登場人物が多すぎる「尼崎連続変死事件」を分かりやすく解説【文春vs新潮 vol.63】
●橋本家
母親と長女は失踪、長男は沖縄で転落死、次男(54)は行方不明という家族である。一家は「三十年以上も前」に美代子と暮らし始め、25年前に母親が失踪。その10年後には長女も失踪した。2005年には、美代子被告ら8人の集団と沖縄を訪ねた長男が崖から転落して死亡。2009年には、美代子被告と暮らしていた次男が行方不明になっている。
長男の妻・三枝子被告(59)は、美代子被告が横浜で経営していたバーの従業員で、「長年にわたり、美代子に側近のごとく仕えてきた」人物でもある。ちなみに、三枝子被告は1998年に美代子の母親と縁組している。長男が死亡した際の保険金と、長男名義のマンションは、いずれも三枝子被告のものになった。
このほか、文春には美代子被告らに1200〜1300万円を奪われた「滋賀の一家」が紹介されているが、ここでは割愛する。
他人の家族を「しゃぶり尽くす」手法
文春の分析によれば、「美代子の犯歴をなぞってみた時、他人家族をしゃぶり尽くすにあたって共通する手法がある」のだと言う。それは、「手下との絆をより強固にするため、あるいは支配下に置いた家族を束縛するため、戸籍上の縁組を張り巡らすこと」である。そして、「アメとムチを使い分け」ることにより、他人の心をコントロールしていったのであった。
殺戮が加速したのは、いとこの正則受刑者がグループに加わってから最近までの10年間である。犯行の数が増えれば増えるほど、口を割られたら困る人物がどんどん増加する。さらに、そういう人物を殺し続けた結果が「大量怪死」につながったのだと思われる。
記事を読んでいると、筆者には大きな疑問が浮かびあがる。両誌には、犯行に関わっていない一般の人たちの克明な証言が、数多く引用されている。つまり、美代子被告らの常軌を逸した言動や振る舞いを知る人は、かなり存在したということだ。
にもかかわらず、これだけ事態が悪化するまで、週刊誌をはじめとするメディアは、なぜ美代子被告らの蛮行に関心を向けなかったのだろうか。それだけ美代子被告らの犯罪隠蔽が巧妙だったということなのか。いずれにしても、主要メンバーの三枝子被告と谷本家の次女は「完オチ」しているということなので、次々に真相が解明されていくのであろう。
[今週の軍配]今週は引き分け!
【これまでの取り組み結果】
文春:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆☆
新潮:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆☆☆
(谷川 茂)
