ー総合商社に入れば、人生、一生安泰で勝ち組。ー

東京において、商社マンというのは一見、社会的ステータスの高い、万能なカードに見える。

しかし、果たしてそれは事実なのか?

商社という舞台には、外部からは計り知れない様々な人間模様があり、出世レースに関する嫉妬と憎悪に満ちた縦社会のプライド合戦も繰り広げられている。

早稲田大学商学部卒業後、大手総合商社に入社した優作。彼の商社マン人生は、薔薇色なのか、それとも?

花形部署に任命され、無敵だと信じていた24歳、異例の部署変え人事で同期の賢治とトレードされ、花形部署から異動になった27歳、フィリピンで海外赴任の寂しさを知り、麻里子が優作に会いに来た直後に麻里子の妊娠が発覚した28歳。そして日本に帰国し、スーパーマーケット事業部に飛ばされた31歳。そんな矢先、賢治が優作の出世を妨害したと自白してきた...?




同期・賢治の告白で暴かれた驚きの陰謀


「どういうこと?お前が俺のこと飛ばしたの?」

賢治がエネルギー部署に自ら異動願いを出したと告白され、 鼓動が早まるのを感じた。同期で一番仲が良いと思っていた賢治。まさかその賢治に裏切られるとは...

「実は、花澤部長からうちの部署に来ないか、ってオファーを貰って。俺だって、エネルギーみたいな会社の花形部署への憧れが入社当時からずっとあってさ。」

「でも、まさか優作が飛ばされるとは思ってなくて...本当、ごめんな。」

目の前にある美味しそうな焼き鳥も楽しそうに話している隣のカップルも、賢治の一言で全てが色褪せて見えた。花澤部長が賢治にオファーしたのは、 賢治と俺が仲が良いことを知っていたからだろう。

麻里子を狙おうとしていた自分への嫌がらせなのは明らかだった。誇りを持っていた部署から異動させ、そして同期との仲を平気で引き裂く。

なぜ花澤部長はそんなことができるんだろうか...史上最年少で部長まで上り詰めるには、やはりそんな冷酷さが必要なのだろうか。

そのオファーを受けた賢治を責める訳にも行かなければ、会社員である以上、花澤部長に怒りをぶつける訳にも行かない。

「そっか...まぁ仕方ないよな。」

それしか言葉が見つからなかった。何となく気まずい空気が流れたまま、その日は解散し、その数日後に賢治はブラジルへ戻った。

花澤部長の怖さを、そして商社特有の「上には絶対服従」の怖さを身をもって体感した。


上司からも同期からも裏切られた優作...商社に渦巻く黒い影が段々と暴かれる!


商社マンはイエスマンであるべきなのか?


「優作、明日からマレーシアだろ?その後一度成田へ戻ってから、そのまま中国へ行ってこの案件をクロージングして来い。 」

相変わらず無表情で神経質そうな荒木部長から指示が飛ぶ。最近出張が多い。家に戻らず、空港からそのまま違う国へ飛ぶことが日常茶飯事になってきた。

「了解です。あの案件、責任を持ってクロージングして来ます。 」

何の感情も無いまま機械的に答えていた。いつの間にか、すっかりイエスマンになっている自分に気づく。20 代の頃はやりたいプロジェクトに燃えていて、いつか大成功を掴んでやると意欲に満ち溢れていた。

しかし時は流れ、現在32歳。

会社にいる限り、突き破れない限界が見えてきた。最近年収が一気に上がり、1,000万円はもう目前となった。しかしこの先、年収が4,000万円になることもなければ、今の会社の社長になれる訳でもない。

30歳を過ぎ、商社マンの現実と限界を知ってしまった気がして、どこへ情熱を持っていけば良いのか分からずにいる。




「あと、マレーシアは良いけど、中国まではエコノミーで行けよ」

前まで、どんな近場でも出張は全てビジネスクラスだった。しかし最近では 課長以下のクラスだと近場はエコノミークラスになる。そして出張先もアジアが断トツで多い。

-商社は一生勝ち組-

そう言われていたのになぁ...

「分かりました。」

空港ラウンジが使えないのは辛いなぁと思いながらも、エコノミークラスでも仕方ないと納得するしか無い。

「昔は全部ビジネスだったんだけどな。」

荒木課長がふと寂しそうに呟いた。

商社は課長クラスがやたらと多い。40歳になって肩書きが無いと可哀想、と言う日系の会社なりの気遣いだと思うが、その分課長の数が多すぎて、そこから抜きん出るにはかなり熾烈な争いが繰り広げられているのは見て分かる。そんなことを考えていると、何故か急に荒木課長が小さく見えた。

「荒木課長、課長のためにも頑張りますよ」

「何だよ、急に。気持ち悪いな」

そう言いながらも、少し嬉しそうな顔をした荒木課長を見て、こちらも嬉しくなった。

上の人は絶対、のルール。今、自分の上にいる人に付いていこうと決めた。


夢と現実を知ってしまった優作に、遂に運命の人が現れる!出会いはまさかの場所だった...


まさか普通の飲み会で、将来結婚する相手に出会うなんて。


「優作くん、今日はよく飲むね〜」

恵比寿にある『ikura』 でキンキンに冷えた日本酒を一気に飲み干す。最近給料が上がったとは言え、飲み会はコスパが良いお店に限る。




32歳にもなると、急にお食事会の回数が少なくなった。それなのに、参加する女性陣の年齢層は確実に高くなっている。同期は半分以上が結婚し、独身で残っている同期も大半は海外にいる。日本に残っており、独身なのは優作と純也と数人位だった。

「まぁね。半分ヤケ酒かも。」

前は若くて可愛らしい新卒のCA食事会が多かったのに、最近はCAの中でも中途採用の“結婚したいオーラ”が凄い人達か、それか30歳前後で「商社マンだったら結婚してもいいかな」という上から目線の女性陣 ばかりだ。

「純也、お前どこでこの子達に会ったの?」

目の前にいるのは結婚願望出し過ぎの31歳のCA、特にこれと言った特徴も無い保険会社勤務の30歳、そして気が強そうな、貿易事務をしている30歳の由美だった。

「前にあのCAの子に別の食事会で会ってさ。次は同期連れてきて下さいって頼まれたんだよ。」

彼女達に聞こえないように純也が囁く。彼女達の結婚に対する意欲には脱帽する。




「そっか、純也は本当に元気だな。」

「優作が枯れ過ぎ何だよ。お前さ、まだ麻里子のこと引きずってんの?」

相変わらず気配りという言葉を知らない純也は、ズケズケと人の心に土足で踏み込んで来る。

「別に引きずってはいないよ。ただ、元気かなって心配してるだけ。」

違う。結局、麻里子を永遠に何処かで引きずっている。

「優作、由美ちゃんどう?可愛いじゃん。」
「由美ちゃん、優作どう?」

純也が勝手にグイグイ話を進めている。確かに由美は可愛かった。

「優作さん、素敵ですよね。何かその影のある感じが」

ちょっと犬っぽい可愛い顔で、 麻里子と同じセリフを言ってきたので、思わず笑ってしまった。この子、良いかもしれない。

「由美ちゃん、今度二人でご飯行かない?」



結局この日がキッカケとなり、由美と付き合い出すことになった。そして1年後、籍を入れた。

可愛い嫁との幸せな結婚。これでもう麻里子とは完全に終わった。幸せな家庭を築き、仕事に邁進する。そう決めていたはずだった。

しかし、また麻里子の誘惑に負けて大惨事が起こる日が来るとは思ってもいなかった...

次週9月25日日曜更新予定
結婚後に優作が犯してしまった過ちとは!?そして優作の出世に大きく関わる大チャンスがやって来る...