来季の鳥栖入りが決まっている法政大の渡邉。「周りから信頼される選手になりたい」と語る。写真:安藤隆人

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 法政大の中盤に欠かせない存在となっているMF渡邉綾平。前橋育英高時代から攻守においてハードワークし、かつテンポの良いパス出しで攻守の要になっていた彼は、昨年から法政大でも不動の地位を築くと、最高学年になった今年6月に、来季のサガン鳥栖入りが発表された。

「一度、鳥栖に練習参加した時に多くのものを吸収させてもらったし、そのあと、試合を随時チェックするようになったのですが、やっているサッカーにブレがない。自分が成長できる環境だと思ったから決めました」

 渡邉が鳥栖の練習に参加したのは、昨年6月のこと。そこで学んだのは攻守におけるハードワークの質だった。

「練習生である僕に多くの選手が『もっとこうしたほうがいいよ』『このほうが上手く行くよ』と声をかけてくれたので、鳥栖のやり方だけではなく、自分の選択肢の幅を広げてもらいました」

 なかでも2人の選手の言葉に大きな影響を受けた。1人はDF飯野七聖。ちょうどヴィッセル神戸への移籍が決まり、鳥栖での最後の練習になった日に話しかけられたという。

「鳥栖を選ぶのは間違いないと思うよ。サッカーが大好きな選手が多いし、個人戦術とチーム戦術をしっかりと理解している選手が多いクラブだから、プロキャリアの中で鳥栖に行けるのは大きいと思うよ」
 
 この言葉に心が揺さぶられた。もともと渡邉にとって飯野は参考とすべき選手でもあった。ポジションこそ違えども、運動量が豊富で球際で戦える選手である一方、動きながら頭をフル回転させて、そのシチュエーションに必要なプレーを選択する。

「他のクラブが獲得に動くのも当然の選手だと思うからこそ、言葉が本当に響きました」と、渡邉が鳥栖に行きたいと思う大きな要因となった。

 もう1人はGK朴一圭。朴と言えば、J1の中でもパス成功率が高いGKとして知られているが、彼からどこに顔を出してほしいか、どのような身体の向きをすればいいのかを教わり、何より「常にパスを受けた先のことを考えろ。選択肢はいくつも持っておいてほしい」という言葉は響いた。

 全体を見渡せて、かつビルドアップの出発点になるJ1屈指の足もとの技術の高さを誇る守護神からの言葉は、頭では分かっていたことであっても新鮮で、重かった。

「常に選択肢を2つ以上、持っておく。僕は昔も今もサイズ的に大きくないし、爆発的なスピードを持っているわけではないので、頭の回転の速さで勝負してきました。でも、鳥栖ではそれを凄まじい強度とハードワークの連続の中でやらないといけない。

 その選択肢もパスを繋ぐ選択肢ではなく、ボールを追い込んだり、コースを切ったり、自分で奪うのか、後ろの味方に奪わせるのかなど、守備面での選択肢も含まれている。攻守において頭をフル回転させないと試合に出られないからこそ、自分がこれから何をすべきか明確になった時間でした」

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 法政大に帰ると、自分の思考のウェイトが変わった。攻守のリズムを作るだけではなく、自分でそのリズムをあえて壊して決定的な仕事をしたり、あえて相手のリズムに乗っておいて、そこからブレイクして相手の歪を狙ったりするなど、駆け引きの質が格段に上がった。

 なかでも筆者が感じるのは、綺麗にではなく、ただひたすらに、がむしゃらにプレーするという泥臭さも備わってきたことにある。頭を使いながら、時には情熱的にハードワークする。

 もともと技術レベルの高い選手がそれをすることで、中盤での存在感は劇的に増す。法政大の井上平監督が「欠かせない存在」として信頼し、起用し続けるのも十分にうなずける。

 練習参加後も鳥栖の試合を見れば、すぐに参加した時のアドバイスの数々が頭に浮かんできて、何度も自分が何をすべきかを再確認できたことも大きかった。常に情報をアップデートさせながら、自分のプレーもアップデートさせていく。

「高校時代から上手い選手を分析するのが好きでした。前橋育英と法政大で2学年上の田部井涼(現・ファジアーノ岡山)さんは常に戦況を考えてプレーしていますし、後輩の意見も積極的に聞いて、誰よりも成長しようとしている。今も心身ともにお手本としています。

 同年代にも山内翔(筑波大/ヴィッセル神戸内定)、山内日向汰(桐蔭横浜大/川崎フロンターレ内定)という素晴らしいボランチがいます。日向汰はゴール前で技術を発揮する力が高くて点が取れるボランチ、翔は全体的にゲームオーガナイズができるボランチと考えているので、僕はどちらにも寄らずに、攻守において2人を超えられるようにしたいと思っています」
 
 成長していくなかで、ライバル分析と自己分析、そしてその時々にもらった言葉を自分の中で積み重ねてきたからこそ、今の自分のスタイルがある。

「ただ攻撃だけでは信頼を得られないし、その逆も然り。守備も攻撃もどちらも圧倒して、なおかつ、どちらも遠慮せずに物事をはっきり言ったり、逆に言われた時にそれを受け入れられる姿勢を持ったり、周りから信頼される選手になりたいと思います。法政大でも、鳥栖でも」

 ピッチ内では頭をフル回転させながら、獰猛さを持ってボールを追い、捌いて、前に出る。ピッチ外では他者と自己の分析を積み重ねる。

 やるべきことがはっきりした渡邉は、「法政大でタイトルを取って、かつ鳥栖で試合に出られるように、残りの学生生活の全てを捧げていきたい」と強い覚悟を持って、大学ラストイヤーを駆け抜ける。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)