岩手県大船渡市の現場で、消火剤を混ぜた水で残火処理を行う消防隊員(総務省消防庁提供)

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 総務省消防庁は、林野火災用の消火剤の効果を評価するためのガイドライン(指針)を年内に策定する方針を固めた。

 日本では水で消火するのが一般的だが、新たな手段として効果の高い消火剤の導入を全国の消防機関に促す。効果や環境への影響を客観的に評価する方法を指針に盛り込むことで活用しやすくし、大規模化する近年の林野火災への対応力を向上させる。

 消火剤は主に、〈1〉家庭用消火器にも使われるリン酸塩を含む延焼抑制剤〈2〉界面活性成分を含む泡・浸潤剤〈3〉粘性の高いゲル剤――の3種類ある。〈1〉は延焼方向にまいて拡大を防ぎ、〈2〉と〈3〉は火に直接まいて使う。

 同庁によると、こうした消火剤の効果は水の約2倍あり、米国では飛行機などを使って大量に散布されている。日本では石油コンビナートや航空機などの火災時に、消防法の基準に基づく消火剤が使われている。

 一方、林野火災用の消火剤は1970年代まで推奨されていたが、短時間で何度も散水できる消防ヘリの配備が進み、徐々に姿を消した。加えて米国のように林野火災を想定した消火剤の効果などを評価する指針もなく、普及しなかった。

 だが近年は、水では対応しきれない大規模な林野火災が相次ぐ。昨年2〜4月には岩手県大船渡市で平成以降で最大の3370ヘクタールが焼け、同3月に岡山市で起きた火災では486ヘクタールを焼損。今年4月に発生した岩手県大槌町の火災では1633ヘクタールが焼け、15日時点で完全に鎮火していない。

 こうした事態に対応するため同庁は、科学的根拠に基づいて消火剤を評価できる指針を整備し、導入を促す。具体的には、米農務省が定める消火剤の認証制度を参考に、消火や延焼抑制の効果を評価する方法を示す。また、生物への毒性や自然に分解する能力など、環境への影響を評価する方法のほか、使用量の目安や水源周辺など散布を避けるべき対象も示す方針だ。

 消火剤メーカーは製品が指針に適合するか検査し、同庁は検査をクリアした製品を適合品リストとして公表する。同庁は農林水産省や環境省などの関係省庁も加わる有識者会議での議論を経て年内に指針を作り、来年からの運用を目指す。

 同庁によると、大船渡の残火処理では消火剤を混ぜた水を使ったところ、「少量で火が消せる」と現場で好評だった。日本防火技術者協会の関沢愛理事長は「地道な残火処理は体力の消耗が激しい。少量でも効果が見込める消火剤は積極的に活用すべきだ」と話す。