日欧が“地球防衛”でタッグ 小惑星「アポフィス」探査ミッションでJAXAとESAが協力へ
JAXA(宇宙航空研究開発機構)は2026年5月8日、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)との間で「プラネタリーディフェンス」における協力を強化・促進するための協力覚書(MOC)を5月7日にベルリンで締結したことを発表しました。
JAXAによれば、ESAによる小惑星「Apophis(アポフィス)」の探査計画「RAMSES(ラムセス)」に関する協力協定にも署名が行われ、日欧の共同ミッションとしてApophisの探査実現を目指すことになりました。

数千年に一度の機会 地球に“大接近”するアポフィス
プラネタリーディフェンスとは、地球に接近する小惑星などの天体を早期に発見し、軌道を精密に計算して衝突の可能性を評価するとともに、万が一衝突の恐れがある場合にはその影響を回避・軽減する対策を実行する国際的な取り組みです。惑星防衛や地球防衛とも呼ばれます。
今回JAXAとESAの間で探査の協力協定が署名されたApophisは、直径約340〜375mと推定されている小惑星で、地球の公転軌道に近い軌道を周る地球近傍天体(NEO: Near Earth Object、地球近傍小惑星とも)のひとつとして知られています。
Apophisは今からおよそ3年後の2029年4月13日に、地球の表面から約3万2000kmという、静止軌道よりも内側を通過していくと予測されています。この接近で地球に衝突する危険性は否定されていますが、これほど大きな天体がここまで地球に接近するのは、数千年に一度レベルの極めて稀な出来事です。小惑星の軌道・自転・表面の構造などが、地球の重力の影響を受けてどのように変化するのかを直接確かめられる千載一遇のチャンスとして、世界中から注目を集めています。

日欧の技術が結集する「RAMSES」ミッション
ESAが2028年の探査機打ち上げを目指すRAMSESは、地球に接近する前後のApophisと探査機をランデブー飛行させて、Apophisの変化の様子を詳細に観測することを目指したミッションです。JAXAによると、同機構はRAMSES探査機に不可欠な機器として「薄膜軽量太陽電池パドル(SAWs)」と「熱赤外センサ(TIRI)」を提供します。
また、RAMSES探査機の打ち上げには、日本の「H3」ロケットが使用されます。同じロケットにはJAXAが開発中の深宇宙探査技術実証機「DESTINY+(デスティニープラス)」も相乗りして、ともに打ち上げられる予定です。
DESTINY+の最終的な探査対象は、ふたご座流星群の母天体として知られる小惑星「Phaethon(ファエトン、フェートン)」ですが、そのPhaethonへ向かう途中でApophisをフライバイ(接近通過)観測することが計画されています。同じ小惑星を観測する2つの探査機を相乗り打ち上げすることで、DESTINY+のフライバイで得た画像をRAMSESの綿密な運用計画に役立てるといった、相乗効果が期待されています。

人類共通の課題「地球防衛」の未来へ
地球の重力が小惑星に及ぼす影響をリアルタイムで観測できる今回の探査は、NASA(アメリカ航空宇宙局)が2022年9月に小惑星への無人探査機衝突を実施した「DART」ミッションなどとともに、地球に衝突する可能性が懸念される小惑星の軌道を変更する技術を検討する上で、非常に重要な科学的・技術的知見をもたらすと考えられています。
JAXAは今回の協定締結に際し、今後もESAをはじめとする海外の宇宙機関や国際社会と緊密に連携して、プラネタリーディフェンスという人類共通の課題に積極的に貢献していく姿勢を示しています。国際的な絆のもとで推し進められるApophis探査の今後の進展に注目です。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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