“いま一番脱げるシンガーソングライター”こと、藤田恵名さん。



水着姿でステージに立つ藤田さんは近年急激に存在感を増し、2019年1月に公開した新曲「月が食べてしまった」のMVは公開2週間で100万回再生を超え、大きく話題を集めています。

しかしその一方、最近出演したテレビ番組では「いつ服を着ればいいかわからなくなってしまった」と本音を吐露し、共演者からアドバイスをもらって涙してしまう場面も。

思わぬ方向に転がりだし、思い描いた未来からズレたまま歯止めが利かなくなった現状に、藤田さんご自身が今何を思っているのか、伺ってきました。

〈聞き手:ライター・サノトモキ〉


【藤田恵名(ふじた・えな)】福岡県出身のシンガーソングライター。ミス東スポなどグラビアアイドルとしての実績も持ち、現在は「いま一番脱げるシンガーソングライター」として活動中。代表作に「言えない事は歌の中」「月が食べてしまった」(キングレコード)など

「もともと、MISIAさんみたいな歌手になりたかった」

サノ:
ずばり最初にお聞きしたいのですが…「いま一番脱げるシンガーソングライター・藤田恵名」は、藤田さんがもともと目指していた「歌手」のイメージとは違ったのでしょうか?

藤田さん:
私…、ほんとはMISIAさんとか絢香さんみたいな歌手になりたかったんですよ(笑)。



サノ:
MI…ええっ!? ぜ、全然違う!!

藤田さん:
もともとは女性グループのSPEEDが好きだったんですけど、解散したときにものすごく悲しくて。

そこから、MISIAさんとか宇多田ヒカルさんとか、ソロのアーティストさんに惹かれるようになったんです。

この人たちはいなくならないんだ」って思ったら、もう一人でやってるってだけで憧れるようになっちゃいました(笑)。

サノ:
理由がピュアすぎる…

そもそも歌手になりたいと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

藤田さん:
幼稚園のころ、何をやっても私をめったに褒めてくれなかった母親が、『セーラームーン』の歌を歌ったときだけは褒めてくれたんです。今はもう亡くなってしまったんですけど、もっと褒められたくて。

だから、小学校に上がってすぐ歌やダンスのレッスンに通いはじめて、小学校・中学校時代は、地元のショッピングセンターとかでステージを用意してもらって、カバー曲を歌ったりしていました。

そのころから歌手になることは目標にしていたし、学生時代ポエムにドハマりしていたこともあって、高校時代からは作詞もするようになりましたね。


ヴィレヴァンで詩人・きむさんのポストカードを集めまくる学生だったそうです

サノ:
学生時代までは、憧れのシンガーソングライター像にまっしぐらな気がするんですけど、どこから思い描いた未来図とズレはじめたんでしょう…?

藤田さん:
うーん…今思えば、路上ライブでコスプレをするようになってからかなあ。

まあ、SSWおじさんをなんとか黙らせるために当時の自分が必死に選んだ手段だったので、後悔はしていないんですけど。

サノ:
SSWおじさん…?

どんぐりの背比べから抜け出して、SSWおじさんを黙らせたかった



藤田さん:
シンガーソングライターおじさん、通称SSWおじさんです。

世の中には、女性シンガーソングライターに粘着して、CDも買わずに上から目線でアドバイスをするのが大好きなおじさんたちがいるんですよ。

サノ:
こ、こわ…!!!

藤田さん:
SSWおじさんは、「寒いなか頑張ってる女の子を応援すること」自体が好きなので、応援する相手は誰でもいいんです。

だから、私のところに来るSSWおじさんも、べつに私のことを応援してくれているわけではなく、路上ライブをしている女の子に上から目線でマウント取って快感を覚えてるだけ。

物販も買わず、「チケット代払ってるんだからお話してもいいよね、写真撮ってもいいよね」って言ってくるおじさんたち…最初は来てくれてうれしい気持ちもあったけど、彼らがいないとライブができない自分が…だんだんすごく嫌になって



藤田さん:
だから、ほかの路上ライブの子たちとのどんぐりの背比べから頭一つ突き抜けて、「この子、近寄りがたいな」って線引きをさせるために、まわりがやっていない新しいことにどんどん挑戦していったんです。

ただ漠然とライブをしている子たちとは違うぞ」って注目してもらって、いろんなお客さんが来てくれるようになれば、SSWおじさんも肩身が狭くなって黙るんじゃないかって。

サノ:
その逆転劇、めちゃくちゃスカッとしそう…

藤田さん:
で、その「新しいこと」の一つがコスプレだったんです。

ルックスは武器にできると思っていたので、ビジュアルを活かせるようなことで試行錯誤していたんですけど、そのうち、ちょっと露出が多い衣装を着たりとかもして…。

今思えば、この時点ですでに、もともと思い描いていた歌手像とは少し離れていたかもしれないですね。

サノ:
つまり、コスプレの延長線上で「いま一番脱げるシンガーソングライター」になっていった…?

藤田さん:
いや…「いま一番脱げるシンガーソングライター」になった決定打は、上京してグラビアアイドルになっちゃったことでして…(笑)。


波乱万丈すぎて自分で笑っちゃう藤田さん。いったいどうしてグラドルに…?

「求められていること」を頑張ったら、「やらなきゃいけないこと」から解放された

サノ:
突如歌手からグラビアアイドルに…いったい、何があったんですか…?

藤田さん:
いよいよ東京の事務所に所属してアーティストとして本格的に活動しようと、オーディション雑誌で「歌のお仕事できます」って書いてある事務所10社くらいに応募をしたんですけど…

いざ当時の事務所に入ってみたら、「うち水着にならないと仕事ないよ」って言われて…(笑)。

サノ:
今、芸能界の底知れぬ闇を感じています。

藤田さん:
こっちはアーティストとして所属したつもりだったから、ライブのお仕事の話とかが一切ないのを不思議に思ってこっちから連絡したら、「音楽の仕事はないけど、グラビアの撮影会やってみる?」って。

水着なんてプライベートでも全然着たことないし、めちゃくちゃ抵抗がありました。

雑誌で見るグラビアアイドルの方って肌とかツルンってしてるし、「どうしよう、自分なんかとてもじゃないけど…」と思って。



藤田さん:
何より、一度人前で水着になってしまったら、子どものころ夢見ていたMISIAさんや絢香さんのような歌手にはなれないんじゃないか…

そう思うと、撮影の2、3日前から食事も食べられなくなってしまいました。

サノ:
やっぱりその撮影会は、辛い経験になってしまいましたか…?

藤田さん:
それがですね、路上ライブ時代の熱心なファンの方たちがわざわざカメラを買って参加してくださって、同じ事務所の先輩よりお客さんが集まってしまって…(笑)

運営側のスタッフさんも「ちょっとこの子こんなにお客さん集まって…誰!?」みたいな感じになってたし、その翌年には当時の事務所が勝手にエントリーしたミス東スポというミスコンでグランプリを獲ってしまいました。

サノ:
めちゃくちゃ結果出しとる


「あれ? もしかして私需要あんじゃね…?」

サノ:
でも、もともとやりたくなかった仕事が成功していくのって、自分の人生がどんどん脱線してる感じがして、怖くなかったんでしょうか…?

藤田さん:
うーん…でも、当時は生活のためにアルバイトもしていたから、「求められていること(=グラビア)」を懸命に頑張ることで、「やらなきゃいけないこと(=アルバイト)」から解放されるという恩恵は感じていたんですよね。

グラビアのお仕事でお金に余裕ができれば、「やりたいこと(=音楽)」と「やらなきゃいけないこと(=アルバイト)」の葛藤から抜け出して、もっと音楽に時間をかけられるようになる。スタートこそ嫌々だったけど、音楽を次のステージに進めるためにも、今グラビアを辞めるのは違うなと思うようになりました。

サノ:
…となると、次は「求められていること」と「やりたいこと」の葛藤になったのでしょうか?

ほんとうは自分には「やりたいこと」があるのに、それ以上にまわりに「求められていること」があるのって、それはそれで辛いですよね…。

ボクは就活時代、どちらを重視して仕事を選ぶかで大きく迷いました。



藤田さん:
私も、しばらくはただがむしゃらに呼ばれたライブに出て、言われた撮影会にも出て…を繰り返してました。

でも、もうグラビアで水着になった時点で、「MISIAさんや絢香さんにはなれない」というのはある意味スパンと諦めがついていて。

「じゃあ自分にしかできないことってなんだろう」と開き直って考えてみたら、そのときの私にとってはやっぱり「グラビア」×「音楽」だったんですよね。

サノ:
「自分にしかできないこと」=「求められていること」×「やりたいこと」だったと。

藤田さん:
で、あるとき思い切って、「今日は水着で歌います!」ってイベントを開催してみたんです。

もともとは水着にカーディガンを羽織る予定だったんですけど、番組の密着取材に来ていたスタッフさんに「カーディガンなしで歌えませんか?」と言われて、じゃあ脱いでみるかと。

そうしたらすごく集客が伸びて…味をしめて「次もビキニでライブします!」って言っちゃったのかな。

それを繰り返していくうちに、いつ服を着ればいいのかわからなくなってしまって、今です!(笑)

つまずいた者、選ばれなかった者だけが見つけられる幸せがきっとある

サノ:
でも、実際にお話してみて…思っていた以上に、思い描いていた未来からズレてしまっていることを含め、自分のこれまでに後悔がなさそうに見えました。

なんとなく、「人生、こんなはずじゃなかったのに…」というようなお話も出てくるのかなと思っていたんですけど…

藤田さん:
うーん…もちろん思い描いていた歌手像とは全然違うし、「いま一番脱げる」というコピーによって敬遠されてしまいがちな女性の方にも音楽を届けたいし、誹謗中傷も多いから凹んでお酒ばっかり飲んでるし…(笑)

現状の課題を突破するために服を着るべきか否かという葛藤は、日々してます。

だけど、“人生、こんなはずじゃなかった”なんて…きっとみんな、そうじゃないですか?



藤田さん:
なんというか…思い描いた未来なんてズレていくのが当たり前で、ズレた現実をきちんと伏線として回収して幸せにつなげていくのが人生だと思うんです。

サノ:
…!!

藤田さん:
見てくれで、表面的に「いいな」と思ったものが、選んでみたらやっぱり違った…なんてこと、世の中にはありふれているじゃないですか。

たとえば、サラリーマンとして働いている方だって、就職活動で第一希望の会社に入れたとしても、実際に思いえがいた通りの晴れやかな道がそこに待っているとは限らないですよね?

サノ:
それは…そうだと思います。

藤田さん:
自分はこれだ!」って確信をもってスタートを切れることなんてあんまりないし、目の前の決断がその後の人生にどう影響するかなんて、少なくとも私はその瞬間瞬間はほとんど理解できていなかったと思う。

無駄に思えたことも、もちろんたくさんあったんですけど…



藤田さん:
でも、当時は「何をやっているんだろう」と思っていても、あとでフタを開けてみたら「あれがあったから」と言えるようなことって、案外たくさんあると思うんです。

やりたくないことをやらずに済む人ってたぶんいないし、人生はどうしたって思っていたところからズレていっちゃうけど、そのぶん、どんな経験でもちゃんと伏線として回収できるようになっているような気がしています。

サノ:
たしかに、人生ってそんなことばっかりかも…

藤田さん:
もちろん、きちんと計画的に人生を進めて、全部思い通りにいっている人もいるかもしれないけど、ほんとうに全部が全部計画通りの人生だとしたら、ちょっとかわいそうかなあ。

つまずいた者、選ばれなかった者だけが見つけられる幸せだって、きっとあると思うから。



藤田さん:
私にしたって、服を着たとしても、着なかったとしても、どうせそれぞれの地獄が待ってると思うんですよ(笑)。

何を選んでも、きっと何かしらの地獄は待ち受けているだろうし、それならもうどのタイミングで何を選択したって「すべてはベストタイミング!」って思ってるくらいが楽ですよね。

どんな地獄だって、伏線として回収できると思えたら。



「シンガーソングライターなのに、悩んでる内容、小島よしおさんとかアキラ100%さんと同じですからね!?」と笑いながら語ってくれた藤田さんですが、胸にまっすぐ突き刺さってくる言葉をたくさん届けてくれました。

思い描いた未来なんて、ズレていくのがデフォルト。そう考えたら、社会に出て理想と現実のギャップを思い知ることは、人生における第2のスタートラインなのかもしれません。

20代。揺れて、流されて、それでもがむしゃらに打席に立って、たくさんの伏線を作っていきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=藤原慶(@ph_fujiwarakei)〉

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