なぜ富裕層は「1本5万4,000円の日本産レンコン」を買うのか…価格を凌駕する「ジャパン・ラグジュアリー」の正体

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羽田空港で飛ぶように売れる伝統工芸品や、1本5万4,000円という価格ながら大ヒットを記録した最高級レンコン。今、富裕層の心を掴んでいるのは、単なる品質の良さではなく、その背後にある「ストーリー」です。本記事では、柳澤寿志子氏の著書『富裕層を魅了する 東京一等地不動産』(星野書房)より一部を抜粋・再編集して、「ジャパン・ラグジュアリー」の正体と、富裕層を魅了するブランディングの極意を解説します。

羽田空港で伝統工芸品が飛ぶように売れる…「ジャパン・ラグジュアリー」時代の到来

羽田空港のブランドショップが並ぶエリアの隣に、日本製品の非常に高級な工芸品を集めた売り場があります。そこには日本製の高級な工芸品である刃物や鍋、着物など、伝統工芸品に近い高額商品が並んでおり、とてもよく売れています。

日本製の伝統工芸品が売れたのは考えてみれば当然のことで、海外の人にとってハイブランドは、日本で買ったほうが安い場合もあるものの、かならずしも日本で買う必要性はありません。

一方で、日本らしいもの、たとえば着物をアロハのようにアレンジしたものなどは、海外の人からすると非常に価値があるものとして映ります

最近になって、ジャパン・ラグジュアリーが注目されるようになってきました。

1本5万4,000円のレンコンが完売…元民俗学者が仕掛けた「逆張り戦略」

昨今話題になった、「5万4,000円のレンコン」をご存じでしょうか? 

これは、発売に至るまでのストーリーやこだわりをきちんと押し出したことで、売れている商品です。5万4,000円のレンコンとは、茨城県の野口農園が生産する最高級ブランド「柳蓮田(やなぎだ) 國之介」です。

この超高額な価格は、単なる品質の良さだけでなく、農家のブランディング戦略と、ミシュラン星付きレストランなどで評価された独自のストーリーに由来します

生産者である野口憲一氏は、もともと民俗学者として活動していましたが、実家のレンコン農家を継ぐことになりました。学問的な視点と、ユニークな「逆張りの戦略」を農業経営に応用し、従来の常識を覆す高級路線を打ち出したのです。

ミシュラン店がこぞって採用…富裕層が「5万4,000円のレンコン」に見出す価値

特筆すべきは、品質へのこだわりと栽培方法です。

品質については、サツマイモのような強い甘みと、日本梨に似たシャキシャキとした食感が特徴の、希少品種「柳蓮田」に限定して栽培しています。栽培方法も特徴的で、泥の中で育つレンコンを傷つけないため、手間のかかる伝統的な「水掘り」という方法で収穫し、無垢な白さと鮮度を保っています。

当初は1本5,000円の高級品として販売を開始しました。その品質が評価され、銀座や赤坂の国内高級料理店だけでなく、ニューヨーク、パリ、ロンドンなど海外のミシュラン星付きレストランでも採用されるようになります。

この実績がさらなるブランド価値を高め、1本5,000円の商品が好評を得たあと、厳選した最高級品として、5万4,000円のギフト用レンコンが商品化されました。この1本5万4,000円のレンコンが、大ヒットしたのです。

もはや、これはモノではありません。それを買う人は、モノを見ているのではなく、ストーリーを見て買っているのでしょう。

ストーリーによって買い手の中で価値が積み上がり、1本5万4,000円でも買う、という判断になっているわけです。

柳澤 寿志子

不動産コンサルタント