「帰れば誰かがいる」40代でシェアハウス急増!離婚や子育て後…中高年を救う“寂しくない”最新事情

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シェアハウスって、若い子が入るところじゃないの?」

そんな固定観念が、いま静かに崩れつつある。

かつては20代中心だったシェアハウスに、40代・50代の入居者がじわじわと増えている。なかには80代の入居者を抱える物件もあるという。

離婚、子育ての終了、単身赴任。あるいは、もう一度誰かと暮らしたいという気持ち……。理由は違っても、彼らが選んだのは「ひとりではない暮らし」だった。

首都圏を中心にシェアハウスを運営する会社の広報担当者に、40代以降が選ぶシェアハウスの「今」を聞いた。

なぜ40代がシェアハウスへ?

コロナ禍が落ち着き、人との交流を求める機運が高まる中で注目を集めるシェアハウス。物価高や節約思考の広がり、多様なライフスタイルの定着といった追い風も重なり、近年では40代以降の入居者が増えているという。

「年齢制限を設けているシェアハウス会社が多い中、最近は30代以降も受け入れる運営会社が増えました」

そう話すのは、首都圏を中心にシェアハウスを約220物件・約5000部屋を運営するオークハウス(東京都豊島区)の広報担当の竹本真美さん。

オークハウス自身も年齢制限を設けていない。20〜30代がコア層として全体の7割以上を占めているが、40代以上の入居者も15〜20%ほどを占め、なかには80代の入居者もいる。「40代はどちらかというと、まだまだ若手なんですよ」と竹本さんは笑う。

入居のきっかけは実に多岐にわたる。離婚を機に新たな暮らしを始める人、子どもが巣立った50代・60代、単身赴任で上京した人。さらには、学生時代の寮生活が忘れられず飛び込んでくるケースも多い。また、保証人不要・家具家電付きで、一般的な賃貸のような長期契約に縛られない点も魅力として大きい。

そんなシェアハウスに向いているタイプは、「寂しがり屋」なんだという。

「一人暮らしの場合、自宅に帰れば、誰とも話さないまま静かに一日が終わりますが、シェアハウスには『お帰り』と言ってくれる人がいます。一緒にご飯を食べたり、雑談したり。些細なことですが、こういった人との関わりの有無は思いのほか大きいんです。『人と関わりたい』という動機は、年齢にあまり関係ないと思います」(竹本さん・以下同)

40代が担う「意外な役割」

40代以降でシェアハウスへの入居を考えたとき、まず出てくるのは「打ち解けられるのか」という不安だろう。実際、相談時に入居者の年代を聞く人は多い。しかし、ほとんどの場合は取り越し苦労に終わるという。

「40代以上の入居者の中には、イベントに率先して参加してくれる方や、周囲との交流を楽しまれている方が多くいらっしゃいます。若い層は自分の時間を自分で自由に過ごしたい、という印象ですね」

入居者の交流が盛んなハウスでは、毎週末のようにイベントが開かれている。運営会社主催のイベントもあれば、入居者自身が主催となるケースも多い。「やってみたい」という気持ちを素直に形にできる、そんな空気がシェアハウスにはある。

地方から上京してきたある50代の入居者もそのひとりだ。個人事業を畳んで「新しいことを始めたい」とシェアハウスに飛び込んできた当初は、シャイで口数も少なかった。ところが数ヵ月後、自らヨガ教室のイベントを企画・開催するようになった。

シェアハウスの環境が、その方の新しい一面を引き出してくれたのかなと思います」

また、言葉も文化も異なる留学生に対して、40代以上の入居者が家族や友人のように寄り添うケースも珍しくない。ハウス全体の雰囲気を安定させてくれる存在でもあるのだ。

進化するシェアハウスの今

シェアハウスの魅力はほかにもある。一人暮らしをしていたら出会わなかった人たちと、同じ屋根の下で暮らすことになる。国籍も職業も年齢もバラバラな入居者たちとの日常は、それ自体が刺激だ。外国人入居者が多い物件では自然と国際交流が生まれ、英語や他の言語に触れる機会も増える。

エンジニア、デザイナー、料理人、ヨガインストラクターなど入居者の職業は多彩であり、竹本さんによれば「フリーランスの方であれば、仕事上のつながりが生まれることもある」という。異業種の人たちと日常的に言葉を交わす中から、思わぬコラボレーションが生まれることもあるのだ。

さらに、入居者同士で恋愛に発展するケースもある。イベントがきっかけで付き合い始めるカップルはもちろん、なかには結婚後も部屋は別々のまま同じハウスに住み続けるケースもあるという。

そしてもうひとつ、見落とされがちなのが設備水準の変化だ。

「30年ぐらい前は、すごく安くて汚いというイメージだったと思うんですけど、今はだいぶ変わりました。ジム・シアタールーム・大浴場・スタディルーム・音楽スタジオを完備する物件も珍しくないですし、共用部には週6日清掃スタッフが入る物件もあります。『今までイメージしていたシェアハウスよりもずっときれいだ』という声もいただきます」

ただし、価格帯は一概に「安い」とは言い切れない。エリアによっても異なるが、都心の物件では一般的な賃貸と変わらない水準になるケースもある。

では、シェアハウスを選ぶ際、何を基準にすればいいのか。竹本さんが挙げるのは「コンセプト」と「規模」だ。

オークハウスでも、ロケーションや設備などワンランク上の生活を目指した「グランシリーズ」や、「運動と食」をテーマにしたジム完備の物件など、テーマを持ったコンセプト型物件を手がけている。こういったテーマがあることで価値観が近い入居者が集まりやすく、趣味や特技を通して自然とつながれるのが魅力だ。

規模感も重要だ。大型物件ほど多様な人と出会える一方、小規模な物件はこぢんまりとした家族のような雰囲気になりやすい。どちらが合うかは人それぞれで、自分がどんな暮らしをしたいかで選ぶといい。

短期退去者が直面する「壁」

一方で、シェアハウスが合わずに短期で退去する人も一定数いる。よくある理由は「共同生活が苦手だと気づいた」「暮らしに不満はないが職場や学校から遠い」というものだ。なかには、外国人入居者が多い物件に入ったものの、言葉の壁もあって居心地が悪くなってしまったケースもあるという。

さらに、共同生活ならではのジレンマもある。例えば、生活リズムが合わない入居者との関係、共用キッチンやバスルームの順番待ち、ルールを守らない入居者によるトラブルなど。また、キッチンやバスルームなどの共有部は複数人で使うため、自分の思い通りの清潔さを保てないこともある。

「コンセプトと規模を軸に探してみるのがおすすめですが、実際に住んでみないとわからないことも多いのがシェアハウスの正直なところです。まずは内見やハウスの担当者との会話を通じて、実際の雰囲気を肌で感じてみることが大切だと思います」

シェアハウスという文化が日本に根付いて、およそ30年。当初は「安くて汚い」というイメージが先行していたが、最初に住んでいた世代が大人になるにつれ、シェアハウス自体も進化を続けてきた。いまや「30代になってもまだシェアハウスにいるの?」という時代ではなくなりつつある。

「実は、私も10年以上シェアハウスで暮らし続けています。たくさんの人たちと関わる生活をしていて、本当によかったと思うことが多いです。だから、『もう年だから』と思わずに、少しでも興味があって、自由に住まいを変えられるなら、ぜひ試してみてほしいですね。シェアハウスって、住んでみないとわからないことが本当に多いので」

取材・文:安倍川モチ子

WEBを中心にフリーライターとして活動。また、書籍や企業PR誌の制作にも携わっている。専門分野は持たずに、歴史・お笑い・健康・美容・旅行・グルメ・介護など、興味のそそられるものを幅広く手掛ける。