母が「私が先に亡くなったら、家のことはお父さんが何とかするでしょ」と言っています。ただ、父が手続きについて把握しているとは思えません。何か良い方法はないでしょうか?

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母親が家計や家の書類を管理している家庭では、母親に万が一のことがあったとき、残された父親が手続きを進められない場合があります。家の名義、預貯金、保険、固定資産税の書類などは、普段から見慣れていない人にとって分かりにくいものです。   家族が困らないようにするには、元気なうちに情報を整理し、必要な準備をしておくことが大切です。そこで本記事では、母親が先に亡くなった場合に備えて、家族で確認しておきたい家や相続の手続きについて解説します。

母任せにしていると家の相続手続きで困る可能性がある

母親が亡くなった後、家が母親名義であれば、「相続登記」が必要になります。相続登記とは、亡くなった人の名義になっている土地や建物について、相続した人の名義に変更する登記手続きです。
現在は相続登記が義務化されており、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。正当な理由なく手続きをしない場合、10万円以下の過料の対象になります。
相続登記を進めるには、家の名義や不動産の内容を確認しなければなりません。そのため、父親が家の名義や権利証、固定資産税の通知書の保管場所を知らないと、手続きの開始が遅れる可能性があります。
遅れると、相続人同士の話し合いや書類集めにも時間がかかるでしょう。特に子どもが複数いる場合は、誰が家を相続するのかを決める必要があり、父親一人だけで判断するのは難しいことがあります。

生前に家の名義や財産の情報を家族で共有しておく

まず行いたいのは、家に関する情報の整理です。母親に「万が一のために、家の書類を一緒に確認したい」と伝え、責める形ではなく、家族全員の安心のために話し合うことが重要です。
確認しておきたいものは、自宅の名義、固定資産税の通知書、登記識別情報や権利証、住宅ローンの有無、火災保険の契約内容などです。預貯金や生命保険も、どの金融機関や保険会社に契約があるかだけでも分かるようにしておくと、相続後の手続きが進めやすくなります。
銀行口座は、名義人が亡くなったことを金融機関が把握すると、原則として相続手続きが終わるまで凍結されます。生活費や葬儀費用の支払いで困らないよう、父親名義の口座や当面の資金についても確認しておくと安心です。
これらの情報は、ノートやファイルにまとめておくと管理しやすくなります。ただし、暗証番号やパスワードを誰でも見られる場所に書くのは避けましょう。保管場所だけを家族で共有し、重要な情報は安全に管理することが大切です。

遺言書や専門家への相談で父の負担を減らせる

母親の希望がある場合は、遺言書を作成することも有効です。例えば、「自宅は父親に相続させたい」という意思が明確であれば、相続人同士の話し合いを進めやすくなります。
遺言書には、自分で書く「自筆証書遺言」や、公証役場で作成する「公正証書遺言」などがあります。遺言書は種類や保管方法によって、亡くなった後に必要な手続きが異なります。
自筆証書遺言を自宅で保管している場合、相続開始後に家庭裁判所で検認が必要です。検認とは、遺言書の状態や内容を確認し、偽造や変造を防ぐための手続きです。ただし、公正証書遺言や法務局で保管された自筆証書遺言については、検認が不要とされています。
また、相続税がかかるかどうかも確認しておきたい点です。相続税には基礎控除があり、「3000万円+600万円×法定相続人の数」を超える場合に申告が必要になる可能性があります。自宅の評価額や預貯金が多い場合は、税理士に相談すると判断しやすくなるでしょう。
相続登記は司法書士、相続税は税理士、遺言書の内容は弁護士や司法書士に相談できます。すべてを父親が一人で調べるのは大変です。生前に一度だけでも専門家に相談しておけば、必要な書類や手続きの流れを家族で把握できます。

家の相続手続きは親が元気なうちに家族で準備しておこう

母親が「父親が何とかする」と考えていても、実際には家の名義変更、預貯金の手続き、保険の請求、相続人同士の話し合いなど、多くの手続きが発生します。父親が書類の場所や財産の内容を知らない場合、手続きは想像以上に負担になります。
まずは、家の名義や書類の保管場所を家族で確認しましょう。そのうえで、財産の一覧を作り、必要に応じて遺言書や専門家への相談も検討することが大切です。生前の準備は、残される家族への思いやりでもあります。早めに話し合いを始めることで、父親の負担を減らし、家族全員が落ち着いて対応しやすくなるでしょう。
 

出典

法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A
東京法務局 相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始) ~なくそう 所有者不明土地! ~
最高裁判所 遺言書の検認
国税庁 No.4152 相続税の計算
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー