この記事をまとめると

ガソリンスタンドなどでよく見かけるタンクローリー

■液体・気体・固体のすべてを運ぶことができる

■タンクローリーの積載物について詳しく解説

積載容量は車両によって異なる

 ガソリンスタンドなどでよく見かけるタンクローリー。身近な存在ではあるものの、多くの車両が「危」マーク、「毒」マーク、「高圧ガス」マークをつけており、興味はあっても何となく近寄り難い存在だ。ひと口にタンクローリーといっても、石油類だけを運んでいるわけではない。基本的には、液体・気体・固体いずれも運ぶことができる。

 車両は道路運送車両法で「主たる使用目的が特種である自動車であって、定められた構造や装置などの要件を満たした車両」と規定した、特種用途自動車に分類されている。外見的に大きな特徴といえるのは、荷台部分が楕円柱のタンク形状になっていることだろう。トラックメーカーが製造するパワートレインとシャシーの上に、架装メーカーが製造するタンクを載せるといった感じになっており、大型のものにはトレーラータイプもある。

 積載(タンク)容量はさまざまで、一般には1万2000〜2万リットルが大型車、3000〜8000リットルが中型車(車両は3トン〜4トン車)、2000〜4000リットルが小型車(車両は2トン〜3トン車)といったところだ。

 積載容量を考えるのであれば車(バンタイプ)が効率的だが、液体は揺れが生じると安定性に影響を与えるので、重心が低くなる構造にしなければならない。また、積載・荷降ろし施設などの高さ制限などもあるため、これらを総合的に考えた結果、楕円柱を基本に積載物に合わせた形状にしているようだ。ただ、高圧気体を運搬する車両は内圧の問題から、真円柱のタンクを使用する。

 石油製品などの「危険物」を運ぶものは、消防法の規制を受けて「移動タンク貯蔵所」となる。これに伴い、積載容量やタンクの構造などについて制限を受けることになるのだ。また、軽油・ガソリンなど性質の異なるものを同時に運ぶため、タンク内を小部屋に仕切る構造になっており、それぞれ何をどれだけ運んでいるかということを表示しなければならない。

高圧ガスの運搬には特別な資格が必要

 さらに、運搬の際には「危」マークの表示や、「危険物取扱免状」を携帯した「危険物取扱者」が乗務することも義務付けられているなど、この法律は非常に細かく厳しい規定が多い。しかし、これらは事故などを未然に防ぐことや、万一の際にも大きな災害にならないようにするために必要な処置なのである。

 過酸化水素水など「毒物」を運搬する場合は「毒物及び劇物取締法」の規定に従う必要がある。タンクは耐薬品性を考慮した材質を使用するが、積載物がとくに腐食性の強い酸性・アルカリ性水溶液の場合は、別途に樹脂被覆した耐食性・非粘着性を向上させたものを使用する。これら毒劇物にあたる運搬物を扱う場合は、「毒物劇物取扱責任者」の資格が必要になる。運搬する車両には、「毒」の表示をしなければならない。

 運搬物が気体の場合は、ほとんどが圧力をかけた「高圧ガス」の状態(液化している場合もある)で運ばれる。このとき適用されるのは「高圧ガス保安法」だ。輸送対象ガスが同法に適合したガスボンベに注入されている場合は、平ボディのトラックやライトバンなどで輸送されるが、タンクローリーの場合は車両自体がガスボンベの役割を担うため、その構造・材質などには厳しい規定がある。

 また、万一タンク内の圧力が異常に高まった場合は、安全弁により圧力を下げて爆発を防ぐ工夫がされているのだ。運搬の際には、「高圧ガス移動監視者講習修了証」を携帯した「高圧ガス移動監視者」を同乗させて、「高圧ガス」の表示が必要となっている。

 水・飲料・液糖・セメントなど、危険物・毒劇物・高圧ガスに該当しないものを積載する車両は、道路運送車両法の規定に合わせた構造であれば問題はない。高速道路などでピカピカのステンレスタンクを載せたタンクローリーを見かけるが、これは飲料系の液体を運んでいるものが多い。

 さまざまな規制のなかで特殊な積載物を運んでいる車両だが、法律によって十分に安全性が確保されているので、決して警戒する必要はないのである。