マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界第七回 「鳴龍 担担麺」 文・写真:オサーン

カップ麺ブロガーのオサーンです。「ご当地カップ麺」をテーマに、カップ麺を食べてレビューする連載の第七回目。今回は、セブンプレミアムのカップ麺、「鳴龍 担担麺」を紹介します。

セブンプレミアムの「鳴龍 担担麺」

「鳴龍」カップ麺の実力はいかに?

今回のカップ麺は、東京・大塚にあるラーメン店「創作麺工房 鳴龍」の味を再現しています。「創作麺工房 鳴龍」は、2012年創業のお店で、店主はミシュラン一つ星を獲得している香港の中華料理店で料理長を務められていたそうです。

「鳴龍」もミシュランガイド東京にて3年連続一つ星を獲得し、担々麺の人気店として不動の地位を築いています。ラーメン店でビブグルマンとしてミシュランガイドに掲載されるだけでも希少なのに、このお店は一つ星を、しかも3年連続獲得するという離れ業を成し遂げています。

ちなみに、セブンプレミアムのカップ麺には、ミシュラン一つ星を4年連続で獲得した「Japanese Soba Noodle蔦」もカップ麺化されています。両店合わせて7冠という、羽生さんもビックリのラインナップ。

行列の絶えないお店としても知られ、閉店時間を待たずに品切れになることがほとんど。食べるためには非常に高いハードルを越えなければいけないため、お店の味をカップ麺で多少でも味わえるならばうれしい話です。

ミシュランガイドで3年連続一つ星を獲得した実力店は、カップ麺でもその実力発揮しているのか、しっかり食べていきたいと思います。

ラー油の赤色と芝麻醤の白色が目立つ

酸味と芝麻醤が融合した独特な味わいの担々麺スープ

今回のスープは、液体スープ、粉末スープ、あとがけ調味料の3種類の別添小袋から形成される、リッチな担々麺スープです。液体スープに入っているラー油の赤色と、あとがけ調味料に入っている芝麻醤(練りごまの調味料)の白色が目立っています。

ベースになっているのは醤油味で、練りごまとラー油を効かせています。スープ表面は赤く染まっているものの、食べてみるとそれほど辛いわけではなく、せいぜいピリ辛程度。練りごまもあっさりめです。

特徴的だったのは酸味の強さ。黒酢やりんご酢由来の、鼻に抜けるお酢の香りが強いです。カップ麺でも黒酢などが入っている担々麺は多々ありましたが、ここまで酸味が強いのは珍しいです。

スープ表面の芝麻醤

そしてもうひとつの大きな特徴が、別添されている「あとがけ芝麻醤」。「芝麻醤」とは練りごまを使った調味料で、今回はスープと混ぜ合わせずに表面に浮かせたまま食べることが推奨されています。

麺をスープ表面の芝麻醤にくぐらせて食べることで、混ぜ合わせるよりもクリーミーな甘みを強く感じることができます。他の担々麺と比べて特別違った材料が使われているわけではないのに、スープの酸味と芝麻醤の丸み甘みが融合し、独特な味わいに仕上がっていました。これが本当にカップ麺のスープなのかと驚いてしまいます。

中細で歯切れの良い低加水ノンフライ麺

パッツン食感の低加水ノンフライ麺

麺はストレート形状のノンフライ麺が使用されています。カップ麺で使われるノンフライ麺は、「正麺カップ」シリーズに代表されるように、弾力の強い多加水麺食感のものが多いのに対し、今回の麺は歯切れの良い低加水麺で、いわゆるパッツン食感。お店の低加水麺をしっかり再現しています。

また、麺には小麦感や甘みがあり、カップ麺離れした風味の良さが感じられます。芝麻醤の甘みと合わさることで、麺とスープに甘みの一体感が生まれていました。独特な味わいのスープに負けない味と食感で大きな特徴を持った麺でした。

肉そぼろやネギが入っている

具のボリュームのなさが唯一の欠点

具として入っているのは、肉そぼろ、ネギ、粒ごまです。具の量は少なめで、スープや麺の完璧ぶりに比べると見劣りしています。

お店では挽肉の入った肉味噌が使われているのに対し、今回入っているのは粒が大きめの肉そぼろで、あまり担々麺らしさはありません。

担々麺らしい肉味噌をカップ麺で再現するならば、レトルトタイプのものを用いる必要がありそうで、すでに250円オーバーの高価格商品がレトルトを使うとさらに高額になってしまうことを考えると実現は難しそうです。

他にはネギや粒ごまが入っています。どちらもそれほど入っているわけではありませんが、スープの芝麻醤や練りごまに加え、粒ごまの香ばしさによって、ごまの風味が重層的に感じられたのはとても良かったです。

ミシュラン一つ星獲得店はカップ麺もすごかった!

東京大塚のミシュラン一つ星獲得店「創作麺工房 鳴龍」の担々麺の味を再現したカップ麺を食べてきました。

黒酢とりんご酢による酸味の強さと、スープ表面に浮かせたまま食べる芝麻醤の甘みが大きな特徴で、他の担々麺商品と原材料に大きな違いはないにもかかわらず、今まで食べたことのない独特な味わいでした。合わせる麺のパッツン食感も印象的。具のボリュームのなさが唯一の欠点ですが、高レベルなスープと麺の前では些細なことのように映ります。

「創作麺工房 鳴龍」はミシュランガイドで3年連続一つ星を獲得した名店ですが、お店の味を再現したカップ麺もその実力は確かなもので、普段からカップ麺を食べている方だけではなく、食べ慣れていない方、敬遠されている方にも食べたもらいたい一杯。きっと、カップ麺に対するイメージが覆されるのではないかと思います。

筆者:オサーンカップ麺ブロガー。十数年前に出会った「日清麺職人」のおいしさに感激したことがきっかけでブログを開設。「カップ麺をひたすら食いまくるブログ」で毎週発売される新商品を食べて毎日レビューしています。豚骨スープとノンフライ麺の組み合わせがお気に入りですが、実はスープにごはんを入れて食べるのが最も至福の時です。Twitter(@ossern)