個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第十五回


■はじめに
今月の11日((2013年11月11日))にEPUB 3.0.1仕様のドラフト(草案)が、IDPF(International Digital Publishing Forum)で公開されました。



本ブログでも触れたことがあったかもしれませんが、EPUBはIDPFによって策定された電子書籍のフォーマットです。

最近は日本の電子書籍サービスでも採用されることが多く、本ブログでもメインに取り上げている形式です。今回はこのドラフトについて少しだけ触れようと思いますが、その前にまず最近のEPUB仕様について少し復習しておきます。

■EPUB 3.0仕様の特徴
Amazon Kindle、楽天Kobo、Apple iBookstore、Google Playブックスなど様々な電子書籍サービスがありますが、多くの電子書籍サービスでEPUBが採用されていたり、EPUBが入稿形式として受け付けられたりしています。

現在日本の電子書籍サービスで利用されているEPUBは2011年11月に公開されたEPUB 3.0仕様に基づいたものが主流です。

それ以前のEPUB仕様(EPUB 2.0/EPUB 2.0.2)は、基本的に欧文を想定した仕様で、アラビア語のような右から左のテキストフローや、日本語の縦書き、右開きといった表現には対応していませんでした。

これがEPUB 3.0ではグローバルな仕様として、各言語の書籍を再現できるようになりました。先に挙げた、テキストフローの方向、縦書き、右開きの他ルビ、圏点、縦中横などが仕様に盛り込まれています。

EPUB 3.0では「グローバル化」の他に表現力の向上も図られています。具体的にはビデオ、音声データの利用とJavaScriptのサポートです。

これらはリーダーアプリ側の実装が見送られるケースも少なくありませんが、印刷物と差別化できるコンテンツを制作する際に大きな武器にもなります。

以前紹介した読み上げEPUBで用いられる、Media Overlaysも音声データを利用したものですね。

技術的な面ではEPUBはWebの技術を採用していますEPUB 3.0ではコンテンツ本編にHTML5を採用し、外観の制御にはCSSを使います。このHTML5自体も最終的に完成した仕様ではなく、EPUBで採用されているCSSも仕様が確定していないものがいくつも含まれています。

今回のEPUB 3.0.1ドラフトでは、EPUB 3.0からの要望への対応や、仕様上の問題点の変更、参照仕様(先述の未確定なCSS仕様など)の変更に伴う調整などが主なものとなっています。

■EPUB 3.0.1ドラフトでの変更点
3.0.1ドラフトでEPUB 3.0からどのような変化があったのか、ということについて触れていきますが、それには本来EPUB 3.0仕様をある程度理解している必要があります。

今回はそのあたりは適宜補足することにして、いくつかピックアップしてご紹介していきます。

冒頭に掲載したリンクページには、EPUB 3.0.1ドラフトを構成するいくつかの仕様へのリンクがありますが、一番下の「epub-changes.html」がEPUB 3.0からの変更点がまとめられているのでこれを参考にします。

なお、同ページを含むEPUB 3.0.ドラフト各ページの日本語訳がImageDriveさまの「EPUB 3.0.1Draft 仕様日本語訳」のページにアップされています。こちらも併せて参照されると理解しやすいでしょう。以下、変更点の分かりやすいものを3つほどピックアップしてみます。

・ページ送り方法の指定の追加
参照箇所:2.10 The rendition:flow property


EPUBのコンテンツ本編はXHTMLドキュメントで制作されています。コンテンツが画面に入りきらない場合、ページ送りが発生します。このページ送りの表現方式は現状リーダーアプリに依存します。リーダーアプリによってはアプリの設定で読者がページ送りの方式を設定できるものもあります(例えばiBooksではページめくりとスクロールを選べます)が、コンテンツ側で指定することはできません。EPUB 3.0.1ドラフトではページめくり(ページ単位でのコンテンツ遷移)かスクロールを指定できます。

・縦書きコンテンツの中扉用仕様の追加
参照箇所:2.11 rendition:align-x-center property


日本語の縦書きコンテンツでは中扉で章タイトルなどを中央揃えにするのが一般的です。これをEPUB(CSS)で再現するのは思いの外困難なのですが、仕様として指定できるようにプロパティが追加されています。

・Media Overlaysでの読み上げ対象外部分のスタイル指定
参照箇所:5.1 playback-active-class property


読み上げEPUB(Media Overlays)では、読み上げ箇所を目立たせるために読み上げ箇所のCSSスタイルを設定することができます。EPUB 3.0.1ドラフトでは読み上げ箇所だけでなく、反対に読み上げ対象外の箇所にCSSスタイルを設定できる仕様が追加されました。
これを使用すると、読み上げ対象外の部分の色を薄くして、読み上げ対象箇所を目立たせることができるようになります。

その他のものとしては、EPUB 3.0仕様策定時からCSS3プロパティの値が変更になったものへの対応などもあります。最終的な確定仕様がどうなるかは分かりませんが、EPUB的に注目トピックとして現状を少し紹介しました。

■最後に
本記事がアップされるのは11月下旬ということで、年末感が漂ってきました。電子書籍的には年末の風物詩となっているJEPA電子出版アワードの投票受付が始まっています。

「エキサイティング・ツール賞」のカテゴリには本ブログでも触れた「でんでんコンバーター」や「Himawari Reader」もノミネートされています。個人的には知り合いの方も何人かノミネートされているので、楽しみに動向を見守っています。読者の皆さまも投票してみてはいかがでしょうか。

また、11月30日(土)にはiBooks Authorのハンズオン形式のセミナーを開催します。最近知人の方に教えていただいたのですが、自動車メーカーのスバルが電子カタログでiBooks Authorを利用されています。iBooks Author利用の事例として掲載しておきます参考にしてください。。

■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi


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