インタビュー:映画『ウォール・ストリート』/オリバー・ストーン監督「愛は欲望に勝つもの」
――ゴードン・ゲッコーが、映画の中のキャラクターなのに、実在の人物のように力を持って一人歩きしてしまったことに関してどう思われますか?
オリバー:非常に難しい質問ですね。映画っていうのは所詮作り物ですけど、成功すると本物に見えるっていう大前提があります。映画『ウォール街』を公開した1980年のあの時は、反道徳的だったけど、成功を敬うというか、拝金主義的な背景の中で、彼は“自分もなれるかも知れない”という英雄の象徴だったのです。――今回の映画『ウォール・ストリート』の中でも、ゲッコーはその様な「英雄」としての存在なのでしょうか?
オリバー:今回の場合は、本当にゼロから彼の天才ぶりを発揮して、みんなが損した時に大儲けした。ところがこれになると、誰もが初めからできると思えないので、非常に距離感がある。今回果たして彼がやっていることが本当なのかという事になると、あとは監督としてやることは、マイケル・ダグラスに対して何ができるかということ。ゲッコーは、マイケル・ダグラスのものなんですよ。マイケル・ダグラス演じる爬虫類みたいな顔した男の笑顔が本気と思うか、適当と思うかは、見る側のマイケルに対する思いになっているとしか言えないですね。クリエーターの手を離れた俳優の物になっているこの役は、逆に言えば、どういう風に終わればいのか私もよくわからない。この映画はウォール・ストリートの新しいバブルは何だろうということを象徴してやっているのかも知れない。さっきウォール・ストリートの機能は終わったと言いつつも、絶対に生き残るとは思います。――ジャンル的には男性寄りの映画だと思われますが、女性が観たらどの様なところが楽しめますか?
オリバー:映画『ウォール街』よりも今回の方が、女性ウケが良いですね。前回は、ウォール・ストリートという戦場で戦っている男の話だったんですよね。でも、今回はゲッコーという人物が人間性を取り戻すか否かという彼の人生も出てきます。尚且つ、家族も出てきて、娘が母親になって生きていくという部分も描いている。その辺が女性にもウケが良い理由となっています。――役者から最高の演技を生みだす上で、信条としているものはありますか?
オリバー:キャスティングが全てだと思いますので、できるだけ多くの人に会います。紙に書いてこういうキャラクターだろうと思っているんだけど、それに俳優が登場すると必ずしもそうじゃなかったりして膨らんでいくんですね。監督と俳優の化学反応もあるので、自分のイメージを超えるようなキャスティングをしていく機会を多く作ることが第一だと思っています。それから今回、マイケル・ダグラスのキャスティングは初めから決めていましたので、彼を想像して脚本を書いたというのはあります。それから私の伝統的なやり方としてはとにかく本番のギリギリまでリハーサルをすること。その時に台詞を変える時もあります。緊張感を持たせてリハーサルをするという事を忘れてはいけません。というものの、あんまりリアルにやっちゃうと面白くないものになってしまうので、その辺のところは、リアリティと実際に映画観せるとでは違うんだっていう事を認識した上でアプローチしていくことが大切だと思うんですね。――シャイアさんとキャリーさんの演技についてアドバイスしたことはありますか?
オリバー:この『ウォール・ストリート』でシャイアみたいな俳優に沢山出会いました。非常にお金も欲しいし、変革もしたい、そして、何より理想を求めている。今回の二人の役はクリーンエネルギーの会社にウォール・ストリートから投資をするという本当の理想主義者。今の世の中は、地球の温暖化とか、タバコがどうだとかマイナスな要因しかないので、若い人達は、何とかしなきゃいけないという気持ちになり、理想主義的にならざるを得ないところがあるかも知れません。彼らには、そういう意味で、非常に理想家でなんとかして行こうと思っている人の役柄だってわかってもらって演じてもらいました。ただ、役柄があまりにも良い人で、こんな事ってないんじゃないのって言われました。私は良い人でいいんじゃないかなと思っていますけど。――監督にとってお金はどんな存在ですか?
オリバー:あれは麻薬。中毒になりかねないし、溺れちゃうことは簡単。だけど、お金があるからこそ、社会に貢献できるということもあります。――ゲッコーの言葉に「欲望は善」という言葉があります。それでは、今回の映画のテーマの一つである「愛」は何でしょう?
オリバー:愛は「欲望に勝つ」もの。劇中でゲッコーは「時間こそが宝物だ」という風に言います。要するにお金は持っていけないわけです。未来に投資することによって社会に貢献できるし、宇宙と自分の関わりについても考えられると思います。男女共に楽しめる見所がある映画『ウォール・ストリート』。卑劣な金融界の怪物であるゴードン・ゲッコーには、人間性の欠片が残っているのか。家族との絆の強さは何よりも強いものなのだろうか。2月4日、TOHOシネマズ日劇他、全国ロードショーとなるので、劇場で答えを確認しよう。
・映画『ウォール・ストリート』公式サイト
