爆笑問題の太田光と岩井俊二監督が熱いファントークを展開!「高畑勲展」が開幕!
高畑勲は、1960年代から半世紀にわたって日本アニメーション界の第一線で活躍してきたアニメーション映画監督。1959年に東映動画(現・東映アニメーション)に入社後、『太陽の王子 ホルスの大冒険』で劇場アニメ監督としてデビュー。その後も演出・監督として『パンダコパンダ』をはじめ『アルプスの少女ハイジ』『赤毛のアン』といったTVアニメーションで手腕を発揮。スタジオジブリ設立に参加した後は『じゃりン子チエ』『火垂るの墓』『平成狸合戦ぽんぽこ』『ホーホケキョ となりの山田くん』『かぐや姫の物語』といった数々の作品を監督として制作。2018年4月に惜しくも82歳でこの世を去った。
この展覧会は、今年2025年が高畑勲の生誕90年、そして高畑監督がその人生に大きな影響を受けた太平洋戦争の終戦から80年が経過する節目の年ということを受けて今回の開催が決定。注目の作品紹介エリアでは『火垂るの墓』『平成狸合戦ぽんぽこ』『アルプスの少女ハイジ』のセル画・背景画を初公開。さらに新たに発見された『新世紀エヴァンゲリオン』で名高い監督・プロデューサの庵野秀明が『火垂るの墓』での原画スタッフ当時に描いた、重巡洋艦”摩耶”の幻のレイアウトとハーモニーセル(絵画的なタッチで描きこまれたセル)も本展覧会で初めて展示されることになる。
他にもコラボカフェ「喫茶 高畑勲展」や、展覧会のオリジナル商品などが購入できるショップも開店予定。アニメーション制作とともにあった高畑監督の生涯を、多くの貴重な作品資料やアイテムとともに、さまざまな角度から楽しめるスペシャルな展覧会となっている。
オープニングセレモニーには、高畑監督夫人・高畑かよこ氏と長男・高畑耕介氏が来賓として登壇。開催を記念した挨拶で耕介氏は「アニメーターではない監督の足跡をたどる展示企画は珍しいようです。父の作品は見た目も変化に富んで個性的です。甘さは控えめ、爽快感が得られるとは限らないですが、味わい深く今も色褪せない輝きを持っていると思います」と高畑作品についてコメント。「もともとこの企画は父の生前に始まりました。作品が作られた時代背景、思想、影響を受けた芸術などを取り上げる構想でしたが、父が死去してしまったのでそれは叶わず、時系列で見る回顧展となりました。その後国内外を巡回し、今回東京麻布台、そしてパリでも開催予定となったのは、私たち家族にとっても驚きであり、とても嬉しいことでもありました」と今回の展覧会開催を喜んだ。
耕介氏は高畑作品において重要なのは「映像表現に加えて主人公から距離を取ってありのままの現実を見せ、観ている人にそれを能動的に捉えるように促すという描き方」だと指摘。「主人公たちが奮闘・活躍して気持ちよくなれるカタルシスではなく、逆にしばしば感じる居心地の悪さは意図的なもの。こうした仕掛けが物語世界とキャラクターに本物としての現実感を与え、観る人に自身に何かを感じとってもらえる。それが作品にも共通する狙いだと思います」と高畑監督が作品に込めたであろう想いを語るとともに、来場者へのメッセージとして「展示されている制作チームの苦闘の跡に懐かしく面白い何かを見つけていただき、改めてテレビシリーズや映画を観て楽しんでいただければと思っております」と呼びかけた。
続いてスペシャルゲストとしてお笑い芸人の爆笑問題・太田光が登場。高畑監督が字幕翻訳を手掛けたフランス発の長編アニメ映画『王と鳥』の日本初公開時に、二人で対談やトークショーを行ったのが高畑監督との初の出会いだったという。そのときの監督の印象については「僕がこんな感じだったんで監督は引いてました」と語り、会場を笑わせた。他にも監督が作業中のスタジオを訪れた際の思い出話を披露。そこでスタッフが「作業が緻密で妥協を許さず、提出したもの何度も突っ返される」「鬼のようだ」と語っていたのを聞いたそうで、「会話の中ではすごく穏やかな人だけど、いざ仕事に向かうと作品に対して、そして自分に対して厳しい人なんだ」とアニメ制作へのこだわりの強さに驚いたようで、「すごい人なんだ」と認識を新たにしたとのことだった。
NHKのEテレで絶賛放送中のアニメ『アン・シャーリー』にJ.A.ハリソン役で出演中という太田は、高畑監督制作のアニメ『赤毛のアン』もかつて観て「毎回号泣した思い出がある」そうだ。「理屈の上でセリフやストーリーをメインに考えちゃうんですけど、高畑監督はアンという少女の仕草や一挙一投足で感情をここまでリアルにより増幅させながら、言葉で伝えてくれる以上に表現してくれる。そんな高畑さんの偉大さは、今年還暦の60歳になりますけど、今になってわかるようになりました」と、当時は気付けなかった高畑監督の映像表現の絶妙さに改めて感嘆の声を上げていた。
ここで本展覧会のスペシャルサポーターで、映画『スワロウテイル』『花とアリス』などで有名な映画監督の岩井俊二も登場。なんと高畑監督とは遠縁の親戚関係にあるらしく、大学時代に自主映画を作っていた岩井は、その伝手を頼って映像仕事のOB訪問感覚で会いに行ったことがあるそうだ。しかし面会した高畑監督から「映像の方に進んでプロになって、自分で作りたい作品を作っていけるか聞きたい? そんなことは君、僕が聞きたいよ!」と約二時間くらいにわたって説教されたそうで、「映画作りの大変さ、厳しさについて点滴を打たれるように教えられた」と苦笑い。しかし、岩井にとってそれが唯一の映像の先輩がかけてくれた言葉だったそうで、「座右の銘として大事にしながらここまで来たと思っています」と感謝の言葉を語ってくれた。
そんな岩井だが、自身の作品にも高畑監督の画作りに影響を受けているところも。それが一番顕著だったのは自身初の劇場用長編映画『Love Letter』のラストシーンの絵コンテを書いたときだたそうで、イメージしたのは映画『おもひでぽろぽろ』のエンディングだったとのマル秘エピソードを披露。他にもロトスコープで制作されたアニメ『花とアリス殺人事件』で高畑監督にアドバイスや感想をもらったといった師弟を思わせる二人の関係性を表したエピソードなども明かされた。
さらにトークでは太田と岩井の好きな作品やシーンと語り合う一幕も。太田は『ホーホケキョ となりの山田くん』が一番のお気に入りだそうで、原作者である漫画家・いしいひさいちの大ファンという太田は、毒っ気がある作風の漫画をどうジブリが映画化するのか気になって公開当時に映画館に観にいったとのこと。まさに大絶賛といった雰囲気で「水墨画というか、背景をきっちり描き込まず、すごく自然で抜けのいい絵の色合いがすごい居心地がいいんです。それでいてすごくヒューマンドラマで、特にミヤコ蝶々さん(キクチババ役)の結婚式のスピーチが素晴らしいんです。キャラの動き、表情がすごいハマってて、こんなことができるのかという感動がありました」とその素晴らしさを熱弁してくれた。岩井は高畑監督の最初期の作品となる映画『太陽の王子 ホルスの大冒険』をセレクト。高校時代に同好会の仲間との上映会で観たときに「なんだこの完成度は!」というすごい衝撃を受けたそうで、それから折々のタイミングで何度も見直しているとのことだった。
太平洋戦争から80年という節目ということで、展覧会の目玉となっている『火垂るの墓』についても言及。高畑監督が当時「この映画は戦争反対映画ではない」とコメントしていたことについて、太田は「戦争を体験していた方なので、単に”戦争反対”という雑な言葉の中にこの作品を閉じ込めてほしくないっていうことがあったのでは。そうした高畑さんの想いは、今の時代の我々にも問い直されている気がして、ずっしりと重い言葉に感じています」と自身の解釈を説明。岩井も「あんな観てて苦しい映画はない。二人の兄妹を描くことが戦争を描いたことになるんだろうかという自問自答や、大きな主語で語られる違和感を感じたりしてたのかも」と高畑監督がこの作品で描こうとした真意について思いを馳せていた。
最後に「二人にとって高畑勲とは?」という問いに、太田は「高畑勲という名前を知る前から、子供時代の体験として僕の中に入っていた人。そんなイメージです」、岩井は「僕らの成長に合わせるように作品を作ってくれた方。我々世代にとっては歩みを共にしてきた素晴らしい映像作家だと思います」と語り、オープニングセレモニーは終了となった。
(C)野坂昭如/新潮社,1988
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