楽天 MNOでいきなりの出遅れ! 成功に自信の秘密は自社の経済圏戦略にあり? 2019年度第3四半期決算発表会から考察する

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●好調に推移し続ける楽天業績
楽天は都内にて2019年度第3四半期決算説明会を開催しました。

同社は物流とモバイルの2つを中核事業として位置付けており、
・連結売上高:3191億円(前年同期比+14.7%)
・グローバル流通総額:4.8兆円(前年同期比+27.1%)
・国内EC総流通額・1兆円(前年同期比18.4%)
・楽天カードショッピング取扱高:2.4兆円(前年同期比+28.9%)
このように、物流面では非常に堅調な推移を見せています。

楽天業績の好調さの背景には、国内EC事業のみならず、海外事業における業績の好転が大きく関わっています。
楽天が出資している米ライドシェア企業のLyftで株価下落による減損損失1030億円を計上したものの、
・Rakuten kobo
・Rakuten Viber
・Rakuten VIKI
これらの事業で健全化が図られ、2019年度第3四半期では初の黒字化となるなど、事業改革が堅調であることを示しています。


国内事業の好調さに隠れてしまいがちだが、不採算部門の経営改善の効果は大きい


●暗雲垂れ込めるMNO事業
モバイル事業は、物流事業で好調な業績が並ぶ一方で、不安と憶測の飛び交う様相となっています。

楽天は10月に、楽天モバイルとして移動体通信事業者(MNO)サービスへ参入しました。
しかし、サービス開始時のエリア展開や基地局の設備が間に合わず、サービスエリア地域(東京23区、大阪市、名古屋市、神戸市)に住むユーザー5000人を対象とした限定サービスとしてスタートしています。

これは事実上の無料プレサービスであり、正式サービスとは言い難いスタートです。
8月には総務省より基地局整備の遅れに対する行政指導が行われるなど、当初の計画からは、かなり遅れている状況です。


無料サポータープログラムの期間は2020年3月までと非常に長い。無条件でのサービス開始には時間がかかりそうだ

楽天は基地局の整備状況について、
・2019年末までに3,000局を開設予定
・契約締結予定は4,500局
・口頭許諾は6,500局
・2020年3月までに3,432局を開設予定
このように説明し、基地局整備は順調としています。

しかし、NTTドコモやKDDI(au)、ソフトバンクなどの他MNOが、
LTE網だけでも10万〜20万局にのぼる基地局を開設している現状を鑑みても、
2020年3月までに想定されているエリア展開や整備状況は最低限であることが分かります。

MNOとしての楽天モバイルの全国エリアについては、au回線によるローミング対応となるため、ユーザーがエリアの狭さを感じることはあまりないと考えられます。
それでも、MNOとしてのスタートダッシュに失敗してしまった感は拭えません。


業界関係者からは「桁が1つ足りない」と苦笑される場面も


●それでもMNO事業は成功する。鍵となるのは「巨大経済圏」
不安要素が強いMNO事業にもかかわらず、楽天が強気の姿勢を崩さない背景には、同社が誇る巨大経済圏があります。

楽天が運営するオンラインサービスは70以上あり、ID(アカウント)数は1億以上、その国内EC総流通額は前述の通り1兆円にのぼります。これらのサービスを繋ぎ、巨大な経済圏(エコシステム)を構築していることが、楽天の最大の強みです。

また楽天は、これまでも仮想移動体通信事業者(MVNO)サービスとしての楽天モバイルを運営してきました。
MVNO業界は600を超えるサービスが乱立し、シェア争いが熾烈であることで有名ですが、この市場で楽天は、見事にシェアNo.1を獲得しています。
これもすべて、背景に巨大な自社の経済圏を持っているからに他なりません。


楽天ポイントを軸としたエコシステムが同社の武器だ

楽天のモバイル事業を経済圏から見た場合、その評価は大きく変わってきます。
NTTドコモなどの既存MNOは、通信事業単体での採算性にこだわりますが、楽天はそこにこだわっていません。

楽天にとってモバイル事業は経済圏を動かすための「エンジン」であり、プラットフォームとして位置付けられているからです。

楽天はMNO戦略を、楽天のほかのサービスとのシナジーを生み出す大きな柱として位置付けています。
MNOであれMVNOであれ、楽天モバイルの端末がすべての楽天サービスのポータルとなり、ユーザーがその回線と端末を使って楽天経済圏の中で消費活動を行うことで、何倍もの利益を生み出すのです。


自社経済圏を持つからこそ、モバイル事業における顧客獲得コストも低く抑えられる


●確度の高い楽天の事業戦略に期待
楽天はMNOに参入したことで、MVNOよりもさらに自由に自社経済圏の活性化を図る動力として活用できることになります。

現在こそ基地局整備が間に合わず、エリア展開もままならない状況ですが、
同社が誇るオープンRANアーキテクチャーによる仮想化基地局は低コストでの運営が可能であり、整備できれば非常に強固で高効率な通信網となる可能性があるからです。

楽天 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は質疑応答の場で、当初MNO事業に投資を予定していた6000億円について質問された際、

三木谷浩史社長
「投資金額は基本的に変わっていない。どちらかというと、もう少し抑えられるかもしれない」
と語っており、MNO参入発表当時「少なすぎるのではないか」と不安視されていた金額について、さらなる削減すらもあり得るとの見解も示しています。


他社MNOにはない画期的な通信網システムによって、低コスト運用と高い安全性の両立を実現しようとしている

赤字続きだった海外事業を数年で黒字化させるなど、最近の楽天は経営戦略において堅調な戦略と手腕を発揮しています。
現状ではつまずきを多く感じるMNO事業についても、同様の見事な逆転劇を見せてくれる可能性もあり、しばらくは目が離せない状況でしょう。
執筆 秋吉 健