新型AIの脅威 金融システムの防御を万全に
米新興企業アンソロピックが開発した新型AI(人工知能)「クロード・ミュトス」が、金融システムの安定を脅かしかねないとして世界的に危機感が高まっている。
政府は民間と連携し、国内の金融システムの脆弱(ぜいじゃく)性について点検を急ぎ、サイバー攻撃に対する防御策の構築を急いでほしい。
アンソロピックがミュトスを公表したのは4月7日だ。そもそもはサイバー攻撃に対する企業の防御を高めることを狙いとして、システム上の問題を点検するために用意されたAIである。
ミュトスは、専門家が27年間も見つけられなかった脆弱性が世界屈指の堅固さを誇るシステムに潜んでいることを短時間で特定したという。逆に悪意ある者がこのAIを使い、サイバー攻撃に転用する恐れが強まることになった。
このためアンソロピックは、一般公開がもたらすリスクを考慮して、ミュトスの提供先を、グーグルやマイクロソフトといった米大手IT企業などに限っている。
攻撃側と防御側のどちらが優位に立つことになるのか。AIを巡る攻防が繰り広げられる、新時代を象徴する問題と言えよう。
ミュトスに対して、とりわけ危機感を高めているのが金融界である。金融システムは国民生活の基盤である。サイバー攻撃を受ければ被害が甚大となる。
具体的には、大規模な個人情報の流出の恐れや、大量の資産の投げ売りを行って金融システム全体の連鎖的な破綻を引き起こす危険性などが指摘されている。
金融庁は官民が連携する作業部会を設置し、初会合を開いた。安全性の強化に向け、日本のメガバンク3行が、ミュトスを利用できることになったという。
国内の決済では長年使い続けた古いシステムが残っている。脆弱性の問題が指摘されていることから、まずはシステム面の課題の洗い出しを急ぎたい。市場インフラなどの危機対応策について、手順を確認しておくことも大切だ。
AIの開発競争はすさまじい。米オープンAIも4月、システムの弱点を発見する能力を高めた新モデルを発表した。中国企業も遠からず、高性能のAI開発に成功するとの見方が強い。
国際的にどう対処すべきか、連携を強化することが欠かせない。先進7か国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が近くパリで開かれる。世界的に金融システムが揺らぐことがないよう、規制強化の手法を詰めてもらいたい。
