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成功している社長の多くが、高級車に乗っています。そんな人たちを見ると「儲かっているんだろうな」「贅沢しているな」などと考えてしまいますが、そこには贅沢だけではない「合理的な理由」があるようです。世の社長が高級車、とりわけ「4年落ちの高級車」を好むその理由と、高級車に“タダ同然”で乗れる驚きのスキームをみていきましょう。税理士法人グランサーズの共同代表で公認会計士・税理士の黒瀧泰介氏が解説します。

浪費か戦略かの“分かれ目”

――「高級車を経費で買う」という社長がいますが、正直なところ、単なる浪費になっているケースも多いんじゃないですか?

黒瀧氏(以下、黒)「たしかに、毎年違う高級車に乗り換えている社長は少なくありません。ただ、実はその行動、贅沢をしているのではなく、利益を守るために計算して乗っている可能性が高いです。うまく設定すれば、実質負担をかなり抑えて高級車に乗り続けることができます」

――そんなうまい話があるんですか? 

黒「あります。ただし、やり方を間違えると本当の浪費になってしまいます。落とし穴も含めてみていきましょう」

節税には「4年落ち」が最強な理由

黒「高級車を“タダ同然”で乗るためには、絶対に外せないポイントが2つあります。1つ目は『購入費用の全額を、即座に経費にして法人税をガツンと減らすこと』、2つ目は『買った値段に近い金額で売ること』です。この両方を満たさないと、ただの高い買い物になってしまいます」

――「買った値段に近い金額で売る」なんて無理じゃないですか? 新車はナンバープレートをつけた瞬間に2割は値下がりするっていいますよね。

黒「一般的な車はそうかもしれません。ただし、フェラーリやポルシェ、あるいは一部のSUVなどのように、驚くほど値崩れしない車というのもあるんです。そしてもっと重要なのが1つ目のポイント、どうやって購入費用を短期間で経費化するか……ここで出てくるキーワードが『4年落ち』です」

――4年落ちですか? 中途半端な古さですね……それに、高級車に乗りたがるような社長であれば、ピカピカの新車を買いたいと考えそうですが。

黒「たしかにそうかもしれません。しかし、節税を考えるなら新車はNGです」

「新車購入」がNGなワケ

[図表1]旧定率法、定率法の償却率等表 出典:国税庁

黒「まず、法人が事業用に買った車は固定資産になります。そしてこれは、法律で決まった『耐用年数』に応じて、少しずつ経費計上していく必要があるのです」

――新車の場合、何年かかるんですか?

黒「6年です。たとえば1,000万円の新車を買っても、1年目に経費にできるのは(定率法を使っても)333万円程度。1,000万円キャッシュが出ていくのに、経費になるのはたった333万円となると、これでは節税には不十分ですよね。

ちなみに『定率法』というのは、初年度に多くの償却費を計上できる計算方法のことで、早めに経費を作りたい場合に有利です。新車ではあまり威力を発揮しませんが、これが『中古車』になると話が変わります。

[図表2]減価償却の仕組み 出典:社長の資産防衛チャンネル

中古車の場合、耐用年数が短縮される計算式があるのですが、結論を言うと『4年落ちの中古車』の場合、耐用年数がなんと2年に短縮されるんです」

――6年が2年に! それは短いですね。

黒「さらにこれを定率法に当てはめると、耐用年数2年の償却率は1.00。つまり、買った初年度に100%全額を経費計上できるんです。

――買ったその年に全額ですか?

黒「はい。たとえば期首に4年落ちの高級車を1,000万円で買えば、その決算で1,000万円丸ごと経費にできます。実効税率を約30%とすると、本来払うはずだった税金が300万円安くなる。つまり、実質700万円で1,000万円の車を買えた計算になります。

リセールバリューの高い車種の選び方

――300万円引きは大きいですね。でも、まだ700万円の出費は残っています。これだと“タダ同然”とはいえなくないですか?

黒「そこで重要になるのが2つ目の条件、『リセールバリュー』です。『車は値下がりする』という常識を覆す車を選べば、購入額の大半を回収できるため、実質負担を大きく圧縮できます。フェラーリのような超高級車でなくても、もっと身近な車で大丈夫です。

たとえば、リセールバリューが高い車として有名なのが、トヨタ・ランドクルーザーやランドローバー・ディフェンダー、メルセデスベンツ・Gクラス(ゲレンデ)などの人気SUVです。そのほかにも、アルファードやレクサス、ヴェルファイアなどは値残りしやすい傾向にあります。

これらの車を4年落ちで買って、高い時期に売却すれば、実質的な出費を極限まで抑えられます。ある意味『簿外資産』のような形ですね。資金繰りが苦しくなったときの保険としても活用できます」

高級車を“タダ同然”で毎年乗り換える方法

黒「では、具体的なシミュレーションをしてみましょう。たとえば1,000万円で買った4年落ちのディフェンダーに1年乗って、900万円で売れたとします」

――1,000万円で買って、税金で300万円得して(実質700万円負担)、それが900万円で売れたら……あれ、儲かっていませんか?

黒「そう見えますよね。ただ、ここで大事なのが『売ったときの税金』です。帳簿上、車は初年度に全額経費にしているので価値は『1円』になっています。1円のものを900万円で売ると、900万円の「売却益」が出て、そこにまた法人税(約30%)がかかってしまうんです」

――約270万円の税金を払うことになる……。結局、最初に出た300万円の節税分とチャラになっていませんか?

黒「そのとおりです。本質的には『課税の繰り延べ(先送り)』といえます。そこで重要なのが、車を売るタイミングです。売却のタイミングにあわせて大規模修繕をしたり役員退職金を出したりして、経費で利益を消す出口戦略が必要になります。

さらに、これを応用して『実質1割の負担で毎年乗り換える方法』もあります。

[図表3]高級車を1年で乗り換えるスキーム 出典:社長の資産防衛チャンネル

まず期首に4年落ち(3年10ヵ月落ち以上)の値崩れしにくい車を買い、1年で全額経費にします。そして翌期の期首になったら、その車をすぐに売却し、同時にまた別の4年落ちの中古車に買い換えるんです」

――売ってすぐまた買うんですか?

黒「はい。そうすると、売却で出た900万円の利益は、新しく買った車の減価償却費(経費)と相殺されます。キャッシュで見ると、売却で900万円入って、購入で1,000万円出る。つまり、差額の100万円を負担するだけで、また1年間1,000万円の高級車に乗れる、というわけです」

――実質100万円のレンタル料で、毎年ベンツやポルシェを乗り回せる……これは車好きにはたまりませんね。

黒「ただし、これはあくまでうまくいった場合の話です。いくら値落ちしにくい車種でも絶対はありません。そこはリスクを承知のうえで検討しましょう」

失敗を防ぐための3つの注意点

――ここまで見てきた節税スキームの注意点はありますか?

黒「実は3つ、気をつけなければならないポイントがあります。

まず1つ目は、『減価償却は月割り計算』だということ。全額経費にできるのは、1年間丸々持っていた場合です。決算ギリギリの1ヵ月前に駆け込みで買うと、その期に経費にできるのは12分の1だけ。最大限活かすなら、事業年度の最初の月に購入・使用開始する必要があります。

続いて2つ目は、基準日が『納車日』であること。契約書にハンコを押した日ではなく、実際に車が届いて使い始めた日からしか経費にできません。輸入車は納車に時間がかかることもあるので、決算までに間に合わないと悲惨です。

最後の3つ目は『事故』です。安全面はもちろんのこと、このスキームにおいて、事故はリセールバリューの崩壊を意味します。修復歴がつくと一気に価値が下がり、高く売ることが前提のこのスキームは成立しなくなるのです。

節税のために買った車で事故を起こして大損した……なんて笑えない話にならないよう、くれぐれも安全運転を心がけてください」

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ共同代表/公認会計士・税理士