【戸塚啓コラム】西野朗の10分間。攻めることより何倍も勇気のいった決断
誰もが納得する答えは、おそらくない。
ポーランド戦のラスト10分の戦いかたが、賛否を呼んでいるようだ。
西野朗監督は、0対1で負けることを選んだ。言いかたを変えれば、攻めずに負けて、勝ち残ろうと決めた。
日本が何もしないまま終了の笛を待っている間、セネガルがコロンビアから得点を奪ったら、日本は総得点の差で3位に転落していた。自分たちでアクションを起こさずに大会を去ることになっていたら、選手たちの失望ははかりしれないものがあっただろう。
選手だけではない。決勝トーナメント進出を決めたにもかかわらず、賛否の「否」も沸き上がっているのだ。想像もできないぐらいの騒動へ、発展していたかもしれない。大参事だった。
ならば、攻めるべきだったのか。
西野監督が同点狙いを指示し、それでも追いつくことができなかった、という結末ならいい。だが、攻めることにはリスクが伴う。2点目を失うかもしれないし、とにかく1点が欲しい、早くボールを奪い返したい気持ちから、選手たちが激しいプレーに走るかもしれない。誰かがイエローカードをもらい、フェアプレーポイントでセネガルに並ばれたり、追いつかれたりしてしまうと──。
攻めることにもリスクはあったのだ。それでも、あのボールキープは否定されるのか? 僕にはそうは思えない。
結局のところ、攻めても、攻めなくても、2位になれなければ西野監督は批判されていたに違いない。「まだ2位以内が決まっていなかったのに、スタメンを6人も入れ替えたからだ」との声が、ボリュームを上げていたはずである。
残り10分のボールまわしがどのような反応を引き起こすのかは、誰でもない西野監督は一番分かっていたはずである。自分からアクションを起こす「強い采配」が、彼の監督としての哲学である。ライバルに運命を委ねるのは本意でなく、ある意味では屈辱でもあっただろう。それでも、ベスト16へ進出するための最善策として、攻めることを止めさせた。
敢闘精神に溢れる敗者に拍手が送られる一方で、したたかな勝者は眉をひそめられる傾向が、日本にはある。ひとつのことをやり通すことが尊いという牢固な思想も、日本のスポーツ文化に根づいていると感じる。
勝つためには何をしてもいい、とは言わない。しかし、監督が勝つために最善と考え、それが結果に結びついたのだ。2大会ぶりの決勝トーナメント進出は、アジア勢では唯一である。アウトサイダーはのきなみ消え去り、南米と欧州のトップランカーが作り出すステージに加わっていることは、もっともっと評価されるべきだ。
攻めずに負けて勝ち上がるというのは、消極的な決断ではない。むしろ、攻めることより何倍も勇気のいる決断だったと、僕は考える。
ポーランド戦のラスト10分の戦いかたが、賛否を呼んでいるようだ。
西野朗監督は、0対1で負けることを選んだ。言いかたを変えれば、攻めずに負けて、勝ち残ろうと決めた。
日本が何もしないまま終了の笛を待っている間、セネガルがコロンビアから得点を奪ったら、日本は総得点の差で3位に転落していた。自分たちでアクションを起こさずに大会を去ることになっていたら、選手たちの失望ははかりしれないものがあっただろう。
ならば、攻めるべきだったのか。
西野監督が同点狙いを指示し、それでも追いつくことができなかった、という結末ならいい。だが、攻めることにはリスクが伴う。2点目を失うかもしれないし、とにかく1点が欲しい、早くボールを奪い返したい気持ちから、選手たちが激しいプレーに走るかもしれない。誰かがイエローカードをもらい、フェアプレーポイントでセネガルに並ばれたり、追いつかれたりしてしまうと──。
攻めることにもリスクはあったのだ。それでも、あのボールキープは否定されるのか? 僕にはそうは思えない。
結局のところ、攻めても、攻めなくても、2位になれなければ西野監督は批判されていたに違いない。「まだ2位以内が決まっていなかったのに、スタメンを6人も入れ替えたからだ」との声が、ボリュームを上げていたはずである。
残り10分のボールまわしがどのような反応を引き起こすのかは、誰でもない西野監督は一番分かっていたはずである。自分からアクションを起こす「強い采配」が、彼の監督としての哲学である。ライバルに運命を委ねるのは本意でなく、ある意味では屈辱でもあっただろう。それでも、ベスト16へ進出するための最善策として、攻めることを止めさせた。
敢闘精神に溢れる敗者に拍手が送られる一方で、したたかな勝者は眉をひそめられる傾向が、日本にはある。ひとつのことをやり通すことが尊いという牢固な思想も、日本のスポーツ文化に根づいていると感じる。
勝つためには何をしてもいい、とは言わない。しかし、監督が勝つために最善と考え、それが結果に結びついたのだ。2大会ぶりの決勝トーナメント進出は、アジア勢では唯一である。アウトサイダーはのきなみ消え去り、南米と欧州のトップランカーが作り出すステージに加わっていることは、もっともっと評価されるべきだ。
攻めずに負けて勝ち上がるというのは、消極的な決断ではない。むしろ、攻めることより何倍も勇気のいる決断だったと、僕は考える。
関連情報(BiZ PAGE+)

1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している
