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2013年10月に起きた「三鷹ストーカー殺人事件」で、元交際相手の女子高生(当時18歳)を殺害したとして、殺人と住居侵入、銃刀法違反の罪に問われた男性(22)の控訴審の判決が議論を呼んでいる。東京高裁は2月6日、懲役22年とした1審判決を破棄し、東京地裁立川支部に差し戻す判決を下したのだ。高裁判決が確定すれば、1審に戻って「裁判員裁判」をやり直すことになる。

男性は、交際中に撮影した被害者の画像をインターネットで拡散させる「リベンジポルノ」行為をしたとして、大きく注目された。1審判決は、このリベンジポルノ行為について、「殺害行為に密接に関連し、被告人に対する非難を高める事情として考慮する必要がある」と指摘したうえで、懲役22年の判決を下していた。

これに対し、2審の東京高裁は「1審の裁判官の審理手続きに誤りがあった」「起訴されていない名誉毀損罪を実質的に処罰しており、違法だ」として1審判決を破棄。審理を差し戻したと報じられている。

刑事事件に取り組む弁護士は、今回の東京高裁の判断をどう見るだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。

●「リベンジポルノ」では起訴されていない

「今回の判断を見ていくうえで、まず踏まえるべきポイントは、被告人が『リベンジポルノ行為については起訴されていない』という点です」

リベンジポルノについて起訴されていないと、どうなのだろうか?

「起訴されていない事実を余罪認定し、それを考慮して、被告人を処罰することは、憲法違反とされています。

ただし、起訴されていない事実を、被告人の性格、経歴及び犯罪の動機、目的、方法等の情状を推し量るための資料として考慮することは許されます。

この判断基準は、昭和41年の最高裁判決などで示され、確立されたものです」

その判断基準が、今回は適用されたということだろうか。

「つまり、今回の1審判決は、リベンジポルノ行為について、あくまで『情状を推し量るための資料』だと捉えたのでしょう。一方で、控訴審判決は、その範囲を超えたと判断したのだと思われます。

改めて1審判決を読むと、量刑理由の説明部分で、リベンジポルノ行為が悪質であると認定したうえで、『それ自体が起訴されていたとしても名誉毀損罪を構成するにとどまるから、その法定刑を踏まえると、無期懲役刑の選択を基礎づけるものとまではいいがたい』といった記述があります。

控訴審判決全文を確認しないとハッキリしたことは言えませんが、控訴審はこうした部分をとらえたのかもしれません」

●量刑相場的に「リアル」だった?

「ところで、被告人が問われている住居侵入罪、殺人罪、銃刀法違反は、1審判決の認定に基づき、有期懲役の上限を計算すると22年となります。

一方で、仮に被告人が名誉毀損罪でも起訴されていたとすれば、上限は懲役25年。そうすると、懲役22年は量刑相場として『リアル』な数字となってきます。このあたりも、実質的に名誉毀損罪を処罰する趣旨だと、控訴審が判断した材料になったのかもしれません」

このように伊藤弁護士は推測する。そのうえで、審理が1審に差し戻しになったことについて、次のように述べていた。

「破棄自判ではなく差し戻しとしたのは、(1)1審できちんとしたルールで審理がされなかったので、審級の利益(三審制)を実質的に保護する、(2)具体的な量刑の決定に当たっては裁判員にもういちど決めさせるのが裁判員制度の趣旨に適う、ということです。

その意味では、きちんとしたルールに従って市民に改めて判断させるという配慮をしたという評価も可能かと思いますが、差し戻し後の裁判員は『リベンジポルノ行為を実質的に処罰しない形で情状として判断し、量刑を決める』という非常に難しい判断を求められることになります」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
伊藤 諭(いとう・さとし)弁護士
1976年生。2002年、弁護士登録。横浜弁護士会所属(川崎支部)。中小企業に関する法律相談、交通事故、倒産事件、離婚・相続等の家事事件、高齢者の財産管理(成年後見など)、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。

事務所名:市役所通り法律事務所
事務所URL:http://www.s-dori-law.com/