【酒井 晋介】経理や総務、税理士や弁護士も危ない…!「AI国王」が予見する「AIの発達」で「大リストラされる職業」
ホワイトカラーを襲う「大リストラ時代」
「ChatGPTで文章を要約させた」「画像生成AIで遊んでみた」――。
世間が新しいツールとしてAIを楽しむ裏側で、ビジネスの現場では、私たちの働き方を根本から変えるほどの技術革新が静かに、そして急速に進んでいる。
AIはもはや、人間をサポートする「便利なツール」の領域を完全に超えたと言っても過言ではない。人間がキーボードを叩く代わりに、AIが自律的にパソコンを操作し、営業から決済、納品までを全自動で完結させる時代がすでに始まっているのだ。
「今後数年で、日本のホワイトカラーを襲う『大リストラ時代』が必ず来ます。これは資本主義の構造上、避けて通れない現実です」
そう不気味な予言をするのは、金色の王冠を戴き、鮮やかなオレンジ色の装束という出で立ちで異彩を放つ、「AI国王」ことYMMD合同会社CEOの齋藤潤氏(44歳)だ。一見すると冗談のような姿だが、眼鏡の奥から覗く鋭い眼差しは、AIが世の中を全面的に動かす違う次元の未来を見据えている。
齋藤氏は約10年にわたり「グリー」などのソーシャルゲーム業界で企画者として最前線を走ってきた。特許も5件取得している筋金入りのITエリートだ。そんな彼が、突如として会社を辞し「AI王国」の建国を宣言したのは2023年のこと。自らAI国王に即位し、現在は自治体(静岡県伊東市・東伊豆町・西伊豆町・松崎町、千葉県大多喜町)や企業(ベルテックス静岡など)のAI顧問に就任している。驚くべきは、彼の会社の組織構成だ。
「弊社の『社員』は全員AIです。人間は私一人。私自身の認識についても、もはや『AIと人間のハーフ』といった感じです。人間の社員を雇う予定はありません」(AI国王、以下同)
人間の社員はいらない
齋藤氏は、AIが社会の仕組みや労働のあり方を根底から塗り替えていくと予測する。
「これまでAIといえば、質問に対して高度な回答を返してくれる一問一答型というのが基本的なものでした。しかし2026年は『自律型AIエージェント』の元年です。AIにパソコンの権限をわたし、『これをやっておいて』と仕事を投げるだけで、AIが自ら画面のボタンを認識し、情報収集からSNS投稿、画像作成まで全て勝手に進めてくれます」
この自律型AIの登場により、世界のビジネスモデルは根本から覆りつつあるという。その最たる例が「AIネイティブ企業」(創業時からAIの活用を前提に組織や業務が設計され、少人数で圧倒的な生産性を叩き出す企業)の台頭だ。
「これまでなら、リサーチや文書作成、データの整理といった人間がチームを組んでやっていた仕事が、すべてAIに置き換わります。極端に言えば、人間のオーナーが1人いれば社長すらいらない。統括の『社長AI』を作り、あとは『Facebook投稿担当AI』『競合調査AI』『顧客対応AI』といった具合に役割を与え、AIだけの会社を作れるのです。彼らは夜も寝ずに働き、自動で営業をかけ、決済まで行います」
すでに海外ではニッチ市場において、こういった人間がほぼ介在しない「AI企業」が荒稼ぎを始めているという。1人で数百億円の売り上げを叩き出す「ソロプレナー」(ソロプレナー:Solo=独りとEntrepreneur=起業家を合わせた造語。従業員を雇わず、AIなどを駆使して1人で組織並みの成果を出す『ひとり起業家』のこと)が実際に誕生しているのだ。
一人の人間がリサーチや営業、サポート業務をAIに「指示」するだけで、世界中の市場を相手に24時間休まず稼ぎ続ける――。そこには、人間を雇ったことで発生する膨大な給与や福利厚生、さらには数ヵ月・数年を要する教育といった、「コスト」と「時間」の概念が一切存在しない。この新たなビジネスモデルは、既存の資本主義のルールを根底から破壊するかもしれない。
税理士や弁護士も安心はできない
では、この怪物の進化によって、リストラの憂き目に遭うのは誰か。AI国王は「パターン化された仕事は消滅する」と断言する。
「AIが自ら考えてPCを操作する時代において、真っ先に不要になるのは『指示されて動く層』です。たとえば、経理や総務などのバックオフィス業務。領収書の処理やデータ入力、ルーティン化された書類作成などは、AIのほうが圧倒的に速く、しかもミスをしません。人間を雇えば月々数十万円のコストと社会保険料がかかり、メンタルケアも必要ですが、AIなら月額数千円で24時間365日、文句も言わずに働き続けます」
さらに、かつては「手に職」と言われた専門職ですら、安全圏ではないという。
「税理士や弁護士、行政書士といった士業の領域にもAIは容赦なく入り込みます。過去の判例や膨大な法律の条文を瞬時に整理し、整った書類を作成する情報処理能力において、人間はAIには勝てません」
恐ろしいのは、一度自分の仕事がAIに奪われた場合、同業他社への「横移動(転職)」すら不可能になるという点だ。
「ある会社がコールセンターや経理部門をAIに置き換えたとしたら、ライバル企業も当然同じようにAI化を進めます。リストラされたからといって別の会社に転職しようとしても、そこにはすでに『同じ業務を完璧にこなすAI』が座っている。同じ業種での再就職は絶望的になるのです」
また、”AIリストラ”が進んでいる米国ではこんなことも起きているという。
「100人の組織のうち定型業務をこなす30人をリストラ。AIを使いこなせる30人を入れ替えることで、人数を変えずに生産性を3倍にするという『残酷な入れ替え戦』が始まっています。ルーチンワークしかしてこなかった人が別の会社に転職しようとしても、『うちもバックオフィスは全部AIにしたから』と断られ、もはや逃げ場はありません」
一方で、日本企業には特有のブレーキがあり、すぐには”AIリストラ”は進まない側面もあるという。
「日本企業は『波風を立てたくない』という理由で、合理性に欠けていても雇用を守ろうとする傾向が非常に強い。しかし、ライバル企業がAIを駆使して圧倒的な利益率を叩き出し、目の前に危機が迫れば話は別です。背に腹は代えられなくなった時、いずれ日本でも本格的なリストラという大鉈(なた)が振るわれるでしょう」
はたして人間にできることはないのか――。後編記事『AIによる「大リストラ時代」がまもなくやってくる…!生き残るために必要なのは人間ならではの「意外なスキル」』で詳しく見ていく。
【つづきを読む】AIによる「大リストラ時代」がまもなくやってくる…!生き残るために必要なのは人間ならではの「意外なスキル」
