東映社長・吉村文雄「世界に向けて『ものがたり』を発信。変化に負けず新たな価値創造をしていきたい」
吉村 日本のアニメは、漫画文化がベースにあり、作品に多様性があります。あらゆるジャンルの作品が揃っているのです。海外のアニメはどうしてもファンタジーに偏りがちです。また、日本の漫画文化は裾野が広く、作家の層が厚い。アニメ化されるような人気作品は熾烈な競争を勝ち抜いてきただけあってクオリティが高いんです。
さらに、実写映画は海外で展開するにあたって、外見のギャップに課題があると昔からいわれてきました。欧米の人はアジア人だけが出演している作品をなかなか観ない。
一方でアニメ作品はそういったハードルを割とクリアしやすくて、ある種の無国籍感が受け入れ易さの要因かと思います。
─ 表現方法が世界の垣根を超えると。他国のアニメのレベルはどうなのでしょうか。
吉村 かなり追い上げてきています。特に中国に関しては目を見張るものがあります。絵を描くアニメーターの技術は格段に進歩していますし、いま中国アニメで面白い作品がたくさん出てきています。製作費の面でいうと、ライバルどころか、向こうのほうが資金力があります。日本の優秀なスタッフを中国の会社が引き抜くというのも、随分前からある話です。
─ 日本の良さをまた掘り出していく必要がありますね。
吉村 そうですね。とはいっても、実写もアニメもそうですが、日本では国が産業として全面的にバックアップをしているという状況にはありません。
急成長している韓国は、国を挙げてコンテンツ産業に投資をし、人材育成にもお金をかけています。その産業が発展するように労働環境の改善にも国として積極的に関わっているのです。
一方日本国内では、アニメは世界に打って出られる日本産業だ、ジャパニメーションだ、という言い方をよくされますが、実際には国を挙げて何か政策を掲げたり、予算をつけたりということはまだ少ないのが現状です。
特にアニメーション業界では、現場で働く方々の労働環境が悪く、いくら働いても収入が増えないという問題があります。実写作品も含め、業界全体として待遇改善をしていかないと、持続性や将来性は保てないと思っています。先のことも考えるとこれは急務ですので、当社では取り組みを進めています。
─ 今後の展望は?
吉村 現在、東映と東映アニメーションは、それぞれ実写とアニメという分野で独立しながら補完し合っています。この関係は今後も継続しながら、東映グループ全体で「ものがたり」を作り続けていきたい。
制作現場をもう一回きちんと整備しようという故・手塚治前社長の方針を受け継いで、東京と京都の撮影所にも投資をし、撮影所のリニューアルを進めていきます。
また、今秋には、現在準備中のLEDウォールを使用したバーチャルプロダクション(VP)を稼働させる予定です。
VPを活用することでロケ地への移動、天候などの物理的な制限を気にすることなく撮影ができるため、労働時間の削減が可能となります。今後、海外も含めて作品展開を拡大させていきますので、そこに向けて人材の育成、働き方の改革を進めることが私の役割だと思っています。
イベント、デジタルを経て代表取締役に
─ 吉村さんの東映入社は1988年ですね。最初に配属された部署はどんな部署でしたか。
吉村 関西の営業支社です。イベントの部署に配属されました。特撮モノのキャラクターショーなどを担当している部署です。着ぐるみのショーを売るというビジネスは当時東映がほぼ独占していました。
