「志望企業の面接を知りたい」こっそり録音→ネットで共有 バレたら内定取り消しに?
就活の面接でのやりとりの音声ファイルをネット上で共有するサービスが、就活生や転職活動をする人たちから注目を集めています。
就職活動をしていると、志望する企業でどんな質問をされるのか、どんな受け答えをした人が選考を進められているのか知りたいという人も少なくないでしょう。そうしたニーズに応えるサービスといえそうです。
しかし、企業側に黙って面接を録音することにリスクはないのでしょうか。本記事では、面接の秘密録音に関する法的な問題点について解説します。
●「入社するつもりが本当にあるのか」「録音の目的がなんだったのか」により様々な問題に発展する可能性がある
この問題は、面接の録音をする企業に「入社するつもりがあるかどうか」と「録音の目的(自分で利用するか、第三者に提供するか)」によって、法的な問題点が変わってしまうと思われます。そこで、以下の4つのパターンに分けて考えてみます。
●【パターン1】入社するつもりがある + 自分で利用する目的
入社を希望している人が、たとえば面接におけるハラスメントの記録を残すためや、自分自身の振り返りのために録音した場合、刑事上の問題は生じないでしょう。
面接を録音する行為自体を直接処罰する法律は存在しないからです。
民事上の問題としても、録音して自分で利用するだけなら、企業側に具体的な損害が生じることも考えにくく、民事上の問題も生じない可能性が高いでしょう。
●【パターン2】入社するつもりがある + 第三者に提供する目的
入社するつもりはあるものの、録音したデータを第三者に提供したり、業者に売ってしまった場合、問題が生じる可能性があります。
刑事上は、録音データをインターネット上に公開できるような形で第三者に提供した場合、録音内に企業や面接官などの社会的信用を下げるような事実が含まれていれば、名誉毀損罪(刑法230条、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)に問われるリスクがあります。
民事上も、まずは不法行為としての名誉毀損や、プライバシー侵害の問題を生じる可能性があります。
面接の内容は、通常は外部に公開されることが予定されていないでしょうし、突っ込んだ質問や企業内部の秘密とされているような事情も、面接中に出てくる可能性があります。
また、名誉毀損やプライバシー侵害だけでなく、面接が録音され、企業の意図しないところで公開されることによる、企業の採用活動上の支障も問題になるように思います。
たとえば面接の内容自体が独特である場合、録音が第三者に提供されることで面接の公平性を害し、適切な採用活動を行うにあたって支障が生じる可能性もあるのではないでしょうか。
面接の録音を第三者に提供する行為について、こういった観点から企業による法的措置が検討されるリスクはあると思います。
●【パターン3】入社するつもりがない + 自分で利用する目的
このパターンは、現実的にはほとんどあり得ないと思われますので省略します。 具体的には、遊びで就職活動をやっていて、面接を録音して後日自分だけで楽しむ場合、でしょうか。全くあり得ないとはいいませんが、あまり考えなくても良さそうです。
●【パターン4】入社するつもりがない + 第三者に提供する目的
最初から入社する気がなく、第三者に録音データを提供するためだけの目的で面接を受けた場合、そのような目的を秘して面接を受けること自体が法的に問題となる可能性があります。
裁判例は見つからなかったため、あくまでも私見ですが、刑事上の問題として、先に述べた名誉毀損罪の問題だけでなく、偽計業務妨害罪(刑法233条、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)などにあたるリスクもあると考えられます。
企業にとって採用活動はかなり大きな負担となります。全く入社する気がない、しかも第三者に面接のデータを提供するためだけに応募してきた人に対し、時間と労力を使って採用活動を実施することで、会社の業務に支障が生じるおそれがありそうだからです。
民事上の問題としては、先に説明したのと同じように、不法行為としての名誉毀損、プライバシー侵害などの問題が生じる可能性があります。
●「入社したいと思っていました」という言い訳は通用しない可能性がある
録音が後で問題になった際に、本当は最初からその会社に入社するつもりがなく、第三者への提供を目的として面接を受けたのに、「入社したいと思っていました」と言い張っても、通用しない可能性があります。
実際に刑事事件になってしまえば、就職活動の状況や現在の職種など具体的に調べられる可能性があります。また、特定の会社の面接についての依頼を受けているか、なども、LINEやメールなどのログも含めて調べられるリスクがあります。
明らかになった事情次第では、いくら本人が入社するつもりだったと言っても、本当に入社するつもりはなかった、と判断されるおそれはあるでしょう。
●内定取り消しはありうる?
面接受験者が、企業に秘密で面接を録音したことが後で見つかった場合、内定を取り消される可能性はあるのでしょうか。
簡単に言えば、内定を取り消すことができるのは、内定を出した時点では知らなかった、または知ることができなかったような事実があった場合であって、かつ、その事実を理由に内定を取り消すことが、社会の常識として仕方がないといえるような場合だけです。
面接を秘密録音したことは、内定を出した時点では知らなかった事実にあたるでしょう。 そこで、その行為が企業との信頼関係を壊してしまい、「この人を従業員として雇うのは難しい」と判断されるような事情があれば、内定を取り消すことが認められる可能性はあります。
もっとも、たとえば自分の面接を振り返るために録音をしていたような場合には、企業との信頼関係が破壊されるということにはならず、企業から内定を取り消すことはできないと思われます。
