小川淳也氏の「女性天皇」発言撤回が波紋、4月15日の全体会議で問われる皇族数確保と「配偶者の身分」の難題

新年一般参賀で、集まった人たちに手を振られる天皇、皇后両陛下と愛子さま、秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2026年1月2日、写真:共同通信社)
2021年の有識者会議報告が示した「皇族数の確保」を巡る方策に基づき、約1年ぶりに再開される皇室制度改革の全体会合。女性皇族が婚姻後も身分を保持する案や、旧宮家の男系男子を養子に迎える案など、具体的な制度化に向けた議論が山場を迎えている。各党で見解が分かれる「配偶者と子の位置付け」や「国民の理解」という壁をどう乗り越えるのか。放送作家で皇室ライターのつげのり子氏が、4月15日の会合で焦点となる合意形成の行方を追った。
皇室議論の「繊細な均衡」を露呈させた野党第一党代表の失言
中道改革連合の小川淳也代表は2026年4月3日の記者会見で、3月27日に「女性天皇を生きているうちに見てみたい」と述べた自身の発言を撤回し、謝罪した。
小川氏は「言葉のハンドリングを誤った」と述べ、とりわけ「生きているうちに」という表現が、対象者を限定しかねず、意図と異なる形で受け止められる可能性があったと説明している。
政治家の不用意な一言として片づけることもできるが、この撤回は、いまの皇室制度論議がどれほど繊細な均衡の上に成り立っているかを、むしろ鮮やかに示したように思える。

女性天皇を巡る自身の発言を撤回し、謝罪した中道改革連合の小川淳也代表(2026年4月3日、写真:共同通信社)
一方で、愛子さまを女性天皇にという声が世論に一定程度あることは、これまでも繰り返し報じられてきた。もっとも、女性天皇を制度として認めるには、少なくとも皇室典範の改正が必要であり、実現へのハードルはなお高い。
高市早苗首相も3月16日の参議院予算委員会で、女性天皇を認めるかどうかを問われた際、「皇室典範は、皇位は皇統に属する男系男子がこれを継承すると定めており、認められません」と現行ルールを強調した。
そのうえで、悠仁さまの次代以降の皇位継承を具体的に議論するには「機が熟していない」と述べ、現時点では慎重な姿勢を示している。
そんな中、衆参両院の正副議長は、各党派の責任者が出席する皇室制度改革に関する全体会合を4月15日に行う方向で調整に入り、約1年ぶりに協議が再開する見通しとなった。
しかし中道改革連合は3月末の段階で、旧立憲系と旧公明系の間に見解の隔たりが残っているため、4月15日までに党として意見をまとめるのは難しいとの認識を示している。
つまり今の政治日程は、「皇室の将来像」全体に踏み込む局面というより、まずは皇族数確保策をどう整理するかという、極めて限定された論点に絞って動いている。だからこそ、小川氏が「女性天皇」という言葉を口にした瞬間、その発言は制度論の範囲を超えて受け止められたのである。
女性皇族の配偶者と子に「身分」を与えるべきか? 立憲と公明の対立
そもそも、いま国会で議論されているのは、2021年の有識者会議報告が示した「皇族数の確保」を巡る方策だ。現行の皇室典範では、皇位は「皇統に属する男系の男子」が継承すると定められ、内親王・女王は天皇および皇族以外の者と婚姻したときに皇族の身分を離れる。
また、天皇および皇族は養子をすることができない。有識者会議は、こうした現行制度のままでは将来の皇室を支える人数が大きく減少する恐れがあるとして、まずは皇位継承資格の問題と切り離し、皇族数をどう確保するかを先に議論すべきだと提案している。
報告書が示した柱は3つある。
第1案:女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する制度を設けること
第2案:旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎えること
第3案:前二者でもなお十分な皇族数が確保できない場合に、法律によって直接、男系男子に皇族身分を付与すること
もっとも、この3案は同列ではない。報告書は、まず第1案と第2案を具体的な方策として検討し、第3案はなお不足がある場合の補充的手段として位置付けている。ここからも、4月15日の協議がいきなり皇室制度の全体設計に踏み込む場ではなく、応急措置をどこまで制度化できるかを探る場であることがわかる。
このうち、もっとも合意に近いとみられてきたのが第1案、すなわち女性皇族が婚姻後も身分を保持する制度だ。
実際、2025年の全体会議では、公明党が女性皇族の婚姻後の身分保持を制度化すべきだと表明し、立憲民主党も、女性皇族が婚姻後も皇籍にとどまること自体については各党で一致しているとの認識を示していた。

2025年4月、衆参両院が開いた皇族数確保に関する全体会議に臨む額賀衆院議長(中央右)ら(写真:共同通信社)
しかし、ここで政治が真正面から向き合わねばならないのは、女性皇族本人ではなく、その配偶者と子をどう位置付けるかという問題である。ここにこそ、制度論を超えた各政党の皇室観の違いが表れている。
公明党は、女性皇族が婚姻後も皇族であり続ける制度には賛成しつつ、配偶者と子については「皇族の身分を持たないとするのが適切だ」としている。
理由として挙げているのは、配偶者となる人の職業選択や居住地など、一般国民として保障されてきた自由を保持できることが、女性皇族の婚姻の支障とならないのではないかという考え方だ。
これに対し立憲民主党は、配偶者や子も皇族とする案を「皇族数確保という当面のこの会議の目的に沿う制度」だと位置付け、皇位継承資格を認めるかどうかは、皇室典範1条の問題であって、直ちに女系天皇につながるわけではないと主張している。
小川氏の発言が波紋を広げたのは、まさにこの接点に触れてしまったからだろう。現在の協議はあくまで「皇族数の確保」であり、女性天皇・女系天皇の是非を正面から決める場ではない。
ところが、女性皇族の身分保持を認め、その家族をどう扱うかを論じ始めると、議論はどうしても将来の皇位継承のあり方へとつながっていく。小川氏が謝罪の理由として「対象者が限定されかねない」と述べたのは、その言葉が制度一般への賛意ではなく、特定の将来像を期待するメッセージとして受け取られかねなかったからだ。
逆に言えば、この一件は、いまの政治が「人数の問題」と「継承の問題」を切り分けて議論しようとしながら、実際には両者を完全には切り離せない現実を露呈させた。

表:共同通信社
今回の協議は「半歩前進」に終わるか? 試される政治の覚悟
もう一つの柱である旧宮家の男系男子を養子として迎える案は、保守派にとってより本命に近い。自民党は2026年の重点政策で、「皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする」案を第一優先として、皇室典範改正を目指すと明記した。
男系男子による皇統維持という現行の枠組みを崩さないため、この案は保守層にとって理論的な整合性が高い。しかし、現行の皇室典範第9条は養子を禁じており、制度化には法改正が不可欠だ。
有識者会議報告書も、旧宮家の男系男子を皇族とする場合、長年民間人として暮らしてきた方が、皇族となることへの国民の理解をどう醸成するかや、法的な整合性など、詳細な検討が必要だと指摘している。
こうして見ると、4月15日の協議の焦点は、「改革案を決めること」そのものではなく、「どこまでなら先にまとめられるか」を探ることにあるのではないだろうか。
女性皇族本人の身分保持については合意の余地がある一方、配偶者と子の身分、旧宮家養子案の憲法適合性と国民的理解という2つの核心部分では、依然として溝が深い。しかも今回は、中道改革連合の内部に旧立憲系と旧公明系の見解の差が残っている。
そうであれば、今回の会議は最終決着ではなく、「合意可能な応急措置」と「なお先送りされる改革案」を見通すにとどまる、いわば半歩前進に終わる公算が大きい。

「歌会始の儀」に出席された皇后さま、愛子さま、女性皇族方(2026年1月14日、写真:共同通信代表撮影)
ただ、ここで忘れてはならないのは、今回の議論があくまで「皇族数の確保」に照準を合わせたものであり、皇位継承制度そのものの将来像にはなお踏み込んでいないという点だ。
2021年の有識者会議報告も、まず人数の確保を急ぎ、次代以降の継承のあり方は将来の状況を踏まえて議論を深めるべきだとしている。
その意味で、4月15日は、政治が皇室制度の将来像に向き合う覚悟を持てるのかを測る節目になる。もっとも、それだけで皇室制度への不安が解消されるわけではない。
配偶者と子をどう位置付けるのか、旧宮家案を国民がどう受け止めるのか、そして最終的に継承のあり方をどう考えるのか。4月15日に問われるのは、制度の技術論以上に、政治がその全体像から目をそらさずに、真摯に深く議論できるかどうかであり、注視していきたい。
筆者:つげ のり子
