自社株は買うな、ライバル社の株も買うな…ベテラン経済評論家の主張、知れば「腹落ち」する納得の理由
株式投資にチャレンジする人が増えています。投資信託では物足りず、個別株投資に興味を持つ人もいるでしょう。その場合、まず最初に購入する株を精査することが重要ですが、どのような着眼点や注意点があるのでしょうか? 株式投資の経験が豊富な経済評論家の塚崎公義氏が解説します。
投資初心者は、目的を明確に意識しよう
投資の目的は様々です。大きく分ければ「投資で儲けてリッチな生活をしたい」「銀行預金はインフレに弱いリスク資産だから、株や外貨などにも資金を分散させておいた方が大損のリスクを減らせる」といったところでしょう。
前者は、リスクを覚悟した上で儲けを狙いにいく投資ですから、大切な老後資金を投入するのではなく、余裕資金で楽しみましょう。ラスベガスに老後資金を持っていく人はいませんから。投資の方法は様々です。これぞと思った株をこれぞと思ったタイミングで集中的に買う、といったことでもよいでしょう。ちなみに筆者の余裕資金投資は「上がりそうな時に買う」といったタイミング狙いの投資ではなく、「ハイテク高成長銘柄に投資して10年持ち続ける」といった投資を主にしています。
リスク分散の投資であれば、特定の株を買うよりも投資信託で「実質的に多くの銘柄の株に少しずつ投資する」方が安心でしょうし、一度に大量に買うよりも毎月少しずつ積み立てる方が安心でしょう。
様子がわかる自社株は、投資判断を行いやすいが…
従業員持株会に加入している人は多いかもしれません。そうでなくても、自分の会社のことはよく知っているので、投資判断が行いやすいということで、自社株に投資している人も多いようです。
たしかに、知らない業界の知らない会社について勉強して投資するよりも、自社株に投資する方が手軽で安心でしょう。しかし、リスク分散という観点からは、自社株投資はお勧めできません。もちろん、勤務先に忠誠心を示したい、という投資動機もあるでしょうし、持株会に勤務先から補助金が出ている場合もあるでしょう。そういう場合の自社株買いについては一概に否定するつもりはありませんが。
勤務先企業が発展すれば賞与も増え、株価も上がるでしょうが、勤務先企業が衰退すれば賞与は減り、株価も下がるでしょう。印象的だったのは、かつての超一流企業であった山一證券の元社員が「自社株投資だけは絶対やめなさい」と力説しているのを聞いた時です。勤務先の倒産によって退職金も受け取れず、持っていた自社株が紙屑になってしまった人の言葉は重いです。
ちなみに、筆者の友人で「ライバル企業の株に投資している」という人がいました。ライバル企業であれば、業界事情も個別企業事情もある程度わかるでしょうし、何より「ライバルに競争で負けて賞与が減ってしまった時に、ライバル企業の株価が値上がりしていれば助かるだろう」ということでした。
それを聞いた筆者は、たしかに合理的なリスク回避投資だ、と感心したものです。しかし、友人の結果は悲惨なものでした。業界全体が「構造不況業種」になってしまったからです。
リスク分散の観点からは、むしろ「異業種」の方がよい
筆者の友人の例を挙げるまでもなく、リスク分散という観点からは、異業種の株を買うことが望ましいと言えるでしょう。特に、輸出企業の社員が輸入企業の株に投資する場合などは、リスクが軽減される効果が大きそうです。円安で勤務先が儲かっている時は、賞与が増えたりするでしょうから、持っている輸入企業の株価が下がっても気にならないでしょう。一方で、円高になって勤務先の業績が悪化し、賞与が減る時には保有している輸入企業の株が値上がりして賞与の減少をある程度カバーしてくれるかもしれません。
もっとも、それ以上に望ましいのは外国の株を買うことかもしれません。日本経済が長期的に停滞して海外経済に遅れを取るかもしれず、あるいは大災害で日本経済が大打撃を受けるかもしれないからです。
海外の株を買うためには海外企業の情報を集めて分析しなければならず、非常に面倒だ、と感じる人もいるでしょう。そういう人は、「どうせバクチなのだから、ルーレットで黒に賭けるのと同じように株を買えばよいのだ」と考えてみましょう。何も知らない会社の株を買っても、損をするとは限りません。「世界中のプロの半分が値上がりを予想して買い注文を出し、残りの半分が値下がりを予想して売り注文を出した結果として成立しているのが現在の株価なのだ」と考えれば、何も考えずに買い注文を出しただけで、世界中のプロの半分と同じ判断をしたことになるのですから。
大変乱暴な発想ですが、リスクを分散するという観点からすれば、「自社株買いよりマシだ」と言えるかもしれません。
上に、筆者はハイテク高成長銘柄でバクチを楽しんでいる、と記しましたが、筆者がハイテク産業事情に詳しいはずもなく、「プロの半分が自分と同じ判断をしているのだ」ということを心の支えとしているのです(笑)。
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塚崎 公義
経済評論家

