【中村 清志】いにしえの大学生御用達「HUB」いつのまにか”大復活”を遂げていた…業績右肩上がり「客離れの心配ゼロ」に

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居酒屋の倒産が過去最多ペース――東京商工リサーチが5月17日に発表したデータが話題を集めている。同調査によれば、2026年1-4月の「居酒屋」倒産は88件(前年同期比54.3%増)と急増。1989年以降、同期間の倒産は2024年の59件を大きく上回り、最多を更新したという。

昔から居酒屋は世間の景気を映す鏡と呼ばれていた。それが、コロナ禍を契機に自宅飲みが浸透、大口の宴会需要が低迷したほか、若年層のお酒離れ、物価高による相次ぐ値上げと節約志向の高まりなどマイナス要因が重なるいま、その環境はますます厳しくなるばかりだ。

とはいえ、こうした状況下でも、逆境に負けず巻き返しをはかる店があることを忘れてはならない。平成以降に大学生だった人にとっては“お世話になった”者も少なくないのでは――英国風パブチェーン「HUB(ハブ)」がここへきて大復活を遂げていることをご存じだろうか。

「大学生御用達チェーン」生みの親はダイエー

1980年に誕生した英国風パブチェーン「HUB」。その特徴は何と言っても、創業当時はまだ珍しかった「キャッシュオンデリバリー」(カウンターで客が注文を行い、その都度、精算を行ってから酒を受け取って飲むスタイル)を採用した点だろう。

日本の居酒屋といえば、店員が客にオーダーを取りに行くのが常識。それを思い切って排除したこのシステムはさぞ斬新に、そしてオシャレに映ったのだろう。時代とともに、気付けば「HUB」は成人してお酒を飲み始めるタイミングの若者、特に“大学生御用達”のチェーンとしてその地位を確立している。

そんな革新的な業態の生みの親が実は、同じく流通業界において革命児と呼ばれた、ダイエーの創業者・中内功(実際の部首が刀)氏であることは意外に知られていない。

現在「HUB」を運営している株式会社ハブは、1998年に株式会社ダイエーホールディングスの子会社として設立。その元を辿れば、中内氏が1980年に渡英した際、英国のパブ文化に触れ、感動。「日本で広めたい」という想いからグループ内で事業化したのが始まりだ。

ちなみに今でも中内氏が手がけたことがうかがい知れる痕跡がひっそりと残されている。同社が「HUB」とは異なる新業態として2005年に開業した「82ALE HOUSE」。店名に入った“82”とは、中内氏の誕生日である8月2日に由来しているという。

“どん底”の状態から一転、右肩上がりに

話を戻すと、創業当初からしばらくは苦難の連続であった。前述したキャッシュオンデリバリーが日本人に馴染まず、店舗数もなかなか増やすことができなかった。

その後、周知の通り、親会社であるダイエーの解体、さらに数度の営業譲渡が行われるなど“たらい回し”にされる日々がつづいたが、2006年に大阪証券取引所ヘラクレス(当時あった新興企業向け市場)に上場を果たし、ようやく独り立ちすることとなる。

そんな「HUB」を運営元である株式会社ハブは、新規上場から今年節目の20年を迎えた(2023年より東証スタンダード市場へ上場)。気になる直近の業績は、お世辞抜きに好調と言っていいだろう。

同社が今年4月17日に発表した2026年2月通期決算によれば、売上高113億3500万円(前年比6.6%増)、営業利益5億3400万円(同17.9%増)、経常利益5億2800万円(同19.8%増)、最終利益6億900万円(同36.7%増)と、増収増益を達成。この好調ぶりはさらに続くようで、来期業績予想も売上高120億円、営業利益6億円としている。

振り返れば、「HUB」はコロナ禍直後、大げさではなく“どん底”にいたと思う。何せ2022年2月期の売上高はわずか24億円しかなかったからだ。それが76億円→98億円→106億円と右肩上がりに回復し、さらに長いこと赤字続きだった収益状態(経常利益)も2024年2月期に黒字へと転換するなど、まさに冒頭で表現した“大復活”にふさわしい勢いを見せている。

財務基盤は盤石…投資家たちも熱視線

とりわけ筆者が今回の業績発表を見て、感心したのが同社の「自己資本比率」と「既存店客数」の動向だ。

まず自己資本比率だが、コロナ禍によるどん底を漂っていた2022年2月期の数字を見ると、33.6%となっている。「おおよそ30%が健全性の基準」とは言われる節もあるが、同社ほどの規模感であれば、やはり40%以上は欲しいところ。そこを今回、50.7%と増強してきたことから、財務基盤はかなり盤石に生まれ変わったと言っていいはずだ。

もう一つの既存店客数だが、こちらは上半期は前年をわずかに下回って(前年比99%)はいたものの、2025年10月以降は堅調に推移しており、下半期全体では前年を+2.5%上回って、通期で前年比100.7%を示していた。これを見るに、営業の原動力となる客数も上手く確保できていることがわかる。

ご存じの通り、各チェーン店がもっぱら悩んでいるのが「客離れ」の問題だ。たとえば、中華料理チェーンで不動の人気を誇る「餃子の王将」ですら、値上げの影響か、ここ最近は客数のマイナスが続いている。

もちろん、「HUB」が酒類業態という性質上、他の飲食業態と比べて値上げの影響は少ないと見ることはできる。それでも、この状況下で安定した客数を維持できるのは十分誇れるはず。2020年2月期との比較で株主総数が2倍に膨れ上がっているあたり、市場関係者たちも、同チェーンの勢いを認めている証左なのだろう。

さらに「HUB」にとって追い風となるのが、まもなく開催となるワールドカップだ。つづく【後編記事】『英国風パブチェーン「HUB」投資家たちが“最強のワールドカップ銘柄”と位置付ける「これだけの要素」』で解説する。

【つづきを読む】英国風パブチェーン「HUB」投資家たちが”最強のワールドカップ銘柄”と位置付ける「これだけの要素」