち切る必要があると述べた。

さらに林鄭長官は条例改正を通じてライセンスを持つバーとレストランで酒類を提供するのを禁止するとも発表し、約8600軒のバーとレストランが影響を受けることになる。

どの業界も厳しい状況を強いられ、さらに反論も飛び交うであろう。だが、こうした思い切った迅速な決断が為されていることは評価できるのではないか。振り返るとここ1ヵ月であらゆる措置を実施し実現している。

実際に住んでいると不可能ともみられる本土との出入境管理所の封鎖が断行されるなど、SARS流行時でも行われなかったような大胆な措置が実施されているのに驚く。
日本人の立場から見れば特区政府の動きはかなり早い。これは、2月末の時点で特区政府が1人14万円の現金支給を行うことを決定したことからもうかがえる。これもマカオ特区政府と同じく潤沢な財政があるからこそなせる技といえるだろう。