終わった…父が死去した3か月後にドイツから帰国した54歳息子。荒れ放題の実家で見つけた「一通のお知らせ」が招いた悪夢
“遺産相続”と聞くと、お金を引き継ぐ・もらえるという印象を持ちがちです。しかし、遺産には資産だけでなく借金などの「マイナスの財産」も含まれます。親の財産状況をきちんと把握していなければ、思わぬ悲劇に直面することも……。本記事では、永峰英太郎氏の著書『人はこんなことで破産してしまうのか!』(三笠書房)より一部を抜粋・再編集し、親との関係悪化をきっかけに破産へと追い込まれた事例について解説します。
疎遠だった父の死後に発覚した「まさかの借金」
仕事の関係でドイツに住む54歳の男性は、母親の死後、秋田県能代市に住む父親との関係を絶っていた。というのも、長く母親を虐待していた父を許せなかったからであった。父親は飲むと、途端に暴力的になる性格だったのだ。
父親の姉から、父親の死去を知らせる手紙が届いたのは、父親の死後1か月が経った頃だった。手紙には「すでに葬儀などは終わっているけど、部屋はそのままだから、一人っ子であるあなたが片付けをしてほしい」と書かれていた。
そのまま3か月が経過した頃、ようやく1週間の休みが取れて、男性は帰国して父親の家を訪ねた。
男性がまず行ったのが、自動車と自宅の相続だった。今回の滞在中に売ることは難しいと判断し、まずは相続することにしたのだった。
次に行ったのが部屋の片付けだった。家の中は、かなり荒れ放題だったが、父親の面影を消し去りたい気持ちで、男性は一心不乱に断捨離を行っていった。
父親の書斎の片付けに入ったときだった。引き出しを開けると、多くの手紙類がしまわれていた。それをすべてゴミ袋に捨てようとした瞬間だった。「督促状」の文字が見えた。
「え?」と思った男性は、その封筒を開けた。消費者金融から200万円の借金返済を求める内容だった。
まさか、と思った男性は、そのほかの手紙類をチェックしていった。すると、7社から合計1500万円超の借金があることが判明した。
マイナスの財産の対処方法は3つある
民法では、プラスの財産を引き継ぐように、マイナスの財産もまた、遺された配偶者や子供が引き継ぐことと定められている。
しかしそれでは、遺された家族があまりに不憫である。そこで民法では、親が借金を残したまま亡くなった場合は、相続人が借金を引き継ぐか、引き継がないかを決めることができるように定めている。
その方法は3つある。相続財産のすべてを相続する「単純承認」と、プラスの財産の限度で借金を支払い、余りがあれば、それを相続する「限定承認」、そしてプラスの財産も借金も引き継がない「相続放棄」である。
相続放棄や限定承認は、相続の開始を知った日から3か月以内に、家庭裁判所に申告する必要がある。3か月を超えてしまえば、自動的に単純承認となり、借金を背負うことになるのだ。
弁護士に相談、待っていた最悪の結末
父親の借金が判明すると、男性は知人の弁護士のもとを訪ね、父親に多額の借金があったこと、その事実を知ったのは、父親の死から4か月後であったことを話した。「もう相続放棄は不可能なんですよね」とため息をつくと、弁護士は「いや大丈夫ですよ」と答えた。
相続放棄の期限は、相続の発生を知ってから3か月以内だが、この男性のように、この期間を過ぎてから、借金の存在を知るケースはあり得る。このようなケースの場合は、借金があることを知ってから3か月以内であれば、相続放棄をすることができるのだ。
その弁護士の言葉に、ほっと安堵した男性であった。しかし、次の言葉で、男性は真っ青になる。
「ちなみに、プラスの財産は相続していませんよね。そうなると、相続放棄は不可能です」
万事休す。自宅などを相続していた男性は結局、借金を相続することとなり、自己破産の道を選んだのだった。
親が元気なうちに借金の確認を
皆さんは、親に借金があるかどうかを知っているだろうか? おそらく「ノー」と答える人のほうが多いだろう。
しかし、遺産相続の際、借金の有無を知らないでいると、この男性のような事態に陥る可能性がある。そうならないためにも、まずは、本文で触れたような「相続放棄」のルールをきちんと理解しておきたい。また、親の死後に借金の存在を知るのは、あまりに危険だ。親が元気なうちに「借金ないよね?」と聞いておこう。
もしなければ、笑って「ないわよ」と答えてくれるはずだ。親が口を濁した場合は、「相続時に、遺された家族が借金を背負うことになるんだよ」と伝えよう。そして、家族で返済方法の計画を立てることが大切だ。
永峰 英太郎

