300万円請求のはずが…「W不倫された妻」が大損した唖然事情

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争族、離婚トラブル、労働問題…弁護士事務所には今日も様々な相談が舞い込みます。そこで本連載では、弁護士法人アズバーズ代表の櫻井俊宏氏が、実際に寄せられたトラブル事例を紹介し、具体的な対策を解説します。 ※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

夫の不倫が判明。相手の女に連絡してみたら…

■不倫をされて離婚をする場合

「やっぱり!」

夫の様子がおかしいので携帯電話を調べたところ、不倫しているのが明らかにわかるLINEが出てきました。

「これは何なの!?」

「すまない、出来心なんだ。許してくれ」

夫が素直に認めてきたので、私は今回だけは許しました。しかし、相手の女Aに対しては腹の虫がおさまらず、賠償請求をすることにしたのです。

私の夫BからAの携帯電話の番号を聞いてAに連絡しました。

「…はい。Aです」

「あ、もしもし、Aさんですか。突然連絡ごめんなさい。Bの嫁のXです」

と自己紹介した途端、いきなり電話を切られました。以降、いくらかけてもつながりません。ついには着信拒否をされたようで、まったく連絡できなくなったのです。

「許せない! 手紙を送りつけるから」と夫にいうと「Aは結婚してるんだ。手紙を送るなんてやめてやれよ」と伝えられました。

「え…? なに、W不倫していたわけ…?」とそこからまた大喧嘩。

もう絶対に許せないと思ったので、私は「300万円支払ってください。支払いがない場合は弁護士に頼みます」という内容の手紙をAの家に送りました。

その後、まさかの展開が。Aの夫Cは、私の夫Bに対していきなり不倫の損害賠償請求の裁判を起こしてきたのです。詳しく見れば、私からの手紙でAの不倫を知ったとのこと。精神的に苦しめられ、離婚したことを訴状に記載して300万円を請求してきました。

(※写真はイメージです/PIXTA)

夫Bと私は裁判に対抗するために弁護士に相談しに行き、今後どうなるか聞いてみました。

「相手の夫婦は離婚しているので、相手の夫Cに離婚という精神的損害を与えたことで200万円ぐらいの賠償が認められることになります」

「でも、私も不倫された側です。私が裁判をしたらいくらもらえるのですか」

「いくらもらえるの?」の返事に妻が驚いたワケは…

思わぬ返事が返ってきました。

「お2人は離婚していないので、精神的損害は少ない、と捉えられるでしょう。相手のAからもらえるのは100万円以下になると思います」

「え〜!?」

同じ不倫なのに、金額が変わってくるなんて、おかしい…。


1 ダブル不倫とは

不倫をしている両当事者が結婚している場合に行われる不倫は、通称「ダブル不倫」といわれます。

ダブル不倫においてその後を左右する重要な要素はいくつかあります。たとえば夫Bに不倫をされても、妻Xが結婚生活を続けていくつもりかどうかです。

離婚を決めた場合はシンプルです。妻Xとしては、相手の女Aと交渉また訴訟をし賠償金を得て、夫Bとも離婚。できる限りの今後の生活費をもらえばよいのです。

しかし、妻Xが結婚生活を続けていくつもりだとどうでしょうか。夫Bが不倫したことについて不倫相手であるAに賠償請求していく際、それが相手の夫Cにバレてしまうと、本事例のように、相手の夫Cから自分の夫Bに対しても賠償を請求されてしまいます。

このような事態に陥ると、今後も家計を共にする夫婦としては、不倫相手である相手の妻Aから100万円をもらうことができたとしても、相手の夫Cが、自分の夫Bから100万円をもらった場合、結局夫婦としては何の利益も得られないことになります。

それどころか本事例のように、相手の妻Aと相手の夫Cが別居したり離婚したりした場合は、夫Bのほうが相手の夫Cに対して精神的損害をより多く与えたとして、100万円よりもさらに慰謝料が高くなり、かえって夫婦としてマイナスになることも考えられます。

なので、このような場合は、相互の家庭ともに賠償をせず「痛み分け」で交渉を終わらせることも多いです(通称「ゼロ和解」といいます)。

2 ダブル不倫をこっそり終わらせるには

本事例のように相手の夫Cが不倫の事実をまだ知らず、妻Xが、相手の妻Aに責任を取らさなくてはどうしても納得がいかない場合。Cにバレないように事を進めればよいわけです。

今回のケース:手紙を送っていなければ…

このようなケースを弁護士に頼めば、相手の妻Aに弁護士名を入れてメールで連絡します。証拠があることを伝え、賠償を請求し、メールを無視するようであれば裁判を起こす旨も記載しておけば、少なくとも無視することはないでしょう。

あとは相手の夫Cに発覚しないように、妻Aとだけ示談書を交わして賠償してもらえばよいわけです。

この場合、妻Aは絶対に不倫の事実をバレたくないので、あっさりとある程度の賠償を認める可能性が高いです。バレないようにと、相場よりも高い金額の賠償を認めることもあります。

3 まとめ

つまり今回の事例では、電話して相手の妻Aにつながらなくなった時点で、相手の家に手紙を送ったことが問題だったのです。これにより、相手の夫Cが不倫の事実を知ったので、話がややこしいことになってしまいました。この時点で弁護士に頼んでいれば違う方向に進んだ可能性はあったでしょう。

不倫の事件も、ケースによってベターな請求の仕方があるので、つど弁護士に相談することをおススメします。

櫻井 俊宏

弁護士法人アズバーズ代表

中央大学法実務カウンセル