糖を断ち、脂を食べる「断糖高脂質」でスリムかつヘルシーな体を手に入れた金森氏

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 現代社会の利便性と引き換えに、私たちは動物としての根源的な機能を失いつつある。前編では理学療法士で『絆創膏を貼るだけ睡眠』の著者・山内義弘氏と、「糖質から脂質へのシフトチェンジ」を説き、『なぜヒトは脂質で痩せるのか』(扶桑社新書)が発売即重版となった作家の金森重樹氏が睡眠について知見を交換した。後編ではさらに踏み込み、人類が数百万年かけて培ってきた旧石器人としての生存戦略に焦点を当てる。
◆人類の狩猟採集時代の食生活は?

――金森さんは、現代人が健康を取り戻す道は「旧石器時代の生活様式」に立ち返ることだと主張されています。その基本が食事ですが、具体的にはどうすべきですか?

金森 「糖を断ち、脂を摂る」のが大前提なのですが、その背景から説明しましょう。人類が狩猟採集をしていた頃、ご馳走は赤身の肉ではなく、ハツ・レバーなどの「命の源」といわれる内臓でした。12万年前のネアンデルタール人のドイツで発見された遺跡(脂肪工場)からは、骨髄を煮た跡を示す大量の骨が出てきています。彼らにとって「骨の髄」こそが最も効率的なエネルギー源であり、細胞を修復するための特効薬だったわけです。

山内 それは面白い。でも、現代日本人は骨髄を口にする機会なんてほとんどありませんね。

金森 だから、特に現代人はアミノ酸の一種であるグリシンが不足してしまっているわけです。グリシンはすじなどの結合組織、あるいは骨髄に豊富に含まれていますから、もっと食べた方がいい。民族誌が示唆しているのですが、ハツとレバーは地球上のどの狩猟採集民族でも特別な部位とされていた。ハツはコエンザイムQ10が多く含まれ、レバーはビタミンAや葉酸やB12が豊富です。狩猟採集民はこれを妊婦や子供に優先的に与えるルールがあったのは成長分化に不可欠だからです。

山内 グリシンはコラーゲンの主要成分でもあり、関節や皮膚の弾力に直結します。理学療法の現場でも、「組織の修復」という観点から栄養は無視できません。金森さんが推奨する内臓食は、物理的な体の強度を保つうえでも理に適っています。

金森 現代人は「タンパク質を摂ろう」と言って鶏の胸肉ばかり食べたりしますが、それでは成長を促進すると同時に老化する。旧石器人のように、修復寄りのコラーゲンを、脂と一緒に流し込むことです。

◆諸悪の根源は「快適すぎる環境」

――食事以外にも、旧石器人の知恵として寒冷負荷の重要性を説かれていますね。

金森 現代の住環境はあまりに快適すぎます。常に一定の温度に保たれた部屋にいることで、私たちの熱産生の仕組みは錆びついている。冬の冷たい水に身をさらしたり、薄着で寒さを感じたりする寒冷負荷は、ミトコンドリアを活性化させ、体脂肪を燃焼させる「ベージュ脂肪細胞」を呼び覚ます刺激です。

山内 私自身、コロナを機に富士の麓に移り、山中湖でその効果を身をもって実感しました。冬の厳しい寒さの中で活動すると、体の奥底から熱が湧き上がってくる感覚がある。普段の生活では決して使われない予備のエンジンが始動したような、あの独特の感覚は現代のトレーニングではなかなか得られません。

金森 それは山内さんの体が、旧石器人としての機能を取り戻した証拠ですよ。

――現代人は、そもそも甘やかされすぎているということ?

金森 はっきり言えば、食べすぎであり、快適すぎる。文明の進化によって我々は「飢えと寒さ」を克服しましたが、その代償として生きるために必要な刺激を失ってしまった。現代人の不調の多くは、過剰な栄養と過剰な快適さが招いたものです。この刺激=スイッチを強制的に再起動させる最も手っ取り早い方法が、飢餓です。