【新刊】16年ぶりとなる佐方貞人シリーズの新作、柚月裕子氏『誓いの証言』など4冊
国際情勢も経済も不安定で、ネット上では誰かを叩いたり、いがみ合ったりと、殺伐とした空気が漂うこの時代。読書をすることで現実逃避をしたり、頭の中をスッキリさせたりしてみてもいいのでは……。おすすめの新刊4冊を紹介します。
『誓いの証言』柚月裕子/KADOKAWA/2090円
大学の同級生で弁護士の久保が不同意性交等罪で逮捕され、佐方が弁護人に就く。被害者は銀座の若いホステスで、久保は無罪を主張。が、冤罪だとしても、彼女はなぜ久保をハメようとしたのか。舞台は香川県に飛び、ある石職人の誠実な一生が浮かび上がる。佐方事務所のバイト生で、司法試験を目指す小坂千尋の"ガミガミ母さんぶり"に笑う。このコンビの新作、またすぐ読みたい。
『きょうからできる あたらしいこと100』松浦弥太郎/小学館/1870円
気分がよくなる、気持ちがリフレッシュするなどのヒント集。例えば「窓ガラスを磨く」と外の景色がはっきり見え、心が澄んでくる。「家庭菜園」には土いじりの癒しと収穫の喜びがあり、「使わない物をひとつ手放してみる」には身軽になる解放感がある。どの感情も憶えがあるが、意識してなかったのはそれらが持続可能な"自分浄化法"になること。読むだけでも浄化されますよ。
『水車小屋のネネ』津村記久子/毎日文庫/1100円
男優先の母を見限り家を出た18歳の理佐と8歳の律。理佐は求人票に「鳥の世話じゃっかん」とある蕎麦屋に職を得る。その鳥とは水車小屋の石臼の監視役で英語の歌も器用に歌うヨウムのネネ。水車小屋の役割が素敵だ。蕎麦の製粉工房であり、本好きの律の安息所であり、他者と出会って繋がる広場の機能も。幸福度満点の読書時間!少女時代の無垢な読書体験が戻ってくる。
『旅のつばくろ、ふたたび ─飛び立つ季節─』沢木耕太郎/新潮文庫/605円
旅の事始めは著者16歳のときの東北一周旅行。アルバイトで貯めたお金で旧国鉄の周遊チケットを買い、車中泊で宿泊代を浮かせた。ノンフィクション作家になってからも旅とは縁が切れない。会津、伊豆、松江、能古島、臼杵など、土地からゆらゆらと立ち上がる(有名無名を問わない)懐かしき人々。追想が本書のテーマだ。に、しても、すこぶる健脚。足の若々しさに感嘆する。
文/温水ゆかり
※女性セブン2026年6月4日号
