この記事をまとめると

■ハイブリッド車の諸元表には「システム出力」という単語が並ぶ

■システム出力とはエンジンとモーターの合成出力を指す

■内燃機関車とハイブリッド車では同じ馬力だとしても出力特性が別物となる

システム出力ってなんだ?

 ハイブリッド車の出力表記で「システム出力」という言葉を目にしたことはないだろうか。とはいえ、ハイブリッド車でシステムという言葉が使われているのだから、エンジンとモーターの合成出力ではないか、と推測はつく。

 これは実際そのとおりで、エンジンとモーターの出力を合わせた出力表記なのだが、この表記はエンジン出力値やトルク値と違い、公的に定められた基準ではないのである。いい換えれば、メーカーが自社製品の性能表記に、その車両のHVシステムに応じた合成出力で示したものである。

 では、なぜこうした表記になったのかを考えてみよう。

 ハイブリッド車にはいくつかの方式がある。このシステム出力の表記が使われるモデルは、エンジンで走行、電気モーターで走行、さらにエンジンとモーターの合成出力で走行するモード(場面)が考えられる。もちろん、エンジン単体、電気モーター単体での性能表記はあるが、たとえばエンジン出力が90馬力、電気モーター出力が80馬力の場合、システム出力が170馬力と表記されることはない。だいたい110馬力とか120馬力といった性能表記になる例が多く、これがハイブリッドシステムの働かせ方に従ったものだということに気付く。

 システム出力は、公的な表記基準がなく、メーカーの基準値(というよりHVシステムの働かせ方を決めているのは個々のメーカー)となるのは当然といえば当然。そもそも、市販ハイブリッド車のほとんどは、環境性能(=燃費性能)を前提としたモデルであり、熱効率に優れた内燃機関を使いながら、内燃機関の不得意とする領域をモーター動力でアシストしようという考え方で作られている。そのモーター動力の電源は、エンジンで発電した電力、回生によって蓄えられた電力を振り向けているから、環境性能(燃費性能)が飛躍的に高いレベルとなるのも当然である。

 ちなみに、このシステム出力は、走行動力にエンジン出力とモーター出力のふたつを利用するシリーズ・パラレル方式のみで見られる表記で、たとえば内燃機関はモーター電力の発電用のみとなるシリーズ方式やエンジン動力を主体とするパラレル方式では、目にすることのない表記である。

ハイブリッド車は内燃機関車と同じ馬力でも特性がまるで違う

 さて、このシリーズ・パラレル方式を1歩踏み込んで考えると、内燃機関の特性に応じてモーター動力の可動域を設定することができ、また内燃機関の特性によってモーター動力のアシスト度合いも変えられるため(というより変えるのは当然)、両動力の最適な特性を前提にシステムの作動がプログラムされている。

 だから、同じメーカーのシリース・パラレル方式でも、エンジンが異なったり、車両性格が異なったり、車両重量が異なったりするような場合には、当然ながらシステム出力は異なってくるし、エンジンに対するモーターの効かせ方も違ってくる。

 ただし、たとえばシステム出力100馬力のHVモデルガソリンエンジン100馬力のモデルとでは、最大出力は同じでも出力特性はまったく異なってくる。ガソリンエンジンの100馬力はピーク値だが、エンジンとモーターの合成出力で100馬力を得ているHV車の場合は、幅広い回転域(エンジン回転域)で100馬力を発生させることも可能だからである。

 この特性、冷静になって考えてみると、環境性能(燃費性能)を重視したハイブリッド車ながら、同じ出力値をもつ内燃機関搭載車より格段に優れた動力性能を備えることができる……ということになる。

 モーター動力恐るべしなのだが、たとえば、その端的な例は、トヨタがサーキットレースで見せたル・マン用ハイブリッドプロトのTS050といえるだうか。エンジン出力520馬力、前後ふたつのモーター出力が480馬力、合成出力、すなわちシステム出力1000馬力の仕様で、規定によりハイブリッドシステムの稼働領域が制限されていたにもかかわらず、内燃機関搭載車ではあり得ない超絶した加速性能を示していた。

 それまで、ハイブリッド車は環境性能、燃費性能を良化させるための車両という先入観をもっていた市場に、内燃機関とモーター動力の組み合わせは、とんでもない高性能を実現することになる……ということを身を以て証明した典型例である。

 市販車のシステム出力は、内燃機関単体の出力特性とは大きく異なり、同じ数値、あるいはそれ以下でも動力性能、環境性能(燃費性能)ではるかに優れる、と受け取って間違いない。そしてその表記が、メーカーの発表値に頼らざるえないことは、説明してきたとおりである。