相互理解は難しいけど「私たちは何に満ち足りるか」はわかる!12センチのヒールを履き闊歩していた女性たちが気づいた「日本のほんもの」の意味

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好評発売中のFRaU JAXURY MOOK。宮館涼太さんの表紙で、JAXURY(ジャクシュアリー)を初めて知り、共感してくれた方も多数。編集部に多くのメッセージが届いています。

日本の(=Japan's)ほんもの(= Authentic)輝き(=Luxury)、JAXURY(ジャクシュアリー)

JAXURYとは、Japanʼs Authentic Luxuryをひとこ とで表すために新たに作った言葉です。高級品や贅を尽くすことだけが"Luxury"なのではなく、"Authenticity" = “ほんもの“を感じられるLuxuryにこそ光を与えたい。そんな思いで、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科オーセンティック・ラクシュアリーラボでの研究をもとに、各界から集まったメンバーによる一般社団法人JAXURY委員会がJAXURYアワードを選出しているのです。

そんなJAXURYプロジェクトチーム「吉ぴょん」と「さぎぴょん」に、JAXURYへの旅が始まるまでに、どんな「心の旅」があったのか。実は足並みが揃うのには時間を要したようで……。多くの方々が実は長い間感じてきたことではないかという心の旅、ぜひご一緒いただけたら幸いです。

なぜ鳥獣戯画なのか

吉ぴょん: さあ始まります、JAXURY珍道中。 私はピョン吉ならぬ、吉ぴょん、吉岡。JAXURY編集長。昭和の「ド根性ガエル」を幼少に体験した世代だからか、ピョン吉のように直情&人情過多気味、精神年齢は小4男子。同時に、90’sの「新人類」と呼ばれたイケイケキャラが隠し切れません。で、こちらはプロジェクトの相棒の匂坂(さぎさか)。うさぎから「う」抜きの、さぎぴょん。だいぶプラプラしてる人、笑。

さぎぴょん(以下さぎ):確かに。海外まで行ってNVC(※1)やパーマカルチャー(※2)とか学んだり、Farm to Tableでガーデンでおもてなしご飯を作ったり。瞑想で長期休むと吉岡さんに怒られる、汗。

と言いつつ、ヒット企画多数の天才バカボン編集者・吉岡さんへのリスペクトと共にJAXURYをよりわかりやすくたくさんの方に伝えられるようにと、連載を始めます! 一応ここでは、吉岡さんがボケで私がツッコミとか。

※1 NVC=Non-Violent Communication(非暴力コミュニケーション)。ガンディーの思想を根底に、アメリカの心理学者が体系化した、共感をベースに繋がりから対話する手法。教育・医療・ビジネス・紛争解決など世界60カ国以上で実践されており、マイクロソフトCEOナデラが全経営幹部への課題図書にしたことでも知られる。

※2 パーマカルチャー=Permaculture。「永続的な(permanent)」「農(agriculture)」「文化(culture)」の造語。人と自然が共に豊かになる関係を「デザイン」する暮らし方の手法で、1970年代の提唱以来、世界100カ国以上に広がる。環境を「持続する」だけでなく「再生する」リジェネラティブな思想を根底に持ち、日本人が当たり前に繋いできた自然と調和する暮らし、農民の知恵にも通じる。

吉ぴょん: 「令和の鳥獣戯画」と、いきなり名乗るのは、鳥獣戯画にかえるとうさぎが出てくるでしょ。私がかえるで「ピョン吉」に敬意を表して𠮷ぴょん、さぎちゃんは、名前にちかいうさぎ、さぎぴょん。ぴょんぴょんコンビ。

さぎ: 鳥獣戯画って、かわいいのはもちろんなんですけど、800年前に動物たちを擬人化して描いた絵巻は、日本のアニメーションの原点とも言われてて。

吉ぴょん: そうなの。マンガもアニメも、元を辿ると鳥獣戯画に行き着く。日本の物語づくりって、ずーっと繋がってる。

さぎ: かえるとうさぎが相撲を取ったり追いかけっこしたりしてるような、私たちの珍道中が始まります。で、今日は、なぜ私たちがJAXURYをやっているのかを話してみたいな、ということで、吉ぴょんさんがJAXURYと出会うまでを伺います。

講談社で30年以上編集をやってきて……。

吉ぴょん: ViViからファッションで始まり、VOCEで美容、読み物、Withで編集長もやって、文芸にも行って。思えば20代から海外ブランドをずっと追いかけてた。パリでエルメスの服を借りて撮影したり、イタリアのブランドに夢中になったり。でもずっと思ってたの。いつまでパリやNYやミラノのスナップ撮影したり、海外ラグジュアリーブランドに憧れ続けるのかな、って。

さぎ: 何がひっかかってたんですか?

吉ぴょん: いろいろな国の女性にインタビューする中で、世界的に伝わりやすい魅力の差って結局「自信があるかないか」だなと感じたの。なぜ自信があるかっていうと、自分の国に誇れるものがあって、それを身につけてるからなんじゃないかな、とも思った。パリジェンヌはフランスブランド。俳優、例えばモニカ・ベルッチは「イタリアの女でございます」って感じで、イタリアの服、イタリア人らしいふっくら体型。「日本の女性はなぜ黒髪を大事にしないの?」と逆に質問されたり。今となっては、自由な髪色を人種を超えて楽しむ時代になったけれど。

もちろん国粋主義じゃなく、かといって無国籍じゃない、世界が「いいな」と思う、そして世界をちょっと素敵に変える日本の魅力が知られたらなあ、と思うようになったの。

さぎなるほど。それが、「いわゆる和」じゃなくて、「結果として日本を感じさせる」ものってこと?

吉ぴょん:そう。シンプルで大胆なデザインの服、たとえばオーラリー(※3)だったり、とても西陣織をスタイリッシュに昇華したHOSOO(※4)のクラッチバッグだったり。国とか関係なくいいな、というものが、実は「あ、これ日本のものなんだ」がこの充実してきて「機は熟した!」と。その背景に実は日本のものづくり精神が感じられるの。

※3 オーラリー 男女でデザインの差があまりないオーラリー。「昼間に着る服をイメージ」とデザイナーの言うとおり、きれいな色は多いけれど、派手でなく落ち着くシルエット、色で、国内外のファンが多い。

※4 その複雑丁寧な技術に惚れ込まれ、海外ハイブランドからのオーダーも多いHOSOO。

さぎ: 私も似たところがあって。ファッション誌の編集をやってた時、シーズンごとに新作が出て、40万円近いバッグが半年で「前シーズンのだね」って言われるのを推し進める側にいたくないな、と。当時は12センチのヒールを闊歩してましたけど、ある時から外の基準に合わせることを全部やめたんです。心地よさが第一選択肢になって。そうなると雑誌を見なくなる。

吉ぴょん: それも、わかる。

さぎ今の社会って、外の基準に合わせることを求められるし、雑誌もそれを推してきた部分があると思うんです。でもいろんな経験の中で、自分自身が心穏やかに健やかにいられることこそを大事にし始めたら、出会う人とか好きなブランドとか暮らし方の学びの中で、自然と日本の良さに気づくようになって。

吉ぴょん: へえ、どういうこと?

さぎ: たとえば、部屋着をオーガニックコットンにしたら、テネリータの社長の渡邊さんから、日本は何百年も繊維で栄えてきた国なのに、近代化でその多くが失われたって聞いて。

吉ぴょん: 富岡製糸場は日本の近代産業の出発点だったけれど、グローバル化に飲まれた産業でもあるよね。

さぎ: 素材と着心地が気持ちいいL.A.発のブランド、James Perseのタンクトップも、実は日本のホールガーメント工場の特許技術で作られていたり。周りがパーマカルチャーの実践者ばかりになって自分も学び始めたら、その原点が東アジアの農業だって知ったり。西洋の農業が数百年で土地を痩せさせてしまうのに、日本では何千年も同じ田んぼで作り続けてこられた、その循環の叡智が欧米発の「サステナブル」の原点にある。

吉ぴょん: 逆輸入、というか、日本のものづくりが海外のブランドを支える例は多い

さぎ:そうなんです。 外に気張ることをやめて、自分の内側の穏やかさを選ぶようにしたら、気づいたら日本のものづくりや暮らしの知恵に出会って。そんなときにちょうどJAXURYにも携わるようになったんですよね

吉ぴょん: でも、さぎちゃんは最初、JAXURYにピンと来てなかったよね。

さぎ: 「ものを追いかけることには興味ないんです」って吉岡さんに言っちゃったかも、汗。でもそれは、外側の何かを追いかける暮らしはもうしたくなかったから。私の興味はモノやコトの奥にあるあり方や精神性の方で。しかもそういう本質的なことは会社の外で追求するもので、仕事とは別の世界だと分けてたんです。

吉ぴょん: それが、何で変わったの。

さぎ: ある時、吉岡さんに「JAXURY どう思うわけ?」って詰められて。で、「吉岡さんは本当は何がしたいんですか?」って逆に聞いたんですよ。そうしたら「私は世界を救いたいの」ぐらいの話が出てきて(笑)。

吉ぴょん: そんなこと言ったっけ!?

さぎ:それって結局、世界が二極化していく中で、日本のものづくりの精神、西洋の二元論を超える価値観が今の世界に必要なんだっていう話だと私は受け取ったんです。そして、これは私が外でずっと追求してきたことと同じだって思った。JAXURYなら、人生の探求と仕事が繋がるかもしれないって。

吉ぴょん: それ、すごく嬉しかった。私ね、海外のブランドを多く着てた時って、頑張ってたのよ。好きだったけど、どこかで「向こうが上でこっちが下」って無意識になってた。でも日本の「ほんもの」で、輝きある「ラグジュアリー」なものを身につけるようになったら、誇らしさと余裕が出てきた。不思議なんだけど、優しくなれる気がする。

遠くのものに憧れるのも素敵だけれど、身近なものを輝かせたい気持ちと、それに引き上げてもらう循環が生まれるというか。日本のものと海外のものをうまく組み合わせるのもいいなと思う。

日本は歴史的に、アメリカ式の大量生産でもなく、ヨーロッパ式の貴族的なオートクチュール発でもない、手が届くラグジュアリーを、実は階級を超えて求めていた人が多い。

狭いスペースに、無駄なものを置かず、各々が美しいと思うささやかな一輪の花や書画を飾り、ラグジュアリーな空間にしたり。無個性でもなく、特権的でもない、ラグジュアリーの歴史があるんだな、と、JAXURYをすすめながらわかってきたの。

今、世界でいいなと思われている日本のものも、実は「和」みたいなものではなくて、気づいたら日本のものだった、とわかる洗練された照明や椅子などインテリアだったりする。

さぎ: 自分の内側から選んだものに満ち足りている時って、力みがなくなりますよね。

吉ぴょん: まさに。「自他満足」という考え方も、発売中のFRaU JAXURY MOOKで伝えたかった。

「相互理解」ってよく言うけど、「理解」って「理で解する」ってこと。ロジックで相手を解き明かすなんて、自分のことだってわからないのに無理がある。

さぎなるほど

吉ぴょん: だから「理解」じゃなくて「満足」。自分が何に満ち足りるかは自分でわかるし、相手のことも「この人はこういうことで満ち足りるんだな」って感じることはできる。相互理解じゃなくて、自他ともに満足。略して「自他満足」。お互いの満ち足りるところから何かが繋がって広がっていく。

さぎ: それ、私たちの話そのものですよね。吉岡さんは、日本のもので自分の満足を見つけた。私は別の場所で自分の満足を追求してた。JAXURYで吉岡さんの満ち足りているところに触れた時、自分が大切にしてきたことと繋がるんだと思えた。理で解したんじゃなくて、お互いの満ち足りるところが合流した。

吉ぴょん: それが私たちがJAXURYを一緒にやってる理由。かえるとうさぎが出会ったみたいなもんで。

さぎ: だからこの連載も、JAXURYってすごいですよっていう紹介じゃなくて、みなさんが何に満ち足りるか、一緒に探る旅にしたいなと。

吉ぴょん: 珍道中だけどね。

さぎ: 次回は、JAXURYとはなんなのか?を改めて。最新号の吉岡さん渾身の記事から、JAXURYが話題のHANAにまでつながるというお話を。ぜひ次回もお楽しみに!

JAXURYプロジェクト:吉岡久美子、匂坂多恵子

Japan's Authentic Luxury=「JAXURY」は海外ラグジュアリーと何が違う?