開園が5月1日に延期された旭山動物園(28日、北海道旭川市で)=古厩正樹撮影

写真拡大

 北海道旭川市の旭山動物園が、夏季営業の開始を当初予定していた29日から5月1日に延期したことを受け、同園を訪れるツアーの中止やキャンセルなどの影響が出始めている。

 同園の30歳代男性職員が行方不明の妻を巡って道警から任意の事情聴取を受け、「遺体を動物園の焼却炉に遺棄した」と話したことから捜査が続いており、旅行会社や地元関係者に不安も広がっている。(臼井塁、鍋倉永憲)

 「稼ぎ頭のツアーで、影響は大きい」。札幌市内にある旅行会社の女性担当者はそう嘆く。

 市が延期を発表したのは27日。同社は29、30日に予定していた同園や富良野・美瑛エリアの観光地を巡るバスツアー計2本を中止し、予約客への連絡や返金などの対応に追われた。予約は道外の客を中心に、満席に近い計約80人に上っていたが、目玉である同園なしにツアーは成立せず、中止せざるを得ないと判断したという。

 5月以降に行うツアーの予約についても、「こわい」などの理由によるキャンセルがあったという。担当者は「今後1〜2か月は状況を注視したい」と話している。

 道内バス大手・北海道中央バス(小樽市)も、同園とJR札幌駅を結ぶ定期観光バスを運行している。29、30日に予約のあった約30人には運行中止を伝え、支払われた代金は返したという。同社の担当者は「旭山動物園は道内でも人気の施設。営業開始を再延期せず、予定通りに開園してほしい」と気をもんでいる。

 一方、動物園の地元・旭川市では、営業開始の延期幅が2日にとどまったことへの安堵(あんど)とともに、イメージ悪化を心配する声も上がる。園近くの飲食店で働く60歳代の女性は「例年5月の大型連休が一番の繁忙期。オープンの日が決まってよかったが、捜査が収束するまで悪いイメージが完全に拭えないのではないか」と不安を口にした。

市長改めて陳謝「憤り禁じ得ず」

 旭川市の今津寛介市長は28日、臨時の記者会見を開き、「重大な事態が発生し、心より深くおわび申し上げます」と改めて陳謝した。

 今津市長は営業開始延期について、「捜査に全面協力する中で、来園者を迎える準備に時間を要した」と説明。年間の来園者が約130万人に上る同園を「地域経済、観光を牽引(けんいん)する道北の中心施設で、命の大切さを伝えてきた」とし、道警に対する男性職員の話が裏付けられた場合、「どのような影響を及ぼすか容易に考えられる。憤りを禁じ得ない」と語った。市や園のイメージダウンや風評被害も大きいとし、「信頼を取り戻す取り組みを進めたい」と述べた。

 また、当初営業予定だった29、30日に向け、園内の飲食店や売店が事前に調達した食材の費用や従業員の人件費の補償を検討する考えも明らかにした。

 市には「旭山動物園は旭川の宝です」「開園を心待ちにしています」といった応援のメッセージが約1000件寄せられているという。今津市長は「動物園はかつてない危機に直面しているが、足を運んでいただき、動物たちや職員、動物園、地域を応援していただきたい」と呼びかけた。