羽月被告の法廷での証言がチームを揺るがしている(時事通信)

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「ゾンビたばこ」と呼ばれる指定薬物エトミデートを使用したとして、医薬品医療機器法違反の罪に問われたプロ野球・広島東洋カープの元選手(起訴後に契約解除)、羽月隆太郎被告(26)。同被告が5月15日の公判(広島地裁)で証言した内容がいま、球団を揺るがしている。

【写真を見る】カープのチームマークを塗りつぶした写真をアップした羽月被告のものと見られる現在のXアカウント。高校卒業後、入団したばかりの羽月被告

 羽月被告は、広島カープの同僚選手が同じくエトミデートを使用していたという趣旨の証言をしたのだ。被告は公判後、自身のアカウントとみられるX(旧Twitter)も更新し、ファンは騒然となっている。公判の詳細な内容を振り返る。【前後編の前編】

東京遠征に行くたびに……

 羽月被告は15日、開廷の5分ほど前に3人の男性弁護人とともに法廷に現れた。濃いグレーのスーツに、太めのストライプのシャツと緑色のネクタイを合わせ、足元は光沢のある赤茶色の靴を履いており、現役時代と同様、身なりへの気遣いを感じさせる。

 検察官が読み上げた起訴状によると、羽月被告の罪は、昨年12月16日、広島市中区の自宅マンションにおいて、指定薬物エトミデート、通称「ゾンビたばこ」を医療などの用途以外に使用したというものだ。羽月被告は罪状認否でこの起訴内容を認めた。

 羽月被告の供述内容は以下のようなものだった。裁判を傍聴したライターが語る。

「羽月被告が最初にゾンビたばこを使ったのは、2025年の3月終わりか、4月ごろ。東京に遠征に行った際に、先輩に紹介してもらった知人とバーに行き、その際にその知人からエトミデートを勧められ、使ったといいます。その時、知人は羽月被告にエトミデートが『違法なものではない』と説明したといい、羽月被告もそれを信じていたそうです。

 法廷では、ゾンビたばこを勧めてきた知人を紹介した『先輩』がカープの選手か否かは、明らかにされませんでした」(裁判を傍聴したライター。以下同)

 被告が初めて薬物を使ったと証言するのは、プロ野球のペナントレースが開幕したばかりの時期。カープは3月31日は試合がなく、4月1日から3日まで神宮球場でヤクルトとの3連戦だった(4月1日は雨で試合は中止)。4月2日には、代走として試合に出場している。この東京遠征の際のいずれかの日に、羽月被告はエトミデートを初めて使ったということになる。供述はこう続く。

「その後、東京へ遠征に行って知人と飲む時に、ゾンビたばこを買うようになった。6月か7月ごろには、その知人から『違法じゃないけど、薬機法で引っかかるやつだから』『グレーなやつだから大丈夫』と言われるも、『大丈夫ならいいか』と深く考えずに使い続けていた、と証言していました」

 実際、エトミデートに関する薬機法は2025年5月に改正されている。そのタイミングでエトミデートは指定薬物となり、医療などの用途以外で使うのは違法になっていた。つまり、同年6、7月の時点では、「グレー」ではなく「クロ」だ。知人がそのことを知っていたなら、羽月氏は知人に騙されたと言えるかもしれない。

「その後、羽月被告は11月頃、エトミデートを特集したニュースを見て、症状やリキッドの見た目から、もしかして自分が『違法じゃない』と言われて使っていたリキッドはエトミデートなんじゃないか……と思うようになった。

 そこですぐに知人に確認したところ、『今までは大丈夫だったけど、5月から薬機法が変わった。ただ、尿検査は引っかからないから大丈夫』と違法な薬物であるように言われたといいます。

 この時、自分でもインターネットで『ゾンビたばこ』を調べ、記載された内容から『これ、アウトなやつじゃん。自分が使っていたリキッドは違法なエトミデートだろう』と思ったそうです」

 この時点でエトミデートが違法薬物だと気づいた羽月被告。ここで使用をやめていれば、刑事責任を問われることはなかったが……。

「しかし、尿検査をしても成分が出ないと聞いていたし、『現行犯でリキッドを所持していなければ大丈夫だろう』と思い、その後もエトミデートを使い続けていました。知人からはエトミデート1本を2万2500円か2万5000円で買っており、これまで10本前後の量をまとめて5回ほど買っていたそうです」

 こうして羽月被告はエトミデートの違法性を知りながら使用してしまったのだ。

カープの寮にエトミデートが…

 羽月被告はなぜ、違法性を知ってからも使い続けてしまったのか。被告はそのことも詳細に供述していた。

「羽月被告がゾンビたばこを使い続けた理由は、よく眠れるからだったそうです。被告人は以前から眠れないことに悩んでおり、ゾンビたばこを寝る前に使うとよく眠れるので使っていたということです」

 羽月被告はグラウンドで俊足を生かした溌剌としたプレーで活躍していたが、実は不眠に悩んでいたというのだ。そのためにエトミデートの睡眠効果にハマったわけだが、一方でこんなことを供述。

「ゾンビたばこを使うとフラフラしたりする症状が出るということは、自分で調べたりして知識として知っていましたが、自分ではそのような症状が出ていると自覚していませんでした。

 私が最後にゾンビたばこを使ったのは令和7年12月16日夕方4時頃で、場所は自宅のベッドがある部屋でした。ゾンビたばこが入ったカートリッジを加熱してその煙を吸引する方法で使いました」

 この日、警察が自宅に来て、羽月被告は事情聴取を受けた。羽月被告は警察官が来る際、駐車場のカラーコーンの下にゾンビたばこのカートリッジと吸引器具を隠したという。しかし結局、任意調査での尿検査に引っかかり、犯行は露呈してしまったのだ。

 ちなみに最後に使ったゾンビたばこを知人から購入したのは昨年10月頃だそうだが、こんなことも供述している。

「廿日市(はつかいち)にあるカープの寮に郵送してもらいました」

 廿日市にあるカープの寮とは、広島県廿日市市大野にあるカープの若手選手の合宿所のことだ。カープの施設において、指定薬物を受け取っていたわけだ。この事実は、このあとの被告人質問で明かされた事実と照らし合わせると、不穏な意味を持つことになる。

「証言の重大性を認識していた可能性」

 続いて行われた被告人質問。羽月被告はまず、弁護人とのやりとりで、以下のように語った。

弁護人「まず、エトミデートを使うようになったきっかけは何ですか」
羽月被告「自分は眠れなかったので、よく眠れると聞いて使いました。使う日もあれば、使わない日もあり、バラバラですが、寝る前に眠れない時に使っていました」

 家族からはエトミデートの服用を「やめてほしい」と言われていたという。弁護人から「それでも、やめられなかったのはなぜですか?」と問われ、被告はこう回答した。

「周囲に同じように使っているカープ選手がいたので、自分も大丈夫かな、と。そういう自分の甘い考えがこういうことになってしまって、今振り返ると、自分自身で正しい判断をできるはずですが、家族の言葉を真剣に受け止められなかったと深く反省しています」

 前出・裁判を傍聴したライターが語る。

「同僚選手に関する部分について、羽月被告は聞き取りづらいくらいのボソボソした声で話していた。被告のなかでも、"共犯者がいる"という趣旨の証言の重大性を認識していたのではないかと感じました。こうなると、羽月被告が昨年10月、カープの大野寮にゾンビたばこを送ってもらったという供述調書での証言との関連性が気になってくる。荷物の中を確認できないとはいえ、当時、羽月被告はすでに退寮済みだった。届いた荷物を誰がどう扱ったのかは、謎のままです」

 羽月被告の"爆弾証言"は一大ニュースとなり、各週刊誌が関連があったとみられる同僚選手を匿名で報じるなどしているが、都内の弁護士は、「同僚選手がこれから起訴される可能性は限りなく低いのではないか」と話す。

「ゾンビたばこに関する薬機法が改正された5月よりも前に使用していたぶんにはセーフですし、さらに立件するには、本人が『違法だとわかった状態で服用していた』ことの証拠が必要になる。

 警察は、羽月被告が言及した人物についてはすでに捜査を行なっているでしょうし、仮に羽月選手が主張するような同僚選手がいたとしても、証拠を揃えるまでには至らなかった、ということなのでしょう。万が一その証拠が新たに第三者などから出てきたら、とんでもないことになりますが……」

 羽月被告の逮捕後、広島カープは全選手に聞き取り調査を行ったと説明している。今回の証言を受け、球団はどう答えるのか--後編記事では、NEWSポストセブンの取材に対する球団の対応と、羽月被告にくだった判決の詳細等について報じている。

(後編に続く)