大学でのマイクロソフト、グーグル、Yahooバトルと、その上をいくデジタル世代の学生たち
●自前システムのクラウド化をすすめる大学
これまで多くの大学は、校内のITシステムを独自に構築してきた。特に理工系の大学は、システム構築できる人材はいくらでもいる。オープンソースのソフトウェアをかき集め、メールやグループウェアのシステムを作り上げるくらい朝飯前という大学も少なくないだろう。
しかし、組み上げたシステムを、低コストで、長期にわたって安定的かつ安全に運用するとなると、容易ではない。運用・保守も必要になるし、トラブル対応やユーザーサポートも必要だ。さらに、東日本大震災以降、校内にシステムを持ちたくないと考える大学も増えているようだ。
そこで注目されるようになったのが、Office 365やGoogle Appsなどのクラウドサービスである。特に、教育機関には無償で提供されるとなれば、大学側がシステム更新のタイミングで大手のクラウドサービスの導入を検討するのは当然と言えるだろう。
●教育機関向け3大無償クラウドサービス
現在、大学などの教育機関向けに提供されている無償のクラウドサービスとしては、マイクロソフトのOffice 365 for Education(注1)、グーグルのGoogle Apps for Education、Yahoo! JAPANのYahoo! メール Academic Editionの3つが挙げられる。以下に、実際に導入している大学の一部を抜粋した。
注1:有料のプランも用意されている。
Office 365 for Education(http://office.microsoft.com/ja-jp/academic/)
東京大学、東京工科大学、福岡工業大学、徳島大学、立教大学……等
Google Apps for Education(http://www.google.co.jp/intx/ja/enterprise/apps/education/)
一橋大学、日本大学、京都府立医科大学、立教大学、金沢大学……等
Yahoo! メール Academic Edition(http://docs.mail.yahoo.co.jp/)
早稲田大学、青森大学、成城大学、東京学芸大学、福井県立大学……等
ここで紹介したのはごく一部だが、誰もが知っている有名大学も利用しているのがわかるだろう。なお、Yahoo! メール Academic Editionはメールサービスのみなので、他の2つとは少し状況は異なる。
一方、Office 365 for EducationとGoogle Apps for Educationは、メールだけでなく、文書作成などのWebアプリケーション、グループウェア機能なども含まれている。多くの場合、最初にメールが導入されるようだが、大学によっては、その他の機能も積極的に活用されているようだ。
また、立教大学のように、2つのサービスを併用しているケースもある。大学によっては、学生用にはクラウドを使い、教職員用には校内サーバのサービスを使う場合もあるようだ。このあたりは、各大学の事情や考え方によって異なっている。
●企業によるユーザー囲い込みと企業を利用する大学
これだけ多機能なサービスを企業が無償で提供する背景には、企業の社会貢献という側面があるのは確かだ。しかし、もちろんそれだけが理由とは、誰も思わないだろう。最もわかりやすい理由を考えれば、将来の自社サービスの新規利用者の獲得と顧客の囲い込みだ。特に、マイクロソフトのOffice 365とグーグルのGoogle Appsは、学生市場だけでなく、ビジネス市場において世界規模で熾烈な競争を繰り広げている。
ビジネスツールは、いったん利用者になると、操作や使い勝手の慣れから、なかなか他のツールに移行されない傾向が強い。したがって、学生の頃から自社のツール慣れてもらい、卒業後、企業に入ってからも使い続けてほしい。企業側は、そう考えても不思議はない。
一方、大学側にとっては、メールやスケジューラがタダで利用できて、サーバ管理も不要となるわけだから一石二鳥となる。今後もこうした企業のクラウドサービスを導入する教育機関は増えるに違いない。
●デジタル世代の学生には企業や大学の思惑に縛らずに利用を
企業の顧客囲い込みという点については、一般的にはネガティブに考えがちだが、それほど問題視する必要はない気がする。最近のデジタルネイティブ世代の学生なら、Office 365だろうが、Google Appsだろうが、難なく使いこなせるだろう。大学でGoogle Appsを利用していたからといって、企業に入ってOffice 365が使えないことはないだろうし、その逆も同じだろう。
だから、Office 365やGoogle Appsが導入されている大学の学生には、ぜひ積極的に活用してほしい。それは、世界中の企業に導入され、ビジネスの最前線で使われているモノとまったく同じツールなのである。いち早く利用し、スキルを習得することは、社会に出た際の大きなアドバンテージにもなるだろう。
井上健語(フリーランスライター)

