小林誠司(Ship1231/Wikimedia Commons)

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 先週、今コラムで巨人の現状を失速と記したが、ついに「尻に火」となった。7月16日の段階で2位チームに10・5ゲーム差を付けていたのに、そこから3勝13敗で2位・DeNA3連敗して0・5ゲーム、3位・広島に2ゲームと詰め寄られている。

 1チームが追い込んでくるのはよくある。だが、10ゲーム差以上付けていた2位と3位のチームが同時に追い込んできた。こんなことがあるのか。記憶にない。正直、野球は怖い。

 しかも最近の巨人、負け方が悪い。相手を乗せている。競り負けが多い。主導権をガッチリ握って勝ったのは7月28日の阪神戦くらいなものだ。〈注1〉原辰徳監督は「まだまだ、戦いは、これからです」と構えているけど、腹の中はどうか。おそらく、手の施しようがない状態に、『参ったなあ…』が本音だろう。これに菅野智之と並ぶ2枚看板の山口俊、炭谷銀仁朗の離脱が追い打ちをかけている。

小林誠司(Ship1231/Wikimedia Commons)

 8月を制する者はペナントを制する。6日からは中日、ヤクルト、広島との9連戦、ことに広島戦は苦手のマツダだ。23日からはDeNA3連戦、1日置いて27日から広島戦だ。ここは絶対に乗り切る必要がある。

 今後、巨人のカギを握るの小林誠司だと思っている。DeNA3連戦、2日の緒戦はスタメンマスクをかぶったが、3日は4点ビハインドの四回からベンチに下げられた。起用されたのはプロ2年目の岸田行倫だった。その岸田が捕逸で決勝点を与えた。原監督は4日もその岸田をスタメンで起用したが、これは岸田本人の気持ちを思いやってのことだ。原監督らしい配慮だ。

柴田勲

 ハッキリ言って、岸田起用は原監督の小林へのカツだ。小林はこれに対し、「オレを使って欲しい。なんとかしますよ」と原監督に言ってもいいし、いや、直訴してもかまわない。

 今季の小林、バッティングは悪くない。盗塁阻止率もセ・リーグ1だ。〈注2〉だけど、原監督はなぜか、起用に消極的だ。第1、オフには炭谷をFAで獲得している。

『原監督は小林を嫌っている』なんて声もあるようだが、そんなことは私には分からない。そんな雑音よりも気がかりな点がある。

 小林、外のボールゾーンにミットを構えていることが多い。それも初球からなんてよく見かける。あれでは投手は「ストライクを投げなくていいの?」と思ってしまう。2ストライク、1ボール2ストライクからなら分かるけど。

 外角の“臭いところ”を突いて打者が凡退してくれれば儲けものだ。そんな思惑が見える。コース、コースを狙わせる。こんなことをできるのは好調時の菅野智之くらいなものだ。打たれたくない。打たれたらオレの責任だとでも思っているのか。消極的だし、弱気のリードだ。特に若い投手たちには負担だし、投手陣の信頼を得られない。

 スコアラーたちから対戦チームの打者たちの対策と傾向だって上がっている。もっとどっしりと構えて投手たちのいい部分、ボールを引き出す工夫が必要だ。よく言うように捕手は投手にとって“女房役”だ。亭主を叱咤激励して引っ張る。そんな強さが求められている。いまここで奮起しなくて、どこでするだ。

 もう1人、後半戦のカギを握るのは岡本和真だ。DeNAの3戦目ではチャンスをことごとく潰した。岡本で負けたと言っていい。

 岡本、やたらファウルが多い。ゴルフで言えば、「ヘッドアップ」の状態だ。つまり顎が上がって、目がボールから離れている。下からバットが出て内角球に詰まる。外角球には泳ぐ。バックスイングを早く取って準備し、甘い球を見逃さない。何度も言うようだが、打撃練習時からライナー性の打球を打つように心がけた方がいい。基本に戻ることだ。

 基本と言えば菅野にも言える。投球は内、外角低めの真っすぐが基本だ。いい時はここがしっかりしていた。真っすぐ系を6、7割、変化球を3、4割で組み立てていたが、今季はスライダー、フォークといった変化球が主体になっている。真っすぐが良ければ、変化球も生きる。このへんを考えるべきだろう。

 チームが好調な時は若い選手たちも伸び伸びできるけど、不振に陥るとどうしても萎縮して思い切ったプレーができない。つまらないミスも出る。こんな時、頼りになるのはベテラン選手たちだ。いくら若林晃弘、山本泰寛らがいいと言っても、坂本勇人、丸佳浩の代役は務まらない。

 DeNA、広島の勢いだってそうそう長く続かない。今年のセ・リーグは連勝すれば連敗、またはその逆だ。必ず浮上への大波がやってくる。いまはベテラン陣を中心に我慢の時だ。

 私、原監督の持つ強運、ツキを信じ巨人は優勝できる。こう思っている。最後にちょっと遅くなったが、監督通算1000勝、おめでとう。いよいよ熱くなる8月戦線での巻き返しを期待したい。

 注1 7月17日のヤクルト戦から1点差負けは7試合、2点差負けは3試合。28日の阪神戦は16対4だった。

 注2 今季の小林は打率・263、盗塁阻止率は・588、ちなみに2位は阪神・梅野隆太郎の・333。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長、14年から巨人OB会会長を務める。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年8月6日 掲載