「被害者の痛みが想像できない」「1ミリの希望に賭ける」服役中の元少年が明かす“闇バイト”の心理
栃木県で起きた強盗殺人事件で、16歳の男子高校生4人と20代の夫婦が逮捕された。実行役は“使い捨て”にされ、重い刑罰が待っているとわかっていながら、なぜ若者たちは"バイト感覚"で犯罪に踏み込んでしまうのか。
少年時代に強盗事件を起こし、現在も服役中の男性が、その「非常識な心理」を初めて明かした。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●「被害者の痛みが想像できない」強盗で服役する元少年
「自分は、被害者の痛みが中々想像出来ません。しかし友達や身内等の痛みは、想像できます。一体何故なのか分かりませんが、自分がそうなので、保護される若者の心理はとてもよく分かります。もしかすると一種の病気なのかもしれませんね」
東日本の刑務所に収容されている20代の元少年Aは、記者への手紙にそう記した。
Aは、日本各地で強盗事件に関与し、実刑判決を受けた。事件現場の一つは、田園風景が広がる地方都市の住宅街で、2階建て住宅が並ぶ中、ある一軒だけがピンポイントで狙われた。
その地域は、Aにとって縁もゆかりもない土地だったという。
●「フェリーに乗ってから、初めて強盗だと知った」
Aが事件に加わった経緯はこうだ。
金に困り、Twitter(現X)で「大阪で仕事を探しています」と投稿したところ、「ホワイトの仕事を紹介する」という連絡が来たという。
「その話に乗って名古屋→京都→神戸→宮崎とついていったのですが、神戸港をフェリーで出港したときにはじめて叩き(強盗)をやると聞かされました。はじめから悪いことをするつもりで行った訳ではないです」
Aが言う「叩き」とは、いわゆる強盗の「隠語」だ。
事件直前に知らされていたのは、相手の職業や、おおまかな年齢・性別、家の外観、金庫の位置だけだったという。
「知らない人の家に入るのは怖くないのか」と尋ねると、Aはこう答えた。
「(これまで)怖い思いをし過ぎて怖いという感情が鈍くなっているので、怖いという気持ちはなく、分かりやすく言うと、ドキドキ感とハイになる感情に近かったです」
●判断基準は「被害届が出るかどうか」
なぜ、他人の家に押し入り、見ず知らずの住民に暴行を加えることができるのか、不思議に思う人もいるだろう。
だが、事件を主導する側は、実行役の罪悪感を小さくするよう巧妙に誘導しているとみられる。
Aによると、“仕事”に向かう移動中、指示役から「闇金の集金日を狙う」「暴力団から流れた金だ」と説明を受けたという。
そして、当時をこう振り返る。
「自分は、今までの生活や生きてきた環境で悪いことをするときの判断基準は『被害届がでるかでないか』という基準でした」
つまり、狙う相手も“悪い人間”であり、被害届は出ないと吹き込まれることで、犯行への抵抗感が薄れるよう仕向けられていたというのだ。
しかし、Aは逮捕後、自分が襲った相手が一般の高齢者だったことを初めて知った。
「今回だまされた部分がありますが、自分達は、だます側よりだまされるのが悪いと思って生活してきたので、自業自得な部分が多いと考えています。一般のお年寄りにこんなことをしてしまったことは後悔しています」
●「追い込みかけられたことありますか?」
実行役が“使い捨て”にされるケースは、何度もニュースになっている。それでも、なぜ応募する若者が後を絶たないのか。
そう尋ねると、Aは逆にこう問い返してきた。
「追い込みをギリギリまでかけられたことはありますか?」
そして、続けた。
「借金等で追い込まれた上に、わらにもすがる思いでホワイト案件に応募したら情報を抜かれ、『犯罪しろ』と言われたらやってしまうのは、自分は理解できます。冷静でない時は、目の前のことにしか対応できないので。
本当にお金の無い人が『即日現金』『借金返済』『1日5万円〜』『リゾートバイト』というような書き込みを見たら、怪しくても、1mmの希望にかけてしまう気持ちは、分かります」
そのうえで、こう漏らした。
「でも、最近はめちゃ真面目そうな人がやってるので驚きます」
追い込まれた末に見えた「1ミリの希望」が、犯罪への入口になる。
被害者への想像力は働かない一方で、追い込まれた若者が犯罪に踏み込む心理は「よく分かる」とAは語る。
こうした非対称な感覚を理解することが、“闇バイト型犯罪”を食い止めるための一歩になるかもしれない。
*この記事は、記者がこれまで元少年の受刑者に取材してきた内容をもとに作成しました。
