Bリーグなら普通に決まるシュートが、なぜか入らないーー。バスケットボール日本代表が13年ぶりに経験したワールドカップ(W杯)はそんな舞台だった。

 フリオ・ラマスヘッドコーチが率いるチームはトルコ、チェコ、アメリカ、ニュージーランド、モンテネグロと対戦して0勝5敗。得失点差などの比較で32カ国中31位という厳しい結果に終わった。

 選手が口々に語っていたのがフィジカルの差、そしてディフェンスの「圧」だ。今回の代表は登録12名の平均が199センチと、身長に限ればあのアメリカとも互角だった。しかしチームは相手のコンタクトで消耗し、激しく煽ってくるチャージにパスやシュートの精度を狂わされていた。


田中大貴(アルバルク東京) ©AFLO

選手が打ち明けた「圧」の正体

 田中大貴(アルバルク東京)は言う。

「アジアで戦ってきた相手とはディフェンスの質が違います。だから普段自分たちがやっているプレーを出せない。動けるビッグマンがヨーロッパにはいて、自分をマークする選手もサイズがある。パスも相手の手に引っかかったりして、アメリカ戦は特にそれを感じました」

「圧」とは何なのか? 田中はこう打ち明けてくれた。

「漫画みたいな話をしますけれど、相手が大きく見えます。自分のメンタルなのか、プレッシャーを感じていたからなのか分からないですけれど、近くで見てみるとそうなんです。もちろん手が長いし、身体も大きいし、当たったときの強さも今まで感じたことのないものですけど……。実際にやって感じた部分です」

打つ瞬間に「ブロックされるかも」

 安藤周人(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)は2018-19シーズンのB1で3ポイント(3P)シュートをもっとも決めた選手。成功確率も40.7%(405本中165本成功)と高かった。そんな名手が今回のW杯はトルコ戦、アメリカ戦、ニュージーランド戦と8本連続で3Pシュートを外し続けた。

 9本目の3Pシュートに成功した経験を元に、安藤はこう振り返る。

「4試合目(ニュージーランド戦)のハーフタイムに佐古(賢一)コーチから『打ち急いでいるんじゃないか?』とアドバイスをもらった。自分の中でも無意識に『早く打たないと』と思ってしまって、リズムを崩していた。どれだけ相手が大きくても。自分のリズムを崩さないのが大事になってくる」

 田中は194センチ・93キロ、安藤は192センチ・89キロと、筋骨隆々の逞しいアスリートだ。しかも彼らの主戦場はポイントガード、シューティングガードといったアウトサイドのポジション。Bリーグでは自分より大きい選手とマッチアップする場面がほぼない。

 世界大会になれば2メートル級が当たり前に3Pシュートを打ち、こちらが打とうとすればプレッシャーをかけてくる。そういう状況が選手たちの認知、感覚に微妙な狂いをもたらしていた。

 安藤はこうも語っていた。

「2メートルを超える選手が来ると、打つ瞬間に『ブロックされるかも』とどこかで思ってしまう。その部分で少しズレが出ていた」

 篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)はこう力説していた。

「日本が世界と戦うときに必ず出てくるキーワードが『フィジカル』です。フィジカルとは何なのか、僕はこのW杯で結構考えました。体重を増やせばいいのか、体脂肪率をもっと減らせればいいのか、ウエイトトレーニングで重い重量を上げられるようになればいいのかーー。色々あると思うんですけれど、僕が感じたのは身体をぶつける、自分から当てに行くことの慣れ、技術です。それが僕らには無いと思いました」

ファウル数が出場32チーム最少の意味

 例えばラグビー日本代表は総合格闘家・高阪剛氏の指導を受けて、それを2015年大会の躍進につなげた。バスケはラグビーと違って「寝技」の要素こそないが、プレーの中に格闘技的な要素は少なからずある。例えば力が入りやすい姿勢、重心の維持はあらゆる競技の基本だ。

 NBA経験のある渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)はこう述べていた。

「海外の選手はフィジカルが強い上に、まず向こうから身体を当ててきていました。僕はアメリカで経験していましたが、ヨーロッパ勢の身体の使い方はまた少し違う。日本は僕も含めて全員が後手になってしまい、身体をぶつけられてから対抗しようとしていた」

 チームが5試合で記録したファウル数は71個。1試合平均14.2個という数字は出場32チームの最少で、全試合で相手チームを下回った。チームがコンタクトプレーで後手を踏んでいた一つの証明かもしれない。

 日本が世界のトップなら“後の先”で相手を受け止めてから返す横綱相撲でいい。しかしラマス・ジャパンは若く成長途上で、せいぜい平幕レベル。「機先を制する」姿勢が不可欠だった。

 選手たちは筋肉量、パワーも上げていかなければいけない。さらにいえば技術、戦術とすべてのバージョンアップが必要だ。一方であらゆるプレーのベースは戦う意思と闘志。自分から仕掛ける意識の獲得、気後れの払拭は2020年とその先に向けた日本バスケの最優先課題だ。

(大島 和人)