19歳のゴールを演出した久保。(C)Getty Images

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 ラ・リーガ第28節のラージョ・バジェカーノ対レアル・ソシエダ戦で、タケ・クボ(久保建英)のプレーを見ながら、私は心配になっていた。

 チームは3日前にマンチェスター・ユナイテッドに敗れ、ヨーロッパリーグ(EL)敗退が決定し、自身も無念の途中交代となっていた。その悪い流れを引きずるかのように、ラージョ戦の前半、タケは、チャンスを一度も作り出すことができずにいた。

 後半が始まっても、しばらくその状態は続いた。連戦による疲労の蓄積はもちろんあっただろうが、サイドに張りっぱなしで、ボールを要求しない姿は明らかにいつもの彼ではなかった。

 ラージョ戦は、極めて重要な一戦だった。ソシエダにとって欧州カップ戦の出場権を獲得することは絶対的なノルマだ。6年連続というクラブ史上初の栄誉に浴するとともに、タケを含めた主力を引き留める上でも、重要な材料になるからだ。

 試合は、20分、左CKからマルティン・スビメンディが豪快なボレーシュートを叩き込み幸先よく先制するなど、ソシエダのペースで進んだため、なおさらタケの沈黙が目に付いた。

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 しかしその心配は全くの杞憂に終わった。58分にスビメンディがスリップした間にオスカル・トレホに同点ゴールを決められ、暗雲が漂う展開になったことも手伝ったかもしれない。

 69分、突然スイッチが入ったかのように、ベニャト・トゥリエンテスがパスを送ると、右に開いて待っていたタケはトラップするや否や、対峙していたチャバリアと入れ替わり縦にボールを出すと、ペナルティエリア内に侵入。そのままさらに突進し、右足を振り抜いたが、惜しくも枠の上に外れた。

 直後にパスコースが2つあったと指摘する意見が多数寄せられたが、今シーズンのソシエダに足りないものがあるとすればそれは得点であり、シュートへの積極性だ。そんななか、攻撃の中心選手の1人が相手ゴールに近い位置でチャンスを得れば、迷わずシュートを打つべきであり、それをスタンドプレーと批判するなど論外だ。
 
 直後にソシエダは逆転を許したが、79分だった。4分前に投入されたばかりのマリエスクレナがボールを持ち出し右に展開すると、タケは今度は深い位置まで進入すると、右足でクロスを選択。相手GKアウグスト・バタージャのファンブルを誘い、そのこぼれたボールをマリエスクレナが拾って落ち着いて流し込んだ。タケは殊勲者のもとに駆け寄って一緒に祝った。

 重要な同点ゴールだったことはもちろんあるが、それをカンテラ出身の若手が決めたのだから喜びもひとしおだったのがその表情からも見て取れた。すっかりソシエダに溶け込んでいるタケは、育成に力を入れるクラブにとって19歳の青年が、このような緊迫した場面でゴールを決める重要性を理解している。
 
 87分、再び二人のコンビプレーが相手ゴールを強襲。タケの折りしにマリエスクレナが滑り込みながら左足のダイレクトボレーで叩いたが、バタージャの好守に阻まれた。

 終わってみれば、ハイパフォーマンスを披露したのは、20分間にとどまったが、その突然の目覚めが分岐点となって、ソシエダは難敵相手にアウェーで引き分けに持ち込んだ。

 タケのスイッチが入れば、ソシエダは勢いづく。それは1シーズンに置き換えても同様だ。暗雲が漂い始めてもタケが光を灯せば、希望も見えてくる。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸