“オルカン”や“S&P500”もいいけど…投資家として巨万の富を築いた杉村太蔵が今最も薦めたい投資方法
投資家としても知られる杉村太蔵が今最も注目しているのは「オルカン」でもなく「S&P500」でもなかった。「超インフレ時代を生き抜くための新・投資入門」(文春MOOK)より一部抜粋し、インデックス投資では利益を最大化できない理由とおススメしたい投資方法を伺った。(全2回の1回目/続きを読む)
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「私はピラミッドの最底辺だった」
――投資家としての杉村さんの原点は、大学中退後に派遣社員を経て入社した外資系証券会社にあるそうですね。
杉村 そうです。そこでの経験が私の投資哲学の背骨になっています。当時、2000人規模の組織の中で、私は間違いなく「最底辺」でした。誰よりも下。誰も私の下にはいない。そんな環境での、私の最初の仕事は何だったと思います?
――株の売買の注文受け、などでは?
杉村 いいえ。アナリストが書いた分厚いレポートを、正確にホチキスで止めること。これが私のミクロ経済のスタートでした(笑)。でも、配属されたのが「株式調査部」だったのが幸運でした。そこには年俸1億円を超えるような超一流のアナリストが何十人もいたんです。
――その環境で、どのように投資を学んでいったのですか?

杉村太蔵(すぎむら・たいぞう) 1979年、北海道生まれ。筑波大学中退後、外資系証券会社(ドイツ証券)を経て、2005年衆議院議員総選挙で初当選。現在はタレント、投資家、実業家として多方面で活躍。最新刊『杉村太蔵の推し株「骨太」投資術』(文藝春秋)が絶賛発売中。
杉村 彼らが書いたレポートが世に出る前、これが出たら株価が変動する直前のタイミングで、それをタダで読めたんです。超一流のアナリストの文章は、専門知識がない私のような人間が読んでも、驚くほど内容がスッと入ってくる。逆に二流の人のものは知識がないとわからない、三流は知識があってもよくわからない。
――本物ほど、シンプルで分かりやすいということですね。
杉村 そうなんです。毎朝の「朝会」で、彼らが営業担当向けにコメントする姿も間近で見ました。彼らが「ビビッときた!」と言った銘柄が、その日の市場で爆上がりする。その「ビビッ」の裏側にある論理構成、どこに注目しているのかを、飲みに行った席などでしつこく聞き出しました。そこで教わったことから導き出したのが、「自分が働きたいと思う会社、自分の子供や孫を働かせたいと思う会社に投資しろ」という、極めてシンプルかつ本質的なことでした。
衆議院で見た「マクロの法則」
――その後、杉村さんは2005年に衆議院議員として初当選されます。経済の見方にどう影響しましたか?
杉村 これが決定的でした。証券会社で「ミクロ経済※1」を実体験し、国会議員の4年間で「マクロ経済※2」を知ったんです。そこでこの国には「お金の流れの法則」があることに気づいたんです。
――その「お金の流れ」とは?
杉村 まず、この四半世紀のデータを見てください。財務省の法人企業統計によれば、2000年代初頭から現在にかけて、日本企業の利益はなんと約「8倍」に増えています。当時10兆円程度だった利益が、今は80兆円を超えている。さらに、企業が溜め込んだ内部留保のうち、現預金だけでも300兆円を超えています。
――企業は空前の利益を上げているわけですね。
杉村 一方で、我々の賃金はどうですか? ほとんど上がっていません。さらに消費税収は10兆円から24兆円へと倍増以上になっている。つまり、「企業利益は8倍、消費税収は2・4倍、賃金は横ばい」。これが今のニッポンのマクロ経済の正体です。
――企業だけが儲かっている?
杉村 残念ながら、「トリクルダウン※3(企業が儲かれば、その富がしたたり落ちるように個人や労働者も富む)」は起きなかったということです。
政府は法人税を引き下げ、企業を儲けさせれば、その富は賃金に回ると信じていた。でも企業は、そのお金を内部留保としてキャッシュで溜め込んでしまったんです。
新NISAは「政府による新たなトリクルダウン戦略」である
――その現状を踏まえて、今の「新NISA※4」や「貯蓄から投資へ」という流れをどう見ていますか?
杉村 新NISAこそが、政府が仕掛けた「新たなトリクルダウン戦略」だと私は見ています。もう企業にお願いして賃金を上げてもらうのを待つのは限界がある。だったら、企業の溜め込んだ利益を「配当」という形で国民に直接還元させよう、というわけです。
――配当として受け取ることで、企業の利益を直接、個人の懐に入れるということですね。
杉村 そうです。しかもその配当を「非課税」にした。企業が稼いだ最終純利益から出される配当を、国民が直接受け取る。これこそが、内部留保を国民に還流させるための「パイプ」なんです。
――だからこそ「投資をしないと損」だと。
杉村 その通りです。我々の世代は、この「受け皿」を自分たちで作らなければならない。企業利益がこれだけ伸びているんですから、その恩恵を「給料」としてではなく「株主」として受け取る。この仕組みを理解しているかどうかが、これからの格差を決定づけるでしょう。
――最近は「S&P500※5」や「オルカン※6」などの「インデックス(市場全体に投資する投資信託)」への長期積み立て投資が人気ですが、杉村さんはそれに対して少し懐疑的な意見をお持ちですね。
杉村 インデックス積み立て投資、全否定はしませんよ。でも、正直に言って「つまらない」じゃないですか(笑)。安く買って高く売る、という投資の醍醐味がない。政府が「リスクがない」と言って勧めるのは、要するに「新手の貯金」だからです。
――長期積み立て投資で平均値を取るだけでは、資産は劇的には増えないと。
杉村 私はインデックスに積み立てるだけだったら、今の資産は築けなかったと思います。「インデックス投資」は、福袋なんですよ。自分にはいらない商品もたくさん入っている。だから、自分で投資先を選択できる個別株にこそ、投資の醍醐味があります
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※1ミクロ経済…家計や企業など、個別の経済主体の行動を分析する学問のこと。商品の価格がどう決まるか、消費者がどう選ぶかといった細かな意思決定に焦点を当てる。
※2マクロ経済…国や地域全体の経済の動きを大きな視点から捉える学問のこと。 GDP、物価、失業率、消費や投資の合計値を扱い、政府の政策が社会全体にどう影響するかを分析する。個別の取引ではなく、経済全体を鳥の目のような高い位置から俯瞰する。
※3トリクルダウン…富裕層や大企業が豊かになれば、その滴(しずく)が下へ落ちるように、経済全体や貧困層にも恩恵が行き渡るという理論。しかし、実際には富の偏在が進むだけで格差が拡大し、庶民まで豊かさが届かないとする批判や検証結果も多く存在する。
※4新NISA…2024年に始まった、個人の資産形成を後押しする非課税投資制度。投資枠内で得た利益に税金がかからず、運用できる期間も無期限となった。生涯で1800万円まで投資可能で、貯蓄から投資への流れを加速させる国の主要な政策となっている。
※5 S&P500…米国を代表する500社の株価を指数化したもの。ここでは500社へまとめて投資する手法を指す。米国優良企業への分散投資が可能となり、長期的な実績が安定しているため、現代の資産形成における「王道」とされている。
※6オルカン…「オール・カントリー」の略で、全世界の株式にこれ一つで投資できる投資信託の通称。日本を含む先進国から新興国まで幅広く分散投資するため、特定のリスクを抑えつつ世界経済の成長を享受できる。
〈「日本株のポテンシャルは過去最高です!」杉村太蔵が銘柄選びを行なう際に最も参考にするのは、“あの文書”だった!〉へ続く
(杉村 太蔵/文春ムック)
