アンチコメント届いても…信念の裏に圧倒的努力 菅沼菜々1年ぶり4勝目、貫き続ける「誰かの役に立つ人間に」
NTTドコモビジネスレディス最終日
国内女子ゴルフツアーのNTTドコモビジネスレディス最終日が3日、千葉・浜野GC(6704ヤード、パー72)で行われた。2打差の首位で出た菅沼菜々(あいおいニッセイ同和損保)が7バーディー、1ボギーの66で回り、通算18アンダーでツアー4勝目を飾った。1年前、同じ浜野GCで開催されたパナソニックオープンレディース以来の勝利。約15ヤード伸びたドライバーショット、高弾道のアイアンショット、勝負強いアプローチ、パットで2位に5打差をつけた。オフの間はアイドル活動もしたが、それ以上に練習とトレーニングを重ねていた。アンチもいるが、この日は菅沼の全てを肯定するファンの声援を受け、笑顔の花を咲かせた。
最終18番パー3。残ったのは1年前と同じ80センチのパーパットだった。それを真ん中から沈めてバンザイ。「菅沼菜々」のタオルを持った大勢のファンからの「おめでとう」を受け、笑顔が弾けた。
「去年は本当にどん底からの復活。すごく一打一打にしびれていたんですけど、今回は自信満々でゴルフをすることができました。その分、去年よりは緊張しませんでした」
言葉通り、2番パー4で7メートルのパットを決めたのを皮切りに3連続バーディー。後半も10番パー4で10メートルを決め、13番パー4では、グリーン左から22ヤードの第3打を下りスライスラインに乗せてスコアを伸ばした。そして、終盤の16番パー4で2.5メートル、17番パー5でも60センチのバーディーパットを沈めた。
「13番のチップインは本当に奇跡でした。ボールに大きな泥がついていて、『こんなの絶対に寄らない』と思っていたのに」
運も味方したが、自身の技術と状況を冷静に判断した選択を重ねていた。強烈なアゲインストが吹いていた17番。菅沼はフェアウェーから、迷わずドライバーを振り抜いた。直ドラだ。結果、ボールは地をはったがそれも織り込み済みだった。
「トップ(ヘッドの下に当たってゴロになるミス)でもいいと思っていました。コロコロいった方が手前に運べる確率が高いと思っていたので」
この日は1年前とは比較にならない程のパワーも感じさせた。オフとシーズンが始まっても積み重ねてきたウェイトトレーニングでは、80キロのバーベルを引くデッドリフトで下半身を強化。手元を硬くした新シャフトもマッチし、ドライバーでの第1打で、同組の天本ハルカ、平塚新夢を約20ヤードも置くホールも多くあった。
「サボりたくなる日もあったんですけど、サボらずに頑張ってきました」
アンチコメントが届いても…自分らしさ貫く
菅沼の闘いは、コースの中だけではない。高校時代に「広場恐怖症」を発症。公共交通機関や閉鎖空間に対する強い恐怖を抱えるこの症状により、今季も飛行機移動が必要な北海道や沖縄の大会には出場できない。「ゴルフをやめようかな」と本気で思い悩んだこともある。どん底の時期を救ったのが、Sexy Zone(現timelesz)の楽曲「Stand up! Speak out!」だった。
「その曲にすごい励まされて。そこから、自分がそういう世界(表舞台)に立って、誰かに元気を届けられるような人間になりたいと思って、プロを目指すきっかけになったんです。自分も誰かに勇気を届けたいなって」
だからこそ、菅沼菜々は自分を表現することを恐れない。アイドル好きが高じ、オフにファンミーティングを開催するようになり、今年1月には500人を前に歌い、踊り、2月にはシングルCD「君の救世主になりたくて!」でメジャーデビューを果たした。オリコンデイリーシングルランキングで、初日15位にもなった。その分、本業での覚悟も決まっていた。
「これで成績が悪かったら絶対にたたかれるし、『何やってんだ』って思われるのはわかっています。でも、私はプロゴルファーの中で1番と言えるぐらいゴルフが大好きですし、練習もトレーニングも本当にたくさん頑張っていたので、こうして結果を残せてうれしいです」
SNSにアンチコメントが届いても、自分らしさは貫く。その信念の裏には、批判を黙らせるだけの圧倒的な努力があった。練習シーンは公開していないが、ファンはそれを十分に分かっている。
「他の選手とはちょっと違うことをやっても、認めて応援してくれる皆さんがいる。私と同じ広場恐怖症の人も『菜々ちゃんを応援するために、頑張って電車に乗ってきた』と言ってくれます。なので、本当にこれからも頑張りたいです」
そんな生きざまは今、現実に多くの人々に勇気を与えている。獲得賞金の一部やグッズの売り上げの全額をパラスポーツ協会などに寄付。「誰かの役に立つ人間になりたいので」と言葉に力を込めた。
会見の最後。記者から「ファンミーティングで浴びる声援と今日、優勝を決めて受けた歓声。どっちが気持ちよかったですか?」と問われると、菅沼は笑って即答した。
「今日です!」
次週は今季メジャー初戦のワールドレディスサロンパス杯(7〜10日、茨城GC西C)。「今世紀、最も調子がいい」と表現した26歳は、このタイトルも全力で獲りにいく。
(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)
