【なでしこ】アジア杯、なでしこらしいサッカーでベトナムに快勝
女子アジアカップ第2戦で日本は開催国・ベトナムと対戦し、4−0で圧勝。得失点差でグループAの首位に立った。
体を張った粘り強い守備――大量失点を免れようと、ほぼ5バックという形をとらざるを得なかったベトナム陣は、両者が集結して大渋滞を引き起こした。
そのためスペースがなく、日本が攻め込んでも攻め込んでも、誰かに当たってしまう。左右に揺さぶり、緩急をつけた攻めで相手の集中力と、スタミナを散らすために前半の45分は費やされた。が、ベトナム戦はいつもこういった展開になる。すべて織り込み済みだった。
立ち上がりから気をはいたのは左サイドバックに入った上尾野辺めぐみ。積極的にオーバーラップを繰り返し、中へ配球する。しかし、とにかく人が多い。いつも以上にパスコントロールの精度が求められたが、なかなか思うようにつながらない。このまま終わるかと思われた44分、宮間あやの左コーナーキックを上尾野辺がつないで相手を引き付けると、最後は「(ボールが)来るかもと構えていた。思い切り蹴ったら入った(笑)」という川澄奈穂美が豪快に決めた。
日本の猛攻をしのいでいたベトナムは後半に入ると、足が止まり出す。それを待っていたかのように日本が波状攻撃をしかける。65分にはMF木龍七瀬がこぼれ球をヘッドで決めて追加点を挙げると、その4分後には、宮間からの鋭い縦パスに今大会初スタメンとなった澤穂希が反応し、川澄につなぐ。そこからのクロスにFW大儀見優季が頭で合わせて3点目となるゴール。日本らしいつなぎで完全に崩した。
こうなると日本の勢いは止まらない。87分には、途中から入ったFW高瀬愛実が中に折り返すと、菅澤優衣香が崩れながらもボールを後ろへ押し戻し、川澄がダメ押しゴール。終わって見れば4−0の圧勝で勝ち点3を手にした。
前半はベトナムの高い集中力に苦しめられ、後半に相手のスタミナが切れ始めたところで畳み掛け、一気に勝負をつける。ここ数年のベトナム戦の必勝パターンだ。この展開での鍵は先制点と追加点のタイミング。
これまでにも、前半を無得点で折り返すことがあったが、今回は最もダメージのある前半終了間際にベトナムの守備を崩し、先制点を奪った。果敢にトライを続けていた上尾野辺のアシストが得点につながり、彼女自身も形となったことに胸をなでおろしながらも、「なかなかリズムが作れなかった。もっと外からシュートを打てたらよかった」と反省を口にした。
そして連続ゴールの口火を切った木龍のプレーも随所で効いていた。
これまで度々新戦力が必要な際には、なでしこに招集され、チャンスを与えられてきた木龍だったが、代表での実戦となると、途端にプレーにキレがなくなってしまう。ミスを恐れ判断が遅れると、得意のドリブルも引っかかる。無理やりシュートを打っても、ミートせず、悪循環を繰り返していた。
今季から新境地を求めて、アメリカのスカイブルーFCに移籍。厳しい状況に身を置いた木龍に今、変化が表れ始めている。
ボールを持てば迷うことなくゴールへ突き進む姿勢を貫けるようになった。「積極性が出てきた」と指揮官もその変化に目を細める。前半で持ち前のドリブルが効かないとなれば、ベンチに下げるのではなく、後半はより彼女の得意とする左サイドで挑戦させた。
2010年の代表初招集から実に4年あまり。ようやく生まれた代表初ゴールはドリブル突破ではなく、こぼれ球を頭で押し込むという「彼女らしくないゴール」(佐々木監督)ではあったが、本人にとっては嬉しい初得点だった。「ああいう泥臭いゴールも今日は必要だったと思います」と照れ笑い。
エース・大儀見が不在となる決勝トーナメント以降は、強引にでもシュートに持ち込めるゴールゲッターが必要不可欠。現在ポッカリと空いてしまっているそのポジションに木龍が名乗りを上げた形となった。だが、格下を相手にいくら形が作れようとも、プレスのスピード、当たりの強くなるベスト4以上の戦いで力を発揮できなければ意味がない。木龍がまず超えなくてはならない壁である。これを超えたとき、その積極性は今後、揺るぎない木龍のカラーとなるだろう。
この勝利で1勝1分けとした日本は得失点差で、オーストラリアを抑えて首位に躍り出た。続くヨルダン戦、引き分け以上でワールドカップ出場が決まる。次戦はコンディション優先ではあるが、「まだピッチに立っていない選手を使いたい」と大幅なメンバー入れ替えを示唆した佐々木監督。
今大会、未だ勝利を手にしていないヨルダンではあるが、指揮を執るのは2012年からアジア貢献事業の一環として日本サッカー協会から派遣されている沖山雅彦監督だ。発展途上ではあるが、1戦1戦、力をつけてきているチームを新戦力たちはどう攻略してみせるのか、決勝トーナメントを戦うレギュラー入りへのアピール合戦は18日に行なわれる。
早草紀子●文 text by Hayakusa Noriko

