Google Chromeが約4GBのオンデバイスAIモデルを勝手に保存していると指摘される、削除しても再ダウンロードされるケースも

「Google Chromeがユーザーに明確な確認を取らないまま約4GBのオンデバイスAIモデルをPCにダウンロードしている」とプライバシー監査の専門家であるアレクサンダー・ハンフ氏が指摘しています。
Google Chrome silently installs a 4 GB AI model on your device without consent. At a billion-device scale the climate costs are insane. - That Privacy Guy!
問題のファイルは「weights.bin」という名前で、「OptGuideOnDeviceModel」というChromeプロファイル内のフォルダに保存されるとのこと。「weights.bin」はGoogleのオンデバイス向けLLM「Gemini Nano」の重みファイル、つまりAIモデル本体のデータです。
Googleは2024年5月、Chrome 126以降でGemini NanoをChromeデスクトップクライアントに組み込む方針を発表していました。その後、2026年5月5日にリリースされたGoogle Chrome 148では、ウェブサイトからブラウザ内蔵のオンデバイスAIに直接アクセスできる「Prompt API」が導入されました。
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オンデバイスAIとは、入力内容をクラウドに送らず、ユーザーの端末上でAI処理を行う仕組みです。クラウドにデータが送信されないことでプライバシー保護に役立つ可能性があるものの、Chromeがそのための約4GBのモデルを分かりやすい通知や同意なしに保存している点をハンフ氏は問題視しています。
Gemini NanoはChromeの「Help me write」やオンデバイス詐欺検出などのAI機能に使われるものです。しかし、ハンフ氏はChromeの設定画面に「4GBのAIモデルをダウンロードする」などの明確な項目がなく、一定の性能を備えた端末で関連AI機能が有効な場合、勝手にバックグラウンドでダウンロードが行われると指摘しています。
さらに、ユーザーがAIモデルのファイルを削除しても、Chromeが再びダウンロードするケースも報告されています。再ダウンロードを防ぐには、Chromeの設定でオンデバイスAIを無効化する必要があるとされています。環境によっては、「chrome://flags」ページで関連機能を無効化したり、企業向けポリシーで制御したりする方法も案内されています。いずれにせよ、入れるときは自動なのに、消すときは分かりにくいというわけです。
ハンフ氏がApple Silicon搭載Macで新しいChromeプロファイルを作成したところ、人間による操作が一切ない状態でもAIモデルが保存されたと説明しています。macOSのファイルシステムイベントログを調べたところ、フォルダ作成、一時フォルダへの展開、最終フォルダへの配置まで全体で14分28秒かかったとのこと。その間、ユーザーによるクリックや入力はありませんでした。
また、Chromeの内部状態ファイルには、端末のGPUやメモリなどの性能を見てモデル配布の対象かどうかを判定した痕跡があったとされています。ハンフ氏は、Chromeがユーザーの端末を「AIモデルを配布できる対象」として扱い、ユーザーが設定画面で機能を理解する前にダウンロードを始める設計になっていると批判しています。
ハンフ氏は特に紛らわしい点として、Chromeの目立つ場所に表示される「AIモード」と、今回のローカルモデルが別物であることも挙げています。ユーザーはAIモードと聞くと端末内に保存されたGemini Nanoで処理されると考えがちですが、AIモードはGoogleのサーバーにクエリを送るクラウド型のAI検索機能です。一方、ローカルのGemini Nanoは、文章作成支援やタブグループ提案など、比較的目立たない機能で使われるとのこと。
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つまり、ユーザーは4GBの保存容量とダウンロード帯域を負担しているにもかかわらず、最も目立つAI体験はオンデバイス処理ではないという構図です。ハンフ氏はこれを「ユーザーのためというより、Googleが将来のAI機能展開に備えてユーザー端末へ資産を前もって置いている状態」だと見ています。
法的には、ハンフ氏はEUのeプライバシー指令やGDPRに抵触する可能性を指摘しています。ユーザーの端末に情報を保存するには原則として事前の明確な同意が必要であり、Chromeの通常利用に4GBのAIモデルが必須とは言えないためです。また、端末性能を調べて配布対象を判定している点についても、透明性やデータ最小化の原則に反する可能性があるとしています。
環境負荷も無視できません。ハンフ氏の試算では、4GBのモデルを1億台に配信すると6000トンCO2e、5億台なら3万トンCO2e、10億台なら6万トンCO2eの排出に相当するとのことです。これは1回の配信だけの数字で、削除後の再ダウンロードや将来のモデル更新、実際にAIを動かす電力は含まれていません。
ハンフ氏は、Googleが取るべきだった対応として、ダウンロード前に「4GBのAIモデルを保存しますか」と明示的に確認すること、ユーザーがAI機能を初めて使った時点で必要に応じてダウンロードすること、設定画面にモデルのサイズや用途、削除と再ダウンロード停止のボタンを用意することを挙げています。
今回の問題の核心は、AIモデルだから特別扱いしてよいわけではないという点です。ユーザーの端末は企業の配布インフラではなく、所有者が管理すべき個人のデバイスです。Chromeのような巨大なソフトウェアでは、1台あたり4GBのファイルでも、全体では帯域、電力、CO2排出、そしてユーザーの信頼に大きな影響を与えます。ハンフ氏は、Googleが今後この挙動を明示的なオプトイン方式に変えるかどうかが「責任あるAI」を掲げる姿勢の試金石になると締めくくっています。
