この記事をまとめると

■2025年9月9〜14日の期間で「IAAモビリティ2025」がドイツ・ミュンヘンで開催

■BEVを押し出した展示が目立っていたが2025年のショーでは控えめだった

■BEVに強いイメージの欧州をはじめ世界各国でBEVの普及が停滞している

IAAモビリティで見たBEVブームの衰退

 2025年9月9日から14日の会期にて、「IAAモビリティ2025」がドイツ・ミュンヘンで開催された。フランクフルトからミュンヘンに会場を移してから3回目の開催となっている。

 フランクフルト開催の最後期ごろには、ショー開催のタイミングに合わせて会場周辺で環境保護団体が”公害の元凶”としてクルマをやり玉にあげてデモを行ったり、メーカーへ「環境破壊の原因」として、SUVの生産をやめるように申し入れるなどの活動も、いわばセットとなって繰り広げられていた。

 そのためもあったのか、出展規模を縮小するなど積極的な出展を手控えるブランドや、単に環境保護団体の動きだけではなく、さまざまな理由から出展を見送るブランドも目立ち、世界三大自動車ショーともいわれていたIAAもオワコン化が進んでいた。

 ミュンヘン開催となってからは、ほぼドイツ系ブランド+中国メーカーという出展ブランドの基本構成となり、中国と並んでとくにBEV(バッテリー電気自動車)に前のめりとなっている西ヨーロッパの旗印のようなショーになっていたのだが……。

 筆者は実際に会場に出向いたわけではないが、日本以外、とくに地元ドイツメディアの報道を見ていると、「BEV=ヨーロッパ(とくにドイツ)」というイメージが崩れる、IAA2025に関するリポートが連日続いていた。

 まずはドイツメディア自体が、「ドイツ人はBEV好きではない」というスタンスでの報道がリードしていた。一般的にBEVに熱心な国といえば、中国とヨーロッパを連想するが、2024年でのBEV普及率をみると(含むPHEV)、中国が48%なのに対し、ヨーロッパブランドのなかでも、BEVラインアップに熱心とも見えるドイツは19%にとどまっている(日本は2.8%、トップはノルウェーの92%)。

 しかも、ご多聞に漏れず、ドイツでのBEVの販売は減少傾向に転じているのである。それでも、BEV自体を好んで乗らないとされるドイツのひとたちへの街頭インタビューでは、「中国メーカーのBEVは価格も比較的手ごろで性能も悪くない」というコメントが多く寄せられていた。メルセデス・ベンツやBMW、アウディなど高級ブランドも多く、それらブランドのBEVの価格の高さが現地ではネックとなっているようである。

 会場内でインタビューを受ける業界幹部などは口をそろえて、EUが2035年までにICE(内燃機関)車の販売を禁止する目標に対して、否定的なコメントを寄せていた。

世界中でBEV普及への動きが鈍化してきている

 中国もヨーロッパも、燃焼効率に優れ環境や燃費性能も抜群なエンジンを搭載する日本車相手に、もはや勝ち目がないとも考え、BEVで勝機を掴もうと舵をきったわけだが、筆者個人としては、IAA2025ではBEVを積極的に出さなければならないなかで、半ば白旗をあげるという、なんとも複雑な自動車ショーのように見えた。

 東南アジアではBEV普及をリードしていたタイが、そのけん引役だった中国系メーカー製BEVの乱売傾向に歯止めがきかない状態だ。タイだけではなくインドネシアでもHEV(ハイブリッド車)が脚光を浴び、政府が購入インセンティブを充実させた結果。中国メーカーすらHEVを積極的にラインアップしているのが実情だ。

 ヨーロッパでもすでにHEVが注目されて久しいものの、当初から日本メーカーのHEVに否定的な姿勢を示していたヨーロッパメーカーでは、後手にまわっているのが現状のように見える。

 そして、世界第2位の自動車市場を有するアメリカでは、連邦政府のBEV購入時の最大7500ドル(約111万円)という税額控除が2025年9月末で廃止された。トランプ大統領は選挙時からBEVに対するさまざまなインセンティブの廃止を公約にしており、それを実現させた形なのだが、ここへきて、2035年までにICE車の販売を全面禁止にするとしている、カリフォルニア州の動きに注目が集まっている。

 気になるのは、慎重なのが理由ともされているが、政策実行が周回遅れのようにもなって独自路線を歩んでいるようにも見える日本の今後だ。世界的にもBEV販売が停滞するなか、新車販売市場としてはまだまだトップに近い立場にいる日本市場に、欧州や中国のメーカーが熱い視線を示さないわけがないものと考えている。

 日本メーカーも選択肢としてBEVを増やし、販売促進に積極的な姿勢を見せているが、これはあくまで消費者ニーズに対してバランスをとっているだけのようにも見える。海外の現状を踏まえ、くれぐれも慎重で賢明な政策判断を進めてもらいたい。

 つまりBEVの普及は、あくまで市場原理に基づいたものとして扱ってほしいと筆者は考えている。