76歳・節約家「ひとり暮らし歴」は約50年に。年金生活になって感じた変化と人の温かさ:2026年3月トップ10
ESSEonlineで2026年3月に公開された記事のなかから、ランキングTOP10入りした記事のひとつを紹介します。
画廊と美術館での学芸員経験をもち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さん(76歳)。高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしながら、月4万円の年金で生活しています。今回は、約50年ひとり暮らしをしてきた今、思うことを紹介します。
※ 記事の初出は2026年3月。年齢を含め内容は執筆時の状況です。

「生きる実感」を求めてスタートしたひとり暮らし

幼少期から自力で成し遂げられることが少なかった私が、ひとり暮らしをしてみたかったのは、なにもできなかったからこそ、生きる実感を手にしてみたかったからかもしれません。
苦境にも挑戦してみたいと思い、20代で家族から独立しました。45歳のときに正規雇用の仕事から離れ、年金生活に入る65歳まではアルバイトなど非正規雇用者として生計を立ててきました。

仕事をやめてからは在宅時間が増して、ひとり暮らしを始めた当初と衣食住全般に違いがでてきました。洋服はそれほど必要でなくなります。つい買いこんでしまったりして、タンスがパンクするのをさけるためです。

食生活は、私の場合改善されました。仕事をしていたときは、つい栄養配分や食事時間が乱れがちになりましたが、今は健康第一と考え、食べものに気づかうよう心がけています。
家で過ごす時間が増えたからこその心がけ

年金生活になってからのいちばんの変化は、家で過ごす余暇の時間です。
どうせ毎日家にいるのだから、面倒な家事は明日にまわせばいいといった自由時間の使いみちこそ、在宅時間の多い高齢者の落とし穴かもしれません。そこで「ひんぱんにお片付けをすること」を心がけています。
都心でのひとり暮らしが長かった私が、その頃住むことができたのは、家賃に見合う1DK程度の狭い住まいでしたが、郊外の団地に移ったことで3DKに暮らせるようになりました。部屋数が多いことは、それなりの開放感がありますが、その部屋をなるべく物置にしてしまわないように努めることが、今の私にできる仕事だと考えています。
50年のひとり暮らし、後悔はなし

身寄りのない「完全無欠の独り者」である私は、孤独などにさいなまれているかといえば、そうでもありません。
数年前コロナ禍で難儀した折も、都や自治体の支援を受けながら、なんとかきり抜けました。ただし昨年骨折して手術をした際は、完治が遅れたためかさんだ計5万円以上という介護タクシー代や、その後の通院のためのタクシー費用の捻出などに悩まされました。
また長期入院中に滞った銀行振り込みや、住居の事務手続きなどを回る足がなくて困りました。それは近隣とさえ交流がないため陥った危機であり、ここで初めて、私には気軽に頼れる人がいないという厳しい現況に直面しました。
遠地に住む知人に急場を訴えると、幸いにも遠路クルマで駆けつけてもらえました。そんなときは人の温かさがどれほどかありがたく思われるものです。そんなふうに謹んで人に頼ることや、ない知恵も絞って乗り越えてみようと自分を励ますことなど、生きる上の現実的な苦難に挑戦してみることこそ大事であるように思えます。
そんなわけでひとり暮らしを始めて以来、あと戻りすることも後悔することもなく、76歳まで貫いてきました。大事なのはこれからであって、さらなる老いに向かう今後は、悪戦苦闘の日々が待ち構えているのかもしれません。なんとか衰えていく知恵を磨きながら、笑いの多い月日を過ごしたいと願っています。
