【磐越道バス事故】発生から1週間 これまでの経緯を時系列で振り返り 高校生ら21人死傷事故《新潟》
6日朝、福島県の磐越自動車道で、新潟市の北越高校の男子ソフトテニス部の部員が乗ったマイクロバスがガードレールなどに衝突する事故がありました。高校生ら21人死傷の今回の事故、これまでの経緯を時系列で振り返ります。
■5月6日朝 事故発生
<リポート>
「福島県郡山の事故現場です。バスが車線からはみ出し大破しています。ガードレールがバスの中に入っているのが見えます」
<付近の住民>
「すごい音したんだ。バーンっていうような。いままでにない音。まさかこんな状況になっているなんて思っていなかったから、これは大変だと思った」
事故があったのは、福島県の磐越道上り線猪苗代インター・磐梯熱海インター間です。
警察などによりますと、6日午前7時45分ごろ「バスがガードレールに衝突し、後続の車が追突した」と後続の車に乗っていた人から消防に通報がありました。
事故を起こしたバスは新潟市中央区にある北越高校、男子ソフトテニス部の部員を乗せて福島県富岡町へ向かう最中でした。
北越高校によりますと、バスは午前5時半ごろ新潟市中央区にある北越高校を出発。練習試合のために福島県富岡町へ向かっていました。事故当時、生徒20人を乗せたバスは胎内市に住む男(68)の運転で磐越自動車道を走行。引率の教員は別の車に乗っていました。
そして、午前7時半ごろ、マイクロバスがトンネルを抜けて緩やかなカーブにさしかかったところでガードレールの手前にあったクッションドラムに衝突。それでもバスは止まることはなくガードレールをめくるような形で進み続けたということです。
この事故で車の外に投げ出された北越高校3年の稲垣尋斗さん(17)が亡くなりました。
<稲垣さんを知る人>
「兄弟みんな仲がいいし、感じのいい子だよ。スポーツマンでね、子どものころから。ショックだわ」
さらに、マイクロバスに乗っていた運転手と生徒のほか、後続のワゴン車に乗っていた人たちなど、あわせて20人が重軽傷を負いました。
重傷は5人でいずれも新潟県内に住む15歳から17歳の高校生です。5人のうち4人は右足開放骨折や左大腿骨骨折などです。1人は左手裂創などの傷を負ったということです。
■5月6日午後 学校とバス会社が取材応じる
6日午後、北越高校が報道陣の取材に応じました。
<北越高校 灰野正宏 校長>
「残念ながら本校の生徒が1名亡くなったということについては痛恨の極みであります。今回の事故についてこういう事故が二度と起きないようにするためにどうすべきかも含めて、改めて経緯を丁寧に説明したい」
北越高校によると、車両と運転手については北越高校の所属ではなく、「県内のバス会社が手配した」と話しました。
<北越高校 灰野正宏 校長>
「部活動の顧問が業者に頼んで借り上げたという形になっています。業者の方についても、詳細がちょっとわからない」
◇ ◇
そして6日夜、学校から手配の依頼を受けたバス会社、五泉市の蒲原鉄道も取材に応じました。
<蒲原鉄道 茂野 一弘 社長>
「うちの会社は貸し切りバスで部活動の遠征、送迎をしている。そのなかで今回は貸し切りバスを使わずにレンタカーを使って送迎をしたいと話をいただいたので、ドライバーも紹介いただけないか、ということだったので」
蒲原鉄道によると1か月ほど前、ソフトテニス部の顧問から遠征用にレンタカーのバスと運転手の手配の依頼がありました。通常、貸し切りバスの依頼しか受けていないものの学校との付き合いが長いため、営業担当者がレンタカーを手配。学校の部活の名義で営業担当者の免許証を提示して借りたといいます。
運転手に関しては営業担当者の知り合いを通して紹介してもらった人でした。経験や事故歴は確認していなかったとしています。
<蒲原鉄道 茂野 一弘 社長>
「会社として全面的に協力して引き受けていることではなくあくまでご依頼があったのでお手伝いをしたという形です」「その辺は手数料はいただいてないということで担当から確認しております」
<蒲原鉄道 金子賢二 営業担当>
「僕の方でレンタカーを頼んだ。北越高校の部活名で」
また今回、貸し切りバスではなくレンタカーになった理由については。
<蒲原鉄道 金子賢二 営業担当>
「レンタカーをたまに借りることがあるが、学校の保護者とか先生の話し合いのなかで、予算組みがある。青ナンバー(貸し切りバス)を使うと、高くつくので安いものを探してよと。それがレンタカーに」
Q)できるだけ安くしてくれと?
「そうですね」
■5月7日 バス会社に国交省の立ち入り調査
北越高校では7日朝、教職員が見守るなか生徒が登校する様子がありました。ホームルームのあと校長から全校生徒へ事故の経緯について説明があったということです。
また、学校がバスの手配を依頼したというバス会社には、国土交通省による立ち入り調査が行われました。1時間半ほど滞在し事故の経緯について事実確認を行ったといいます。
<国交省の職員>
「ヒアリングという形であくまでも。事実確認ということで、お邪魔させていただいた次第」
さらに、死亡した稲垣尋斗さんの家族が、新潟県警を通じコメントを発表しました。
「私たち家族は、大切な存在である息子を今回の思いがけない出来事で失い、深い悲しみの中におります。そしてこの状況をまだ受け止めきれずにおります。
今は、1日も早く私たち家族や関係者の皆さまが穏やかな生活を取り戻せることを願うばかりです。
どうかこのような心情をご理解いただき、今後、家族や親族、地域の方々等に対する取材、撮影等についてはご遠慮いただきたいと思います。 令和8年5月7日 家族一同」
■5月7日夜 運転手の男の逮捕を発表 学校が会見
福島県警は7日夜、バスを運転していた胎内市の無職、若山哲夫容疑者(68)を過失運転致死傷の疑いで逮捕したと発表。
調べに対し容疑を認めていて、「居眠り運転はしていない。速度の見極めが甘かった」などと供述しています。
若山容疑者を知る人は……。
<若山容疑者を知る人>
「(店で)彼は1人で飲んでたもんね、1人で来て飲んでさっさと帰る……気分いいとたまに(店で)カラオケやってますよ」
若山容疑者はこれまでに東京学館新潟高校や開志国際高校などに勤務し、陸上部の監督も務めていました。
いまから30年前の1996年、TeNYは若山容疑者を取材。そこには、教え子に対し、熱心に指導する姿がありました。
<取材当時の若山哲夫容疑者>
「10年20年に一人の逸材ですから大事に厳しく育てようと思ってるんですよ」「今後、日本を代表するようなランナーになってほしいと思っていますしそういうふうな 育て方をしていくつもりです」
胎内市によると、若山容疑者は2024年までの3年間、胎内市のマイクロバスの運転手をしていて月に4~5回、子どもたちや老人会のイベントの送迎などもしていたということです。
北越高校の関係者ではなく、今回の遠征用に運転手として手配されたという若山容疑者。
捜査関係者によるとバスに乗っていた一部の生徒が「運転が荒かった」と証言しているということです。
また、若山容疑者は客を運送して対価を得る「大型二種免許」は、持っていなかったといいます。
そして北越高校は7日夜、会見を開きました。
<北越高校 和田 晋弥 理事長>
「大切なお子様を預かる立場にありながらこのような重大な事故を招き、深く責任を痛感している次第であります」
<北越高校 灰野 正宏 校長>
「大変残念なことになってしまった。痛恨の思いでいっぱいでございます」
事故が起きたことについて謝罪。事故を起こしたマイクロバスと運転手の手配について説明しました。
<北越高校 灰野 正宏 校長>
「男子ソフトテニス部顧問は蒲原鉄道の営業担当者に人数、発着時間、行き先などを伝えた上で“貸し切りバス”の手配を依頼しいつも通り終了後に旅程に対して蒲原鉄道に代金を支払うことにしていた」
Q)会社側の説明だと学校の方から安い方より経済的な方でと説明があったが?
<北越高校 灰野 正宏 校長>
「事実ではありません。これも部活の顧問に確認している」
「業者側の会見で北越高校がレンタカーの手配を依頼したとか、北越高校で運転できる人がいないので、運転手の依頼があったという発言があったが、顧問によれば、行程を伝えるかたちでバスの手配を以前から手配しており、そうした発言はしていないということでした」
「私どもがお願いしたものとは違っているということは言えると思います」
北越高校は、学校が蒲原鉄道に対し貸し切りバスの手配を依頼。後日、蒲原鉄道へ代金を支払う予定だったと話しました。
真っ向から蒲原鉄道の主張を否定。その契約について書面のやりとりはなく口約束だったとしています。
Q)見積書はとってない?
<北越高校 灰野 正宏 校長>
「今回に限らず、こうした遠征、練習試合等でバスを利用する場合は、こういうかたちで依頼をするということで書面をとりかわすことはしていないと聞いております。なかなか一般の商慣習ではありえないといった状況ですので、まずはしっかりとした業者の選定、安全管理上は、引率の形態でありますとか、そうした部分の見直し、そうした部分が必要かなと思っています」
北越高校では臨時保護者会も開かれました。
<出席した保護者>
「どちらが本当のことを言っているのかということと、顧問の先生の方から蒲原鉄道の営業の方にどういう形で依頼をしたかということに関してもあくまでも口頭だということでしたので、その辺が甘かったのか腑に落ちないなっていう」
■5月8日 バス会社に家宅捜索 予定されていた会見は中止に
8日朝、福島県警はバスの手配を行った会社の家宅捜索を行いました。
<リポート>
「午前8時すぎです。 たったいま 福島県警の捜査員が蒲原鉄道の 本社に入っていきました」
蒲原鉄道は8日に会見を行う予定でしたが警察の捜査が入り中止に。茂野 一弘社長は問題となっている主張の食い違いについて聞かれると…
Q)学校は蒲原鉄道と真逆のことを言っているがその点に関しては?
<蒲原鉄道 茂野 一弘 社長>
「その辺に関しても今捜索を受けている中でお話をしたりしている中なので、ちょっと細かいことは今後もお話をすることはできないと思いますし、今も控えさせていただきたいと思います」
そのうえで、学校側との金銭の受け渡しについては……
<蒲原鉄道 茂野 一弘 社長>
「ボランティアということは、私から言った話ではないと思うが、営業している中で、お手伝いをしていた一つだと認識しています」
Q)金銭の受け取りに関しては発生しないという状況だったと考えているか?
「はい。いまのところはまだ(金銭の受け取りはないと)考えております」
さらに、マイクロバスを貸し出したレンタカー会社は8日、貸し出した先は「北越高校」で、そもそもこのレンタカー会社と蒲原鉄道は取引がないことを明らかにしました。
■5月9日 ソフトテニス大会で黙とう 運転手・若山容疑者送検
死亡した稲垣尋斗さんを悼み新潟市東区では9日朝、ソフトテニスの大会に参加した中学生たちが黙とうを捧げました。
一方、バスを運転していた若山哲夫容疑者は9日朝に送検されました。
捜査関係者によりますと若山容疑者はことしに入り、複数回の交通事故を起こしていて、今回の事故については「スピードを出しすぎてぶつかった」と供述しているということです。
若山容疑者を知る人は事故の前から「複数の違和感」を感じていたといいます。
<近所の人>
「顔の表情が前に比べると全くなくなった。小股でこんな感じ。『大丈夫なの?』って思ってたけどまさかバス運転するなんて思ってないからさ」
<行きつけの飲食店の従業員>
「痛風かなんかなったんだわ。『自分は免許返納しなければいけない』みたいなことだいぶ前に言っていたことがあった『(自分が)まだ早いわね』なんて(言って)」
捜査関係者によると、若山容疑者は運転に支障が出るような持病などはないと話しているということです。
さらに……
<近所の人>
「一週間くらい前に、前のほうへこんだ車で違う車が置いてあったので。どっかぶつけたんでしょうね」
若山容疑者は4月から複数回の交通事故を起こしていたことがわかっていています。
また、よく訪れていたという飲食店で「北越高校の仕事が終わったら免許を返納する」と話していたということです。
■5月10日 学校が2度目の会見 部活顧問が初めて同席
10日、北越高校では男子ソフトテニス部の保護者会が開かれました。高校によりますとバスに乗っていた生徒も参加して行われたといいます。
その後、高校は事故のあと2度目となる会見を開催。初めて顧問が出席しました。
<北越高校男子ソフトテニス部 寺尾宏治顧問>
「この度は、生徒を安全に引率すべき立場にありながらこのような惨事を防げなかったこと責任を重く感じております。心からお詫び申し上げます」
「私が金子氏に対し費用を安くおさえたいからレンタカーを手配してほしいと 依頼したことはありません、また運転手の紹介を依頼したこともありません」
また北越高校は、事故を起こしたバスから見覚えのないカバンを見つけその中には現金が入った封筒があったことを明らかにしました。
Q)いくらくらい入っていたのですか?
<北越高校 灰野 正宏 校長>
「3万3千円です」「メモは表書きにございました手当、高速、ガソリンです。蒲原鉄道の担当者から運転手に渡されたと思われる手当の封筒などであります運転手の名字が書いてありましたその方のものなんだろうと」
こうした中、顧問は、涙ながらに後悔の思いを述べました。
<北越高校男子ソフトテニス部 寺尾宏治顧問>
「私がバスに同乗していれば運転手の異変に気づき、運転をとめさせるなどして事故を防ぐことができたのでは ないかと思っています」
■5月12日 花角知事「再発防止策を検討したい」
花角知事は定例の知事会見でバス事故について聞かれると……
<花角知事>
「痛ましい事故であって重大な事案だと受け止めています」
県は、県内の高校に対し遠征などの運行について契約や管理を見直するよう呼び掛けたほか、安全確認への通知を出したということです。
<花角知事>
「契約が現場任せになっていたという中で、再発防止のための対応策を検討してまいりたいと思います」
今後実態を把握する調査を行い再発防止に努めるとしています。
また、バスの走行に身の危険を感じた北越高校の生徒が事故の直前に動画を撮影し、保護者に「死ぬかも」という趣旨のメッセージを送っていたことが捜査関係者への取材で新たにわかりました。
捜査関係者によりますとバスを運転していた、胎内市の若山哲夫容疑者(68)は、事故のあと警察が到着するまで車を降りなかったとみられていて、生徒同士で発えん筒の設置やケガをした生徒の手当てをしていたということです。
若山容疑者は磐越道で事故を起こす前にも頻繁に事故を起こしていたこともわかっています。
<修理会社オーナー>
「ちょっと歩くのが遅いかな。ああいう風になった人たちは特有のぶつけ方をする」
こう話すのは若山容疑者の車の修理を請け負っている会社のオーナーです。オーナーは若山容疑者と、およそ15年前から付き合いがあり、これまでにも車の修理を請け負ってきました。
<修理会社オーナー>
「ここから(店から)出るときも、右からも左からも(車が)来てるのに、ビューと出て行ったりして、急ブレーキかけられたり、クラクション鳴らされたりしてたんですよ。この運転ではとてもまた必ず(事故を)起こすなと思っていました」
オーナーによると若山容疑者は磐越道での事故を起こす前、2週間で少なくとも3回の事故を起こしていたといいます。
<修理会社オーナー>
「自分の車を2,3回ぶつけても私が代車を貸してあげた、その代車もまたぶつけて来ますので、実際、3台自分の車の事故」
5月1日に若山容疑者が運転していた軽自動車は、フロント部分が大きく破損しボンネットは変形し折れ曲がっていました。
<修理会社オーナー>
「神林(岩船港)インターチェンジの付近で事故ってしまいましたと言って」
その時、若山容疑者が起こした事故の映像には、数台の車が止まる中に、同じ軽自動車があるのがわかります。
車の中には若山容疑者でしょうか…電話をしている人の姿が確認できます。
短い期間に何度も事故を起こしていた若山容疑者に、修理を請け負ったオーナーは免許の返納をすすめていたといいます。
<修理会社オーナー>
「新発田警察署にも、免許を更迭できないのか、必ず大きい事故が起きるからと言っていたけど、私たちにはその権限はないですと言われました。1日の夜に連絡があって、免許証を返納することにしましたって、若山さんから直接電話があったときはほっとしたんです、本当に」
オーナーは今回の事故をニュースで知りました。ショックを受けたといいます。
<修理会社オーナー>
「気の毒で気の毒でしょうがない。 子どもが亡くなったのが。免許を返納すればまず運転しなくとも済むわけだしああ良かったと思ったんですけどね」
さらに、これまでの捜査関係者への取材で、バスの走行に危険を感じた男子ソフトテニス部の部員が事故直前の様子を撮影していたことがわかっています。
動画にはバスが車線をはみ出して走る様子や、事故直前にカーブを曲がらずガードレールの方向に直進する様子などが映っていたということです。
生徒が撮影した動画は複数あるということで、警察は運転手の健康状態も含めて捜査を進めています。
