キューバの首都ハバナで、ゴミの山の中から使える物を探す人(4月)=AP

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 【ワシントン=栗山紘尚】米国のトランプ政権は20日、キューバ革命の立役者の一人、ラウル・カストロ元国家評議会議長(94)を起訴に追い込み、体制転換への圧力を一段と強めた。

 反米国家の「トップ」を標的にする手法は、1月のベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領拘束とも酷似する。新たな軍事行動に発展する不安もぬぐえない。

 トランプ米大統領は20日、記者団から、ベネズエラと同様の軍事行動をキューバに対して行うかと問われると、「言いたくない」と述べるにとどめた。

 一方、中南米を管轄する米南方軍は20日、ニミッツ空母打撃群がキューバに近いカリブ海に到着したことを公表した。威嚇が主な目的だとみられているが、ベネズエラへの軍事行動の一環で米空母が投入された経緯を踏まえれば、キューバに対する軍事行動に発展する可能性があることも否定できない。

 トランプ政権にとって、マドゥロ氏拘束は成功体験となっている。第1次トランプ政権時代の2020年、マドゥロ氏は麻薬密輸などに関与したとして起訴。米軍は「刑事訴追に必要な措置」だとして、1月のマドゥロ氏拘束につなげた。

 米紙ニューヨーク・タイムズは、マドゥロ氏とラウル氏がいずれも「起訴」されている類似性に触れ、米軍が「同様の手法」を用いて、ラウル氏を拘束しようとする可能性があることに言及した。

 トランプ政権は、キューバに対する経済的圧力も強めている。

 1月のマドゥロ氏拘束以降、ベネズエラからキューバへの石油供給は絶たれ、トランプ氏は1月末にはさらに、キューバに石油を供給する国からの輸入品に関税を課す大統領令に署名した。キューバは事実上の石油禁輸措置を4か月以上にわたって受けたことで深刻な燃料不足に陥っている。

 米司法省がラウル氏の起訴を公表した20日は、くしくもキューバの「独立記念日」だった。キューバ移民2世のルビオ米国務長官は20日、キューバ国民向けにスペイン語のビデオメッセージを公開し、「より良い未来を阻んでいるのは、あなたの国を支配している者たちだ」と語り、トランプ政権は、支援の手をさしのべているとも訴えた。

 生活の困窮は現体制に原因があると強調することで、体制転換につなげる狙いがあるとみられる。

停電1日20時間「もう限界」…石油封鎖 国民困窮 食料も薬も不足

 【リオデジャネイロ=大月美佳】キューバの国民生活は、米国による事実上の石油封鎖で困窮を極めている。燃料の備蓄は枯渇し、停電は1日20時間を超える。

 「もう限界」。首都ハバナの小学校補助教員ユディスレイディス・アコスタさん(35)は20日、本紙通信員の電話取材に答えた。自宅は停電中で、物価は高騰。食料も薬もない。燃料不足でゴミ収集車がこなくなってゴミがあふれ、蚊やネズミが増えたという。

 アコスタさんが教える学校ではすでに多くの子供が通学しなくなった。登校した子供たちも「おなかをすかせ、疲れ果てている」という。キューバ教育省は19日、停電などの影響で通学が困難になっているとして、学期の終了を通常の7月から6月に前倒しすると発表した。

 広告業を営むアベル・ロサレスさん(48)も「トランプはキューバに地獄を作り出している」と憤る。未明に電気が復旧した時に家事をこなし、くたくたになって職場に向かう日々だ。米軍による攻撃への恐怖も住民を追い詰めており、無職のエスペランサ・ゴンサレスさん(64)は「不安に押しつぶされそう」と語った。