吉村文雄・東映代表取締役社長

写真拡大

コロナ禍が始まってから3年半、大きな打撃を受けた映画興行。生活様式が変わり、映像配信サービスが一般に普及したことで、映画の楽しみ方そのものが大きく変わってきた。現在映画業界2位の東映は、この大きな変化に対し、新たな価値提供で客足を取り戻している。4月に就任した東映新社長・吉村文雄氏は「家で映画を楽しめる時代にわざわざ映画館に足を運ぶということ。それに見合うだけの価値提供をしていく」と力をこめる。実写およびアニメ作品の海外展開を見据え、国によるバックアップや労働環境の改善・改革を推し進めていく必要があると強く訴える。


コロナ禍における大きな変化

 ─ コロナ禍が始まってから3年半が経ちましたが、当初は映画業界にも大きな影響がありましたね。

 吉村 はい。コロナ期間中に国内の配信事業者やネットフリックス、アマゾンプライムビデオなどの外資系グローバルプラットフォームのユーザーが飛躍的に伸びました。これにより映画の楽しみ方が大きく変わりました。家の中でお金を払ってドラマや映画を観る習慣が一般的に広まったというのが、コロナ禍に起きた変化です。

 そのような背景から、映画館に足を運んでいただくことも減り、映画興行自体かなり落ち込みました。映画業界の業績を戻すことはかなり難しいのではないかとも囁かれていました。

 しかし、コロナ禍が明けて、興行は非常に良い状況になっています。

 コロナ前の2019年が国内興収が史上最高だった年で、2600億円。今年はおそらく、この調子だと2300億円ぐらいと予想され、かなり復調しているという気はします。

 ─ ネット配信サービスの普及によって、ビジネス形態もかなり変わってしまいましたね。

 吉村 映画館に行くということは、お金を払って時間を割いて、わざわざ足を運んで観るということなので、それに見合う作品かどうかというのは、お客さんにとって一つの判断基準になりますね。

 例えばIMAX(高精細度な映画設備)のような大きなスクリーンで、いい音響、いい映像で観たくなる作品がたくさん出てきています。

『トップガン マーヴェリック』が良い例です。いずれは配信サービスで観られるかもしれないが、話題性のあるうちにお金を払ってでも観たいという人が劇場へ詰め掛けると、ああいう100億円を超すヒットになるのでしょう。

 逆に、映画館で観る程でもないという判断をされてしまうと、映画興行の成績は厳しくなります。

 ─ やはりコンテンツの中身が大事だと。

 吉村 そうですね。あとはイベント性の高い作品も需要があります。ちょうどいま、弊社で配給しているアニメ『劇場版アイドリッシュセブンLIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』という作品があります。アニメのキャラクターによるライブコンサートという設定ですが、映画館がライブイベント会場と化す作品です。

 これに入場者プレゼントを週替わりで付けたり、実際に歌を歌っている声優さんをイベントに招いてライブビューイングを行ったりして、イベント性を高めて収益を上げています。

 だいぶ前からこのライブビューイングは定着してきていて、舞台やイベントを映画館で生中継する興行形態も定常化しています。

 非日常を体験するためにわざわざ映画館に足を運ぶということ。それに見合うだけの価値が提供できるかどうかが肝要であると思っています。


日本のアニメが人気なワケ

 ─ 日本のアニメが受け入れられている根本にあるものは何でしょうか。